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琉球競馬はギャンブル競馬とは異なる

日本では戦後、競馬法に基づき、地方自治体の主導により競馬が開催され、ほかにも興行としての闇競馬が全国各地で行われていました。これらはすべてギャンブルとしての競馬であり、競走馬は開催者、馬主、観客などが金銭を得るための経済動物として扱われていました。しかし、そんな競馬のあり方とはまったく異なる性質の競馬が、戦前の沖縄で行われていたのです。

琉球競馬は足並みの美しさを競うもの

沖縄では、「ンマスープ」「ンマハラセー(ンマハラシー)」「馬寄」と呼ばれた競馬が、近世から太平洋戦争の沖縄戦の直前まで開催されていました。この競馬は複数の馬がコースを疾走して順位を決めるのではなく、小型の沖縄在来馬が2頭ずつ、200mほどの直線走路で、足並みの美しさを対戦方式で競うものでした。参加する馬は背に鞍をつけるだけではなく、後肢や肩先を鮮やかな生地や花で飾りつけられ、騎手もまた艶やかな羽織袴に身を包みます。そしてレースでは、紅白二手に分かれ、2頭が併走して審判のいるゴールを目指します。審判はどちらが早くゴールするのかを確認するのではなく、飾りつけと走り方の美しさを審査するのが役目でした。2頭がゴールを越えると、審判が紅旗・白旗のどちらかを掲げて勝敗を決します。

琉球競馬が行われた馬場はおよそ198場にも及びます。そのなかでも今帰仁村の仲原馬場は、競馬の開催日には周囲から多くの見物人が集まり、大いににぎわったといいます。

琉球競馬は全力で駆けると反則負け

この琉球競馬は、美を競う競馬だからこそ、馬の走り方も独特でした。走るスピードは時速6〜7㎞から15㎞の間くらいで、全力で駆けると反則負けになります。イシバイ(落ち着いた走り)、ジーバイ(地走り)とも呼ばれるゆったりした走りで、四肢のうち一肢を地面につけて進みます。しかも右前脚と右後脚、左前脚と左後脚を同時に出す走り方でした。これは馬が加速しても上下に揺れず、美しさをキープできるからだとされています。

琉球競馬は名誉かけた真剣勝負!

また、速さではなく美しさに特化していた琉球競馬は、賭けとも無縁だったといいます。勝者を決めるのは審判ですが、順位を決めるための明確な基準がなかったため、ギャンブルの対象にはなり得なかったのです。馬主や騎手への褒賞も賞金ではなく賞品でした。琉球競馬とは、ウチナンチュの名誉をかけた真剣勝負だったのです。

与那国馬と宮古馬とは

日本に現存する在来馬は8種類。そのうちの2種類が沖縄県の与那国馬と宮古馬です。与那国馬は体高が1.2mほどと小型ながら、足腰と蹄が強く、農耕馬として島の人々に愛されてきました。宮古馬も与那国馬とほぼ同じサイズ。性格は温厚で体力があり、かつては農耕馬としてだけではなく、琉球王朝の王の公用馬としても活躍しました。この2種はどちらも個体数が少なく、町や沖縄県の天然記念物に指定されています。

与那国馬
離島中の離島である与那国島に生息する与那国馬は、外来の馬との交雑が少なく、在来馬のなかでも純度の高い馬として知られています。

宮古馬
性格がとても穏やかで人懐っこいため、皇室に献上されたこともある宮古馬ですが、個体数はかなり少なくなっています。

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Part.1 地図で読み解く沖縄

・造山運動によって形成された琉球列島/新しい地層と古い地層、南北で異なる沖縄本島の地質
・エメラルドグリーンの海は隆起してできたサンゴ礁のおかげ?
・グスクの石垣から地下ダムまで利用される琉球石灰岩
・貴重な自然の宝庫「やんばるの森」とは?
・マングローブの生態系が「生きものたちのゆりかご」と呼ばれるのはなぜ?
・県内唯一の活火山島である硫黄鳥島は硫黄の産地だった
・西表島で行われた炭鉱開発とは?…などなど沖縄の自然を解説。

Part.2 陸海空、沖縄に巡らされた交通網

・那覇空港と市街を結ぶ県内唯一の鉄道路線「ゆいレール」
・県民の足として、輸送手段としても活躍していた沖縄県鉄道とは?
・海軍の飛行場からスタートし、各地を結ぶ那覇空港
・明治初め、本州と那覇を結ぶ国内最長の定期航路が誕生!
・沖縄復興のシンボルといわれた730バスとは、どのようなバスだったのか?
・全ての道は首里城に通じる?首里城から那覇港、本島南部に通じる琉球石灰岩の道

…などなど沖縄の交通事情を解説。

Part.3 沖縄で動いた歴史の瞬間

・沖縄の古代史総論/約2000万年前に住んでいた港川人はどこからやってきたのか?
・沖縄本島を三分割して約100年も勢力争いが続いた三山時代とは?
・琉球から江戸まで片道2000㎞の長旅 琉球使節の江戸参府の全貌
・黒船が琉球にやってきた!浦賀上陸前に琉球を訪れたペリーの目的とは?
・ソテツ地獄を経て、国内で唯一戦場となった沖縄
・沖縄の日本復帰を記念して開催された沖縄海洋博覧会とは?

…などなど沖縄の歴史を徹底解説。

Part.4 沖縄で育まれた産業や文化

・元々は宮廷料理だった?沖縄の郷土料理・沖縄そば
・男子禁制の祈りの場、御嶽とはいったいどのような場所なのか?
・15世紀に伝わり戦火からも復活!沖縄を代表する酒・泡盛の奇跡
・薩摩から朝鮮人陶工がやってきたのが始まり?沖縄やちむんの魅力とは
・絣や紅型のほか多彩な染織物「染色文化の宝庫」と呼ばれる沖縄

…などなど沖縄の産業と文化を丁寧に解説。

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