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戊辰戦争で躍動する旧幕府軍

ただし、奥羽越列藩同盟は必ずしも一枚岩ではありませんでした。各藩が次々と戦線を離脱していき、会津藩と旧幕府方の残党は若松城(福島県会津若松市)に籠城。その若松城も、9月22日には会津藩の降伏にともなって開城となり、東北戦争は幕を下ろします。

その直後、旧幕府艦隊を率いていた榎本武揚(えのもとたけあき)は、東北戦争で敗れた将兵およそ2500人を艦隊に収容し、蝦夷地へと向かいました。鷲ノ木(茅部郡森町)に降り立った榎本の軍勢は、10月26日に箱館府の府庁・五稜郭を占領。榎本と行動をともにしていた元新選組の副長・土方歳三(ひじかたとしぞう)は、わずかな手勢を引き連れて松前福山城を攻略しました。さらに旧幕府軍は江差を占領し、上陸からわずか1カ月足らずのあいだに蝦夷の新政府側勢力を一掃したのです。

戊辰戦争で躍動する旧幕府軍

戊辰戦争後に政府によって取り壊された松前福山城。写真は近年になって再建された天守

土方歳三や榎本武揚らが名を連ねる「蝦夷共和国」

「蝦夷地平定」を宣言した旧幕府勢力は、同年12月15日、公選入札(士官以上による選挙)で榎本武揚を総裁に選出しました。副総裁には松平太郎(旧幕府陸軍奉行並)、陸軍奉行には大鳥圭介、陸軍奉行並には土方歳三、海軍奉行には荒井郁之助が選ばれ、この事実上の政権は「蝦夷共和国」「榎本政権」と呼ばれています。なお、これらの名称は便宜上のものであり、旧幕府勢力が自称したことはありません。

実際、蝦夷共和国は明治新政府に代わる政権の樹立を目指していたわけではありませんでした。徳川家臣団が蝦夷地を領有し、徳川一門から首長を迎え入れ、旧幕臣で北方の防衛(対ロシア)や蝦夷地開拓をすることを標榜(ひょうぼう)していたのです。しかし、明治新政府がこれらの要求を呑むことはありませんでした。

戊辰戦争の終結と土方歳三の戦死

1869(明治2)年に入ると、新政府軍は蝦夷共和国への総攻撃を開始します。4月9日に江差(えさし)北の乙部に上陸し、同月17日には松前福山城を奪還しました。そして5月11日には箱館総攻撃が開始されたのです。このとき土方は五稜郭を出て一本木関門(函館市若松町)で応戦し、流れ弾が腹部に当たって戦死したと伝えられていますが、戦死場所には諸説あり、埋葬場所も不明です。

土方の死後、榎本一派の降伏により箱館戦争及び戊辰戦争に終止符が打たれました。

箱館戦争の展開

箱館戦争の展開
『新版 北海道の歴史 下 近代・現代編』(北海道新聞社、2006年)を元に作成

1868(明治元)年に五稜郭を占領し箱館を支配下に置いた旧幕府軍は、続いて松前福山城と館城も攻略。しかし、江差で開陽丸が座礁・沈没して痛手を負います。

翌年4月に新政府軍が乙部に上陸。江差を制圧したあと、三方に分かれて旧幕府軍と戦いながら進み、有川で合流して箱館へ向かいました。

四稜郭もあった!

箱館戦争の頃には、4つの堡塁(ほうるい)を持つ「四稜郭(しりょうかく)」も築造されていました。この四稜郭の規模は五稜郭の50分の1程度で、兵が立て籠もるための土塁と砲台くらいしか施設はなく、五稜郭の北方3㎞ほどの場所につくられました。

なお、峠下台場(七飯町)には七稜型の「七稜郭」が確認されており、場所は不明ですが「三稜郭」も存在したと伝えられています。これらはいずれも五稜郭の支城として機能したようです。

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