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宇治橋と架橋の背景

宇治の町には古墳時代から人が住んで開発をはじめており、飛鳥時代になると宇治橋が架かります。宇治橋が初めて史料に登場するのは『日本書紀』です。

672年に天智天皇の弟・大海皇子(おおあまのみこ)と、天智天皇の息子・大友皇子(おおとものみこ)が争った壬申の乱が起こりました。このことが述べられている部分に「近江側(大友皇子)が莵道(うじ)の橋守に命じて…」とあることから、このときすでに宇治橋が架かっており、橋守りがいたことがわかります。

橋のたもとにある橋寺放生院の境内の碑文から、宇治橋は道登(どうとう)という奈良・元興寺(がんごうじ)の僧の発願によって646年に架けられたことがわかっています。橋寺の碑は上部4分の1ほどしか残されていませんが、南北朝時代に編纂された『帝王編年記(ていおうへんねんき)』には全文が写されており、そちらを見ると「宇治川は水の流れが速く、渡りたくても渡れない人で混雑している。命を落とした人も多い…」というような、架橋の背景もわかります。

宇治橋は平等院創建の際に現在の位置になった

当時の宇治橋は、本町通の延長線上に架けられていたと考えられていますが、1052年に平等院が創建されると、現在の位置に移されました。宇治橋の東詰にある茶屋・通圓は1160年創業で、代々橋守りを務めていたといいます。

宇治橋は平等院創建の際に現在の位置になった

扇状地と宇治橋

扇状地と宇治橋
国土地理院標準地図を元に作成

平等院のあたりから扇状に平野が広がっています。宇治川の上流部は河岸段丘となっています。

宇治の地形は古代から変わっていない

こうして宇治の町の歴史を振り返ってみると、風景は変わっても、地形は古代からあまり変わっていないことがわかります。

近年の調査で、平等院の宇治川を挟んで対岸にある宇治上神社は平等院とほぼ同時期に建てられたことが判明しました。平安貴族も、今と同じ風景を見ていたのです。

宇治の土壌は茶づくりに向いていた

宇治が国内でも指折りの茶どころとなったのも、扇状地のおかげです。そもそも宇治は霧が発生しやすい土地で、これが茶の大敵である霜を防ぐのです。さらに、適度な保水性と水はけのよさを兼ね備えた扇状地の土壌が茶づくりに向いていました

宇治では13世紀はじめから急速に茶園が増えたとされています。寛永年間には、幕府御用達を務める宇治茶師三仲間の制度が確立。幕府は高級茶を作らせて江戸まで茶壺に入れて運ばせました。現在でも宇治橋通りには茶師の家並みが残っています。

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・琵琶湖疏水の秘密/洛中と洛外を隔てるおどい
・観光のメッカ東山の地形(地獄の入り口六道珍皇寺)
・失われた巨椋池/天橋立はなぜあのような地形になったのか
・舞鶴が重要港湾となった地形的な秘密
・霧のまち亀岡(亀岡盆地)

…などなど京都のダイナミックな自然のポイントを解説。

Part.2 京都を駆ける充実の交通網

・山城盆地を通る街道(東海道、中山道の終着地)
・若狭と京都を結ぶ「鯖街道」
・日本初の一般営業用電車が通った京都市電
・京都鉄道博物館
・梅小路
・京都の私鉄〇〇な阪急
・大赤字から復活した京都丹後鉄道

…などなど京都ならではの交通事情を網羅。

Part.3 京都の歴史を深読み!

・丹後に一大勢力が存在した証拠 三大古墳に埋葬された人々
・古代日本を支えた渡来人と京都の関係
・なぜ京都は都になったのか 恭仁京~平安京までの変
・南北朝動乱の始まり 笠置山の戦い
・信長、光秀、秀吉…みんな京都で死んだ
・幕末の騒乱の舞台となった京都
・近代化にいち早く着手!日本初の博覧会は京都の寺で開かれた

…などなど、激動の京都の歴史に興味を惹きつける。

Part.4 京都で育まれた産業や文化

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・学問の都・京都の大学
・京料理とそれを支える伝統野菜
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・日本映画と京都
・「女酒」伏見の酒蔵
・王城の裏鬼門「男山」と岩清水八幡宮

…などなど京都の発展の歩みをたどる。

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