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伊豆の特産品「わさび」と「シイタケ」を育んだ地形と自然環境とは

フィリピン海プレートにある伊豆半島は、100万年前頃に本州と衝突。活発な噴火活動によってできた山脈は標高1000m級で、海から吹きつける湿った風が山々に雨をたくさん降らせます。この多量の雨が、伊豆半島を形成している火山噴出物層に浸透。わさびの生育に欠かせない澄んだ水が、清らかで豊かな湧水となってもたらされていることが、この場所でわさびが栽培されることと大きく関わっています。

また、雨が多い場所はシイタケにとっても最適な環境です。里山林をうまく循環利用することで、原木林やスギ・ヒノキ林による「パッチ状里山林」が形成。この独特の環境が生まれたことも、ほかの産地に比べてその発生・生育期間が長く、伊豆がシイタケの産地になった要因でもあります。

伊豆の特産品「わさび」と「シイタケ」を育んだ地形と自然環境とは
気象庁ホームページを元に作成

グラフは2012年~14年の年間雨量の平均値。

伊豆の特産品「わさび」と「シイタケ」を生んだ食文化の発達

シイタケの人工栽培は、1741(寛保元)年に伊豆の石渡清助(いしわたりせいすけ)が手がけたのが国内初とされています。3年後には、シイタケ栽培指導を行っていた板垣勘四郎(いたがきかんしろう)がわさび栽培の技術を導入。

こうした背景には当時、人口100万人の大都市となっていた江戸で、濃口醬油や江戸前の握り寿司といった食文化が飛躍的に発達した状況があります。庶民の食生活も多様化し、需要が高まったこと、また、幕府のもとで廻船による供給が整備され、伊豆から江戸への「西回り航路」を使って運ぶことができたというアクセスのよさも、伊豆の産地化に拍車をかけたとみられます。

伊豆の特産品「シイタケ」は海外へも輸出

明治維新以降、伊豆のシイタケは、国内消費のみならず、中国などへの輸出を盛んに行うようになります。当時の統計を見ると、明治末期の干しシイタケの輸出量は約1000t。静岡県はそのうちの1/4を占めて全国トップであり、伊豆が産地の中心でした。質の高い伊豆の干しシイタケは「伊豆冬菇(イートゥードングー)」と呼ばれ、海外でも高い評価を得ていました。長い間、江戸の需要を支えてきた実績が、海外への輸出に結びついたといえます。

伊豆の特産品「わさび」と「シイタケ」の歴史を支えた生産者の努力

二百年以上、伊豆の特産として、人々のニーズに応えてきたわさびとシイタケ。シイタケは今も多くの人に支持され、わさびの市場取扱量は全国1位に輝きます。

こうした産地が生まれたのは、日本でも有数の恵まれた「ジオ」が影響していることはもちろん、地の利を生かして生産技術を磨き、より質の高いものを生み出そうと尽くしてきた人々の努力がありました。

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『静岡のトリセツ』好評発売中!

日本の各県の地形や地質、歴史、文化、産業など多彩な特徴と魅力を、地図を読み解きながら紹介するマップエンターテインメント。静岡の知っているようで知られていない意外な素顔に迫ります。思わず地図を片手に、行って確かめてみたくなる情報を満載!

Part.1 地図で読み解く静岡の大地

・富士山が標高日本一、駿河湾が深海日本一になった理由
・南から来た、火山の贈り物、伊豆半島ジオパーク
・交通の難所「大崩海岸」は海底噴火によって作られた!
・「日本三大人工美林」数えられる天竜の杉林は川の氾濫に関係があった?
・磐田市にトンボの楽園があった!
・湖?川?海?浜名湖の正体を探れ!
・世界遺産「三保松原」は江戸時代に「島」から「半島」になった!

などなど静岡のダイナミックな自然のポイントを解説。

Part.2 静岡を駆け抜ける鉄道網

・静岡県の鉄道の歴史は沼津市内の貨物線から始まった
・かつては「東海道本線」だった由緒正しき(?)御殿場線
・JRと私鉄が一体となって形成する伊豆半島東海岸の鉄道ルート
・意外なエピソードを秘めた東海道本線・静岡鉄道の並行区間
・「政令指定都市・静岡」の市内も走る山岳鉄道、大井川鐵道井川線
・軍事上の要請が背景にある天竜浜名湖鉄道(旧国鉄二俣線)のルート

などなど静岡ならではの鉄道事情を網羅。

Part.3 静岡で動いた歴史の瞬間

・静岡最古の古代人は愛鷹山付近にいた!
・日本考古学の聖地・登呂遺跡
・日本書紀に見る静岡とヤマトタケルの伝説
・源頼朝も流された流刑地伊豆
・下田が開港の舞台になったのはなぜか
・江戸城よりも大きかった駿府城天守台
・日本にたった一つしかない形の城・田中城
・家康の遺体は日光ではなく久能山にある?
・徳川慶喜と渋沢栄一の意外なつながり

などなど、激動の静岡の歴史に興味を惹きつける。

Part.4 静岡で育まれた産業や文化

・模型の首都!静岡が生まれたワケ
・バイクに楽器。浜松のものづくりは綿花の栽培から
・ボールは友達!サッカー王国しずおか
・富士山麓の湧水が育てた製紙業
・月ではなく富士山に帰ってしまう「かぐや姫」
・仏教界のスーパースター空海が静岡に残した伝説

…などなど静岡の発展の歩みをたどる。

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※掲載の情報は取材時点のものです。お出かけの際は事前に最新の情報をご確認ください。

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