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富士吉田の機織りが栄えた理由は富士山にあった!

山梨県の織物にまつわる最も古い記録は、1000年以上前の平安時代のもの。967(康保4)年に施行された「延喜式(えんぎしき)」という法律の中に「甲斐の国は布を納めること」と記されています。

この地が織物の産地として栄えた背景には富士山の存在があります。富士山に降った雨や雪は長い時間をかけて磨き上げられ天然水となります。硬度が低く、染色を邪魔する物質が少ないため、鮮やかな色を出すことができるのです。

江戸時代にはおしゃれを楽しむため、上質で美しい「甲斐絹」が裏地に好まれました。井原西鶴の「好色一代男」にも、しゃれた登場人物の代名詞に「郡内織物」が使われるほどでした。

富士吉田の機織りに訪れた危機と戦後の黄金時代

こうして高級織物の産地として栄えた郡内地方でしたが、第二次世界大戦で最初の危機が訪れます。軍需品に金属が必要となり、約9300台もの織機が強制的に取り上げられ、生産できない状況に陥ったのです。

しかし、戦後は黄金時代を迎えます。「ガチャっと、ひと織りすれば1万円儲かる」と言われる好景気で「ガチャマン時代」と呼ばれました。織物業で働く女性の争奪戦が起きるほどだったといいます。全国から商人が集まり街も賑わいました。

この時に生まれたのが郷土料理「吉田のうどん」。硬くてコシが強いのが特徴ですが、機織りをする女性に代わって、男性が腹持ちのいいうどんを作るために、力いっぱいこねたことが誕生の理由とされています。

富士吉田の機織りに訪れた2度目の危機

「ハタオリの街」に2度目の大きな危機が訪れたのは、昭和の後半でした。安価で大量生産できる外国産の織物が市場に入ってきたのです。品質維持にコストと手間がかかるのは避けられず、廃業する機屋が相次ぎました。

追い打ちをかけたのが「織機共同廃棄事業」。対米輸出における貿易摩擦問題を受け、生産調整を目的に廃業した機屋の織機が壊されました。山梨県内にあった4割の織機がハンマーで破壊され、町から機を織る音が消えていきました。

それでも、伝統の灯は消えませんでした。機屋を継いだ2代目、3代目の職人たちが立ち上がったのです。引き継がれてきた高度な技術を生かしながら、デザイン性の高いオリジナルブランドで市場に参入。2度の危機を乗り越えた「ハタオリの地」は歴史を紡いでいきます。

富士吉田の機織りに訪れた2度目の危機

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山梨の地形や地質、歴史、文化、産業など多彩な特徴と魅力を、地図を読み解きながら紹介するマップエンターテインメント。山梨の知っているようで知られていない意外な素顔に迫ります。思わず地図を片手に、行って確かめてみたくなる情報満載!

Part.1 地図で読み解く山梨の大地

・山の都として栄えた甲府盆地はどのようにできたのか?
・富士五湖は富士山の溶岩でせき止められた2つの湖だった!?
・日本一の造形美をつくり出す昇仙峡は何でできている?
・3000年に“2度”の大噴火が生み出した青木ヶ原の樹海
・もうひとつの富士「黒富士」にある燕岩の正体
・富士山文化遺産の構成資産、山梨にある2つの「胎内めぐり」
・「池」だけど「八海」!神秘の風景・忍野八海
・日照時間日本一の秘密は地形にあり!?
・富士川の洪水を防いだ「信玄堤」と「万力林」

…などなど山梨のダイナミックな自然のポイントを解説。

Part.2 山梨を駆け抜ける鉄道網

・甲州市から山梨市にかけて、中央本線が北に大きく迂回するわけ
・高額運賃の私鉄が国有化の悲願を果たし、現在に至る身延線
・昭和モダンの香りを漂わせ、今も現役の山梨の駅舎たち
・ここは東京?ちょっと意外な丹波山村の公共交通事情
・甲府盆地を走り、「ボロ電」と呼ばれた山梨交通電車線
・実は2つの路線から成り立っている富士急行線
・約2年間だけ標高日本一の駅があった、小海線の山梨県内区間
・6つのスイッチバック駅に助けられ、甲斐路を辿った中央本線
・リニアモーターカーの実験線が山梨にできたわけ
・古くからの富士山吉田口登山道を継承する山梨県道701号

…などなど山梨ならではの鉄道事情を網羅。

Part.3 山梨で動いた歴史の瞬間

・古代 いにしえの八ヶ岳周辺は“星降る里”だった!?
・古代 甲斐銚子塚古墳が東日本最大級なワケ
・平安~中世 武田氏の先祖にあたる戦国エリート「甲斐源氏」
・中世(鎌倉) 日蓮聖人の波乱に満ちた生涯と身延山
・戦国時代 山梨の神!武田氏3代が鎮座した武田神社
・戦国時代 信玄が進み勝頼が広げた武田氏の最大領地は?
・江戸時代 徳川家康に対抗するために築城された甲府城
・江戸時代 幕府直轄地で発展した甲州街道と富士川舟運
・近現代 幕末の財界を牛耳った甲州商人が売ったもの
・近現代 明治40年の甲府の大水害からの復興
・近現代 空港のない山梨県にあった秘密の飛行場“ロタコ”

…などなど、激動の山梨の歴史に興味を惹きつける。

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