フリーワード検索

ジャンルから探す

トップ > カルチャー >  関西 > 大阪府 >

大和川は水害の多発地帯

そんな大和川は、古くから人や荷物の運送船が通る主要水路であり、同時に水害の多発地帯でもありました。なぜなら、かつては生駒山地(いこまさんち)と上町台地の間を複数の河川に分かれて流れていて、しかも流域は湿地帯であるために排水性が極度に悪かったからでした。

大和川流域の都市開発で大規模な水害が発生

そして、大坂の都市開発がさかんとなった江戸時代になると、建築用の資材調達のため山々が大きく伐採されて土砂が流入しやすくなり、大雨が降れば必ずといっていいほど洪水が起こりました。

幾度も堤防がつくられはするものの、暴風雨のたびに決壊しては周辺地域に被害を与えていました。1633年には柏原村(現・柏原市)で堤防が決壊し、50軒の家屋が流され36人の死者を出しています。

大和川の付け替え工事までの道のり

こうした被害をなくすには、川の形そのものを変えるしかありません。住民たちからの嘆願を受け、幕府が付け替えの調査をはじめたのは1660年でした。

しかし、河川工事による土地の没収を恐れて反対運動をする村々も多く、調査は5回行われましたが工事は実行されませんでした。洪水被害は治まらず、1701年の今米(いまごめ)村(現・東大阪市今米)大水害と村の庄屋である中甚兵衛(なかじんべえ)らが嘆願書を何度も送ったことで、1704年にようやく付け替え工事がはじまりました。

付け替え前の大和川とその支流

現在は大阪市と堺市の市境となっている大和川ですが、付け替えが行われるまでは南から北方向へ平野部を縫うように流れていました。工事によって柏原市から大阪湾にそそぐようになり、ほぼ直線のルートをとることで氾濫の危険性も低くなったのです。

大和川が現在の形で完成

幕府は西へと延びる約14kmの新水路をつくる計画を立て、川底の掘削を最小限にし、左右に堤防を築く方法で工事期間を短縮。関西の諸藩を投入した工事によって、わずか8カ月で現在の大和川が完成しました。工事にかかった費用は、じつに約7万1500両(現在の価値で約140億円)、人員数は約300万人とされています。

現在の下流にある落堀川(おちぼりがわ)、大乗川(だいじょうがわ)、東除川(ひがしよけがわ)はこの工事で掘られた排水用の川で、土砂は大和川の堤防に流用されました。

旧大和川の面影を伝える高台に建つ神社や墓地

旧大和川の痕跡は近代の宅地開発も合わさり多くが失われていますが、柏原市などで神社や墓地が高台にあるのは洪水で流されないための名残で、その場所は古い堤防の跡地といわれています。

『大阪のトリセツ』好評発売中!

大阪府の地形や地質、歴史、文化、産業など多彩な特徴と魅力を、地図を読み解きながら紹介するマップエンターテインメント。大阪府の知っているようで知られていない意外な素顔に迫ります。思わず地図を片手に、行って確かめてみたくなる情報を満載!

【見どころ―目次より抜粋】
Part.1:地図で読み解く大阪の大地
大阪の歴史は水を起源とするとされる理由
大阪府の属する関西・近畿・畿内の違い
こんなに違った古代の大阪! 消えた河内湾と河内湖 ほか

Part.2:大阪を駆ける充実の交通網
西国へ、京都へ、熊野へ府下を通る旧街道の痕跡
どの道路が、なぜ混むのか?大阪の道路網の現状
徹底比較! 大阪の私鉄(阪急電鉄と阪神電鉄、京阪電気鉄道、近畿日本鉄道、南海電気鉄道) ほか

Part.3:大阪の歴史を深読み!
幕府軍が落とせなかった千早赤坂城の秘密
織田信長に恭順して残された富田林寺内町
天下の台所として日本経済を支えた中之島 ほか

Part.4:大阪で生まれた産業や文化
ダイハツ、パナソニック・・企業城下町の今
万博、花博、EXPO2025など国際博覧会の最多開催地・大阪
偉人たちが好んで食したなにわの伝統野菜 ほか

<コラム>
データで分かる74市区町村 人口と所得、観光、工業・農業・漁業
絵図で見る 大阪の川と「八百八橋」
鳥瞰図で見る 100年前がわかる大阪市パノラマ地図
鳥瞰図で見る 吉田初三郎が描いた90年前の大阪府
鳥瞰図で見る 大阪周辺にある歴代天皇・皇族の陵墓
絵図で見る 大坂冬の陣における諸将の配置
一見の価値あり! ヘンチクリンな建築物

『大阪のトリセツ』を購入するならこちら

リンク先での売上の一部が当サイトに還元される場合があります。
1 2

※掲載の情報は取材時点のものです。お出かけの際は事前に最新の情報をご確認ください。

まっぷるトラベルガイド編集部は、旅やおでかけが大好きな人間が集まっています。
皆様に旅やおでかけの楽しさ、その土地ならではの魅力をお伝えすることを目標に、スタッフ自らの体験や、旅のプロ・専門家への取材をもとにしたおすすめスポットや旅行プラン、旅行の予備知識など信頼できる情報を発信してまいります!

エリア

トップ > カルチャー >  関西 > 大阪府 >

この記事に関連するタグ