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長瀞の地質は貴重な岩石が露出する地球の窓だった!

まっぷるトラベルガイド編集部

更新日: 2024年1月13日

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長瀞の地質は貴重な岩石が露出する地球の窓だった!

荒川がつくりだした峡谷が4㎞にわたり続き、畳2万枚分もの岩畳(いわだたみ)が広がる景勝地、長瀞(ながとろ)。
ライン下りなどを楽しむ観光地としても広く知られますが、長瀞の地質や地形は学術的価値が高く、明治時代から多くの地質学者が足を運んでいます。

長瀞の地質の成り立ち

じつは長瀞一帯の地層は、約1億6000万 〜1億年前に形成された海洋底地殻の玄武岩(げんぶがん)と海溝に積もった砂や泥といった堆積物が元になっています。

これらはまず、海洋プレートとともに大陸プレートの下へと沈み込んでいきました(地球表面には何枚もの分厚くて固いプレートが乗っています)。

そして、地下15〜30㎞の深さで膨大な圧力と熱による変成作用を受けると、鉱物が再結晶して結晶片岩(けっしょうへんがん)と呼ばれる変成岩になりました。これが、その後の地殻変動などにより上昇し、地表に現れたのが長瀞一帯の岩です。

日本列島の地質構造区分

日本列島の地質構造区分
産業技術総合研究所地 質調査総合センターHP、 「日本列島の地体構造区 分再訪」(磯﨑・丸山ほか、 2010年)などを元に作成

北上する海洋プレートによって海底の堆積物が次々と陸側に付け加わった(付加体)ため、関東から西には帯状に地質帯が分布しています。

赤色の線(点線)は中央構造線で、西南日本を北側の内帯と南側の外帯に区分する総延長1000㎞にも達する大断層です。

埼玉県秩父地方の基盤岩は、中生代ジュラ紀(約2億年〜1億4550万年前)の秩父帯、同・白亜紀(約1億4550万年〜6550万年前)の四万十帯といった付加体、その一部が地中深くに押し込まれてできた三波川変成帯(白亜紀後期の約8000万〜7000万年前)で構成されます。

日本列島の地質構造区分
産業技術総合研究所地質調査総合センターHP、「日本列島の地体構造区分再訪」 (磯﨑・丸山ほか、2010年)などを元に作成

長瀞の地質:片理

地表の結晶片岩は、側面から見るとどこも横に薄い層をなしています。これは、地中深くでの圧力と剪断(せんだん)運動によって再結晶した鉱物が、平面上に並んでいるためで、これを「片理(へんり)」と呼びます。

長瀞の地質:節理

また、長瀞を代表する風景である、幅約80m、長さ約500mにわたって段丘状をなす岩畳の片岩表面には、縦横に割れ目が走っています。これは「節理(せつり)」といって、地中から上昇して地表に現れる過程で、岩石にかかる圧力がゆるみ、その結果、岩が膨張して碁盤の目のような亀裂を生じたものです。

岩石は、片理や節理に沿って割れやすい性質をもっているため、荒川が層や割れ目にそって流れたことで侵食され、岩畳が形成されたわけです。

長瀞の地質:結晶片岩

長瀞で見られる結晶片岩には、石墨(せきぼく)片岩、緑泥石(りょくでいせき)片岩、緑簾石(りょくれんせき)片岩、スティルプノメレン片岩、世界的にもめずらしいピンク色をした紅簾石(こうれんせき)片岩などがあります。

同じ時代の沈み込み帯により形成された結晶片岩が分布する地質を「三波川変成帯(さんばがわへんせいたい)」といい、長瀞を東端に西は九州まで約800㎞にわたって帯状に続いています。

このように、太古の地中深くで起こった地球規模の地殻変動によって生まれた岩石を目視できることから、長瀞は「地球の窓」と呼ばれています。

長瀞の地層:虎岩

茶褐色部分は、鉄やアルミニウムに富む結晶片岩の一種、スティルプノメレンという鉱物。スティルプノメレンと白色の方解石などが折り重なることで、見た目が「虎の毛皮」を思わせることから虎岩と呼ばれます。

1916(大正5年)年、地質巡検で長瀞を訪れた宮沢賢治は、虎岩を見て『つくづくと「粋なもやうの博多帯」荒川岸の片岩のいろ』と詠っています。

長瀞の地質:紅簾石片岩

紅簾石と呼ばれる濃紅色をした鉱物を含む結晶片岩の一種。赤色は、含まれているマンガンによるものです。

親鼻橋の上流右岸にある淡いピンク色をなした紅簾石片岩の露頭は、1888(明治21)年、小藤文次郎博士が世界で初めて報告したもののひとつ。この岩体には、大小ふたつのポットホールが形成されています。

また、紅簾石片岩は「乙女石」とも呼ばれます。

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※掲載の情報は取材時点のものです。お出かけの際は事前に最新の情報をご確認ください。

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