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カキの養殖に用いられる石蒔式養殖法とは

生まれたてのカキの幼生(ようせい)は波に乗って海を漂い、生後2週間ほどで石や貝殻など固いものに付着して稚貝となり、その場所で成長します。

石蒔式養殖法は干潟に小石を並べてカキの稚貝を付着させ、成長を待って収獲する方法です。カキが自然に付着するのを待つだけなので、生産量はそれほど多くありませんでした。

広島のカキ養殖は江戸時代に盛んとなり特産品として定着

17世紀半ばになると、「ひび建て養殖法」が開発されます。これは、干潟に竹や雑木を立ててカキの稚貝を付着させ、成長を待って収獲する方法です。

竹や雑木は石より面積が広くカキが付着しやすいため生産量が上がり、江戸時代には干潟で養殖が可能なカキやノリが広島藩の特産品として定着しました。遠浅の干潟が広がる広島県だからこそ、カキ養殖が盛んになったのです。

ひび建て養殖法はその後約300年間、昭和初期になるまで続けられました。

広島のカキ養殖は昭和になるとさらに促進

昭和初期になると、より生産量の多い簡易垂下法が開発されました。これは、干潟に高さ1.3~1.4mの棚を作って貝殻(イタヤ貝)と竹の管を交互に通した連をつり下げ、カキを付着させる方法です。連を1本ずつ操作できるため作業効率も良く、カキもよく育ちました。

1932(昭和7)年、広島県水産試験場で初めて「筏式垂下法」が行われます。干潟の棚ではなくイカダに貝殻と竹の管を交互に通した連をつり下げ、成長を待って収獲する方法です。

当初は杉やヒノキでイカダを組み立てていましたが、風や波に弱くあまり普及しませんでした。

広島のカキ養殖の漁場を広げた「筏式垂下法」

1953(昭和28)年にイカダを孟宗竹(もうそうちく)にしてみたところ、風や波に強いことが判明。杉やヒノキより製作費が安かったため、竹製のイカダによる「筏式垂下法」が急速に普及しました。

このころになると、埋め立てにより広島湾の干潟が減少。筏式垂下法は漁場の沖合化を可能にし、漁場面積を拡大させることとなります。

カキの稚貝を付着させるのに、ホタテの貝殻を使用するようになったのも、このころです。ホタテの貝殻は、ホタテ養殖の産地である北海道や中国から購入しています。ホタテの貝殻が面積が広いためカキの稚貝を効率よく付着させることができるうえ、軽くて取扱いやすいのがポイントです。

広島湾はカキの養殖に最適

広島県内の沿岸部では、各地でカキ養殖が行われています。生産量は約1万7400トンを誇っており、特に呉市や江田島市の生産量が多いといわれます。

広島湾がカキの養殖に適している理由として、「波の穏やかさ」「エサの豊富さ」「稚貝の採れやすさ」が挙げられます。激しい波があると養殖イカダが破損する恐れがありますが、瀬戸内海は波が静かなので養殖に適しています

また太田川によって陸上からの栄養分(窒素・リン・ケイ酸など)が運ばれてくるため、植物プランクトンが多く発生します。この植物プランクトンをエサに、カキが大きく育つのです。

広島湾はもともとカキの稚貝が採れやすいエリアではありますが、カキ養殖により親となるカキが多いため、稚貝も多い状況にあります。加えて周囲を島で囲まれているため、生まれた幼生が別の場所に流れていかず、湾内にとどまって成長する可能性が高いのです。

県東部でもカキ養殖は行われていますが稚貝が採れにくいこともあり、養殖エリアは県西部に集中しています。

広島県西 の広島湾・呉湾・広湾・三津湾の沿岸でカキ養殖が行われています。

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