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屯田兵は士族の失業対策にもなっていた

屯田兵とは、兵士に住居と未開地を与え農業と軍事(訓練および出兵)を担わせる制度です。当初は士族の失業対策の意味もあり、元仙台藩の亘理伊達(わたりだて)一門が集団移住した例があります。

やがて屯田兵制が施行されると、1875(明治8)年、青森・宮城・酒田の3県と道内の志願者965人が札幌郊外の琴似兵村(ことにへいそん)(札幌市西区)に入植したのを皮切りに、移住が推進されていきました。

屯田兵たちの暮らしぶり

屯田兵の対象は、1890(明治23)年には平民にも拡大されました。そして同年9月20日、道東の上川(かみかわ)郡に旭川村、永山村(ながやまむら)、神居村(かむいむら)の3村が設置され、翌年には開発の尖兵(せんぺい)として屯田兵が入植することになります。

しかし、屯田兵の暮らしぶりは、厳しいものでした。屯田兵には住居や土地以外にも費用や食糧、農具などが支給されたものの、それらは北海道の過酷な自然環境を想定したものではなかったからです。

屯田兵を母体とした第七師団の編成

明治前期の日本陸軍は、日本各地に常備の鎮台(ちんだい)(部隊の編制単位)を置いていましたが、北海道には鎮台が設置されず、屯田兵がその役割を担いました。屯田兵は1877(明治10)年の西南戦争や1894(明治27)年の日清戦争にも従軍します。日本陸軍は1888(明治21)年に鎮台を師団へと改組すると、北海道には1896(明治29)年に屯田兵を母体として陸軍第七師団が編成されました。ただし、人口の少ない北海道では、道民だけで構成することは難しく、他県出身の兵も第七師団に加えられました。

第七師団の司令部は札幌に置かれていましたが、北辺警備の観点から上川地域への移転が検討され、1901(明治34)年に旭川へと移転しました。これに先立つ1898(明治31)年には上川線滝川~旭川間で鉄道が開通していたため、旭川に白羽の矢が立ったのです。

屯田兵を母体とした第七師団の編成

屯田兵村の区画が受け継がれています。第七師団の設置以来、上川地域の拠点として発展してきました。

クマの木彫りが第七師団の軍人に好評?

現在では北海道土産の定番となっている木彫りのクマは、旭川の近文(チカプニ)コタン(旭川市緑町)がブームの発祥地でした。もともと上川アイヌは木への愛着が強く、木彫りの表現力に富んでおり、この地に住む松井梅太郎が木彫りのクマを売り出しました。

すると、近文コタンの付近に移転してきた第七師団の軍人らに好評を博したのです。やがて木彫りのクマはアイヌを代表する民芸品へと成長し、アイヌにとって貴重な現金収入を得る生業となったのです。

第七師団が勝利に貢献した日露戦争と屯田兵の廃止

1904(明治37)年に日露戦争が勃発すると、第七師団は旅順(りょじゅん)攻略戦や奉天会戦(ほうてんかいせん)に出征。大損害を出しながらも、日本軍の勝利に大いに貢献します。以後もシベリア出征や満州事変など過酷な戦争に従軍し、「北鎮(ほくちん)部隊」と尊称されました。

なお、日露戦争の始まった1904(明治37)年、屯田兵は廃止されました。この翌年、北海道の人口は119万2千人に達し、道民からの徴兵で兵士を集めることも可能なほど開拓が進んだと判断されたのです。

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