フリーワード検索

ジャンルから探す

トップ > カルチャー >  関東 > 群馬県 >

上野三碑はユネスコ「世界の記憶」に登録されている

2017年10月、この上野三碑がユネスコ「世界の記憶」に登録されました。「世界の記憶」とは「世界遺産」「無形文化遺産」と並ぶユネスコ三大遺産事業のひとつで、世界的に重要な記録物への認識向上とアクセスの向上、保存の促進を目的として1992年に開始された事業です。

上野三碑に記された3つの重要な記録とは

上野三碑は、3つの事実を伝えています。

1つ目は、「多民族共生社会」の形成です。石碑文化はもともと、中国から朝鮮半島経由で伝来してきたものです。上野三碑が建てられた地域には新羅系をはじめとする多くの渡来人が居住しており、石碑も渡来人の協力によって建立されたと考えられています。そのためこの地域では東アジア諸国の文化や渡来人を受け入れて共存する「多民族共生社会」が形成されていたことがわかります。

2つ目は、仏教の伝来と浸透です。山上碑を建てた長利(ちょうり)という人物は、東国を代表する大寺院・放光寺の僧でした。また、金井沢碑には三家氏(みやけし)という一族が仏教への信仰を誓う文が刻まれており、当時の上野国(こうずけのくに)(群馬県)にも仏教が浸透していたことがうかがえます。

3つ目は日本語の基礎の芽生えです。当時の公用文はもちろん漢文でしたが、漢文とは異なる日本独自の表記を編み出そうという努力が国内で続けられていました。その流れのなかで、訓読みした漢字を日本語の語順に並べ替える方法が採用されます。そのことがわかるのが山上碑です。石碑に刻まれた53個の漢字はすべて、日本語の順番に並べられています。山上碑はこの表記方法が完全な形で残る、最古の石碑なのです。

高崎市に今も残る上野三碑

高崎市に今も残る上野三碑

上野三碑は鏑川と烏川の合流点付近にあり、それぞれ非常に近い距離に位置します。貴重な古碑が集中しているのは極めて珍しい例です。

山上碑(681年)

長利という僧が、亡き母である黒売刀自(くろめとじ)のために建てた石碑。完全な形で現存する日本最古の石碑であり、日本語の順番に漢字が並べられている点でも貴重な資料といえます。

山上碑

住所
群馬県高崎市山名町2104

金井沢碑(726年)

三家氏という一族が先祖供養と子孫繁栄、そして一族が仏の教えで結ばれ、仏に仕えることを誓った石碑。碑文からは、戸籍の整備状況や、男女平等社会の形成なども読み取ることができます。

多胡碑(711年)

既存の3つの郡から300戸を割いて、新しく多胡郡(たごのこおり)がつくられた記念に建てられました。碑文中に出てくる「羊」という人物については諸説あります。書体が美しく、書道的な価値も高い碑。

多胡碑

住所
群馬県高崎市吉井町池1095

多胡碑には竹取物語の登場人物が刻まれている!?

多胡碑の碑文に記された2人の人物、「石上尊(いそのかみのみこと)(石上麻呂)」と「藤原尊(ふじわらのみこと)(藤原不比等)」は、「竹取物語」でかぐや姫に求婚した5人のうちの「中納言石上麻呂(ちゅうなごんいそのかみのまろ)」と「車持皇子(くらもちのみこ)」のモデルといわれています。藤原不比等の母親は群馬にゆかりのある車持氏(くるまもちうじ)であり、このことから「車持皇子」とのつながりが推測されています。

上野三碑は東アジアにおける人・文化の交流を明らかにする原資料

上野三碑は、石碑文化を通して東アジアにおける人・文化の交流があったこと、そしてその交流によって形成される新たな地域社会の実像を明らかにする原資料であるとされています。

これらは後生に継承されるべき文化財の本質を体現する事例として価値を有すると考えられ、ユネスコ「世界の記憶」に申請されました。そしてその価値は世界で認められ、今も大切に守り継がれています。

『群馬のトリセツ』好評発売中!

群馬県の地形や地質、歴史、文化、産業など多彩な特徴と魅力を、地図を読み解きながら紹介するマップエンターテインメント。群馬県の知っているようで知られていない意外な素顔に迫ります。思わず地図を片手に、行って確かめてみたくなる情報を満載!

Part.1 地図で読み解く群馬の大地

・日本でたった8県しかない「海なし県」 大昔は群馬にも海があった!?
・徳川家康も重要視した日本一の川 暮らしを支える利根川とダム
・地質学的に貴重な資源と、独自の営みが残る 下仁田ジオパークってどんなところ? ほか

Part.2 群馬を駆ける充実の交通網

・こんなところにも鉄道が走っていた! 遺構が残っている群馬の廃線
・昭和に活躍した歴史ある蒸気機関車! 貴重なSLに今も乗れる理由は?
・群馬から東京ディズニーリゾートまで行ける! 日本一のサイクリングロード ほか

Part.3 群馬にまつわる歴史の話

・現・みどり市で見つかった歴史的大発見! 岩宿遺跡はどうして有名なの?
・溶岩の絶景の裏には、歴史的犠牲があった 天明の大飢饉は浅間山が一因!?
・世界遺産は富岡製糸場だけじゃない! 絹産業遺産群とはどんなところ? ほか

Part.4 群馬で育まれた文化や産業

・焼きまんじゅうやうどんは火山が育んだ!? 群馬で生まれた粉ものグルメ
・群馬県民に愛されるマスコットキャラクター ぐんまちゃんは実は2代目!
・「西に西陣、東に桐生」といわれる機どころ 桐生の織物の文化と歴史 ほか

コラム

・データで分かる全35市町村 人口の増減、観光、農業・工業
・吉田初三郎が描いた群馬の鳥瞰図
・上毛かるたにも登場する 群馬が誇る、ゆかりのある偉人
・まだまだある、群馬が誇る日本一! 群馬で見つけた日本で一番〇〇なもの

『群馬のトリセツ』を購入するならこちら

リンク先での売上の一部が当サイトに還元される場合があります。
1 2

※掲載の情報は取材時点のものです。お出かけの際は事前に最新の情報をご確認ください。

まっぷるトラベルガイド編集部は、旅やおでかけが大好きな人間が集まっています。
皆様に旅やおでかけの楽しさ、その土地ならではの魅力をお伝えすることを目標に、スタッフ自らの体験や、旅のプロ・専門家への取材をもとにしたおすすめスポットや旅行プラン、旅行の予備知識など信頼できる情報を発信してまいります!