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「宝石王国」山梨の歴史

山梨の宝飾品の歴史は縄文時代にまで遡ります。遺跡からは勾玉(まがたま)や水晶、黒曜石が発掘されており、古くから採掘されていたことがうかがえます。

産業として盛んになったのは江戸時代。甲府北部にある金峰山(標高2599m)の一帯で良質な水晶が産出し、地元の貴重な財源となりました。それらを買い付けに来た京都の商人たちが、甲府・御岳村の金櫻神社の神官に水晶研磨の技術を伝えたとされます。

金櫻神社

もともと甲州はかんざしや煙管(きせる)などの貴金属細工が盛んだった地域。細工の手仕事と“玉磨き”の技術が結びつき、水晶研磨の職人が育っていったのです。

1901(明治34)年、甲斐物産商会が発行した物産カタログ『甲斐物産商報』には、ブドウや和紙とともに水晶が掲載されており、当時すでに甲州の特産品として認知されていたことがわかります。

「宝石王国」山梨の歴史

「宝石王国」山梨の発展にブレーキをかけた戦争

明治末期から大正にかけて水晶研磨の機械化・電化を進めたことで、貴金属加工の技術はさらに磨かれていきましたが、その勢いにブレーキをかけたのは戦争でした。昭和に入り、戦局が激しくなると、研磨技術は宝飾品ではなく軍需品製造へ方向転換を強いられます

1940(昭和15)年の「奢侈(しゃし)品等製造販売制限規則」施行で宝飾品の製造・加工・販売が禁止されると、研磨宝飾業者の多くが転職や廃業に追い込まれ、さらに、空襲によって甲府市の8割が焦土と化しました。

「宝石王国」山梨に新たに芽生えた産業とは

戦後復興期、高度経済成長期を経て電子機械や半導体製造、液晶製造といった新たな産業が芽吹きました。

戦時中、多くの企業が山梨へ工場を移していたこともひとつの要因でした。1943(昭和18)年頃から、東京などから多くの企業が山梨へ工場の疎開を始め、東京芝浦電気が甲府市に、立川飛行機が現中央市(旧田富町)に疎開工場を建設。戦後すみやかに工場の再始動を果たしました。

加えて1982(昭和57)年、中央自動車道が全線開通し、企業の工業団地への進出、県内各地への誘致に拍車がかかります。

現代では半導体や液晶製造関連の世界的メーカーがいくつも軒を連ねている山梨。江戸時代から積み重ねられてきた研磨技術と、ものづくりスピリットは、時代を切り拓く先端技術として、今に受け継がれているのです。

「宝石王国」山梨に新たに芽生えた産業とは
「やまなし技術の宝石箱」を元に作成

宝石だけじゃない!「磨く・削る」技術が生み出す山梨の伝統工芸品

ジュエリーや半導体のほか、山梨には精密な手作業から生み出される伝統工芸品もあります。

例えば六郷(市川三郷町)は印章作りで有名です。もとは水晶を印とする篆刻から始まったとされ「日本一のハンコの里」を謳います。

また、和硯「雨畑硯(あめはたすずり)」の原石である雨畑真石は畑川の渓谷で産出され、最高峰の硯へと磨き上げられます。

磨く、削る、掘り出すといった繊細で緻密な手作業が、山梨ならではの伝統工芸を支えています。

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地形、交通、歴史、産業…あらゆる角度から山梨県を分析!

山梨の地形や地質、歴史、文化、産業など多彩な特徴と魅力を、地図を読み解きながら紹介するマップエンターテインメント。山梨の知っているようで知られていない意外な素顔に迫ります。思わず地図を片手に、行って確かめてみたくなる情報満載!

Part.1 地図で読み解く山梨の大地

・山の都として栄えた甲府盆地はどのようにできたのか?
・富士五湖は富士山の溶岩でせき止められた2つの湖だった!?
・日本一の造形美をつくり出す昇仙峡は何でできている?
・3000年に“2度”の大噴火が生み出した青木ヶ原の樹海
・もうひとつの富士「黒富士」にある燕岩の正体
・富士山文化遺産の構成資産、山梨にある2つの「胎内めぐり」
・「池」だけど「八海」!神秘の風景・忍野八海
・日照時間日本一の秘密は地形にあり!?
・富士川の洪水を防いだ「信玄堤」と「万力林」

…などなど山梨のダイナミックな自然のポイントを解説。

Part.2 山梨を駆け抜ける鉄道網

・甲州市から山梨市にかけて、中央本線が北に大きく迂回するわけ
・高額運賃の私鉄が国有化の悲願を果たし、現在に至る身延線
・昭和モダンの香りを漂わせ、今も現役の山梨の駅舎たち
・ここは東京?ちょっと意外な丹波山村の公共交通事情
・甲府盆地を走り、「ボロ電」と呼ばれた山梨交通電車線
・実は2つの路線から成り立っている富士急行線
・約2年間だけ標高日本一の駅があった、小海線の山梨県内区間
・6つのスイッチバック駅に助けられ、甲斐路を辿った中央本線
・リニアモーターカーの実験線が山梨にできたわけ
・古くからの富士山吉田口登山道を継承する山梨県道701号

…などなど山梨ならではの鉄道事情を網羅。

Part.3 山梨で動いた歴史の瞬間

・古代 いにしえの八ヶ岳周辺は“星降る里”だった!?
・古代 甲斐銚子塚古墳が東日本最大級なワケ
・平安~中世 武田氏の先祖にあたる戦国エリート「甲斐源氏」
・中世(鎌倉) 日蓮聖人の波乱に満ちた生涯と身延山
・戦国時代 山梨の神!武田氏3代が鎮座した武田神社
・戦国時代 信玄が進み勝頼が広げた武田氏の最大領地は?
・江戸時代 徳川家康に対抗するために築城された甲府城
・江戸時代 幕府直轄地で発展した甲州街道と富士川舟運
・近現代 幕末の財界を牛耳った甲州商人が売ったもの
・近現代 明治40年の甲府の大水害からの復興
・近現代 空港のない山梨県にあった秘密の飛行場“ロタコ”

…などなど、激動の山梨の歴史に興味を惹きつける。

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