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長瀞の地質:秩父赤壁

いっぽう、秩父赤壁(せきへき)と呼ばれる絶壁は、かつてそこに断層が走っていた名残です。断層が動いた衝撃で破砕し、もろくなった場所を、荒川が削ることで絶壁ができたのです。

長瀞の地質:秩父赤壁

岩畳の対岸で高さは最大で50m超、長さ約500mにわたって続く石英片岩を含んだ岸壁。断層に沿って流れる荒川の侵食によってできました。諸説ありますが、中国長江の名勝地「赤壁」にちなんで命名されました。

なお、この付近の流れは穏やかですが、こうした場所を「瀞」といい、「瀞が長く続く」景色が長瀞の由来になっています。

長瀞の地質現象と多種多様な動植物

なお、長瀞の岩畳には、起伏に富む地形や大小の沼(四十八沼(しじゅうはちぬま))があり、雑木林が隣接することなどから、多種多様な動植物であふれています。季節ごとに花々が咲き、埼玉県内で見られる約90種類のトンボの半数近くが生息する貴重な環境にあります。

長瀞の地層:岩畳

長瀞の地層:岩畳
畳のように荒川左岸に約500mの岩石が続いている岩畳。国の天然記念物にも指定されている

幅約80m、長さ約500mにわたり段丘状に広がっている岩石。

これは長瀞一帯に分布する、約8000万〜7000万年前、海底で流出した玄武岩や火山噴出物や泥、砂が海洋プレートとともに地下15〜30㎞まで沈み込み、5000〜10,000気圧という大きな力と熱が加わることによってできた結晶片岩です。

岩畳は、鉱物が圧力に対して垂直方向に、平面上に配列しているため、片理面に沿って剝がれやすくなっています。また、地下深くから隆起した際にできた縦横に走る割れ目である節理、そして荒川による侵食によってできた地形です。

長瀞の地層:小滝の瀬

かつての荒川は、岩畳付近を断層崖に沿ってまっすぐ流れていましたが、あるとき上流側が土砂で埋まってしまい岩畳上を流れることになりました。流れは節理に沿って進み、その先で直角に近い屈曲を生じ、岩畳から本流に戻る場所には段差ができました。

この段差は徐々に後退し、「小滝の瀬」となりました。瀬は今も後退を続けています。

長瀞の地層:ポットホール

河床の窪みに挟まった石が、激しい川の流れによって長期間にわたり回転することで削られた穴。親鼻橋のたもとには紅簾石片岩に開いたポットホールがあります。

岩畳には最大で直径1.8m、深さ約4.7mのポットホールがあるなど、長瀞は国内有数の巨大ポットホールのスポットです。甌穴(おうけつ)ともいいます。

長瀞は日本地質学発祥の地

埼玉県立自然の博物館前にある「日本地質学発祥の地」石碑。明治時代以降、貴重な岩石が見られる長瀞周辺には、日本の地質学の礎を築いたドイツ人・ナウマンをはじめ多くの地質学者が足を運びました。

ナウマンの一番弟子で紅簾石片岩を世界に先駆けて報告した小藤文次郎、上武山地を中心に地質調査した大塚専一らによる実地調査が、国内における地質学の嚆矢(こうし)となったことから、長瀞は「日本地質学発祥の地」とされています。

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