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淡路島の線香づくりの歴史

淡路島で線香づくりが本格的に広まったのは、流木が流れついてから1200年以上が過ぎた江戸時代の末期。当時、江井の港は多くの漁師や廻船問屋が行き交い、130隻もの帆船が瀬戸内海から江戸や九州にまでくり出していました。

とはいえ、冬はきびしい季節風のため海が荒れて出航できず、船乗りの家は収入が得られませんでした。こうした状況下、染物屋の田中辰蔵(たつぞう)が線香づくりを始め、冬期の内職として近隣の家々にも勧めたのです。

淡路島の線香づくりのモトとなった堺の線香

辰蔵は商用でたびたび堺(現在の大阪府堺市)を訪れており、江戸時代を通じて堺は線香の名産地でした。堺は香木が自生しているわけではなく、長崎などを経由して東南アジアから海路で原料を仕入れていました。この方法が淡路島でも取り入れられたのです。辰蔵は堺の線香職人を高給で雇い入れ、島民にも線香づくりの技術を伝えました。

淡路島は線香づくりに適した土地だった

線香づくりでは最後に乾燥させる過程が重要です。この点で江井周辺は恵まれた環境にありました。瀬戸内海は陽ざしが強く、淡路島の西岸は中国山地と四国山地の間を通る西風が強く吹きつけます。冬でも気温が氷点下にまで下がることはほとんどなく、線香を天日干しするのに都合がよかったようです。完成した線香は、江井の港から海路を通じて九州をはじめ西日本の各地に売られました。

淡路島の線香が多く作られている江井地区

国土地理院標準地図を元に作成

江井港のある淡路市江井地区では、住民の4人に1人が線香の生産や販売に関わっています。また、同じ淡路市には、ハーブや芳香樹などが多数植生する「淡路香りの公園」や香りのテーマパーク「パルシェ香りの館」があります。

淡路島の線香が国内シェアトップになったわけ

その後、堺は戦時中の空襲で老舗の線香業者の多くが被災して、しだいに線香づくりが衰退し、代わりに淡路島が線香づくりで全国トップのシェアを誇るようになりました。

現在も淡路市には多くの線香メーカーがあり、淡路市江井の淡路梅薫堂(あわじばいくんどう)、淡路市多賀の薫寿堂(くんじゅどう)などでは、工場見学や、自分で香料などの材料を調合してのオリジナル線香づくりが体験できます。

もう1つの伝統の名物「淡路瓦」

淡路島では、江戸時代初期の1610年代から瓦づくりが広まりました。

原料は島内で採取された粘土で、銀色に輝く「いぶし瓦」の出荷量は全国の約4割を占めます。島の南部の主要な地場産業になっています。南あわじ市には、著名人の手形を刻んだ「ふれ愛かわら舞台」も築かれています。

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