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近江大津宮は5年5か月と短命であった

中大兄皇子はなぜ大津の地を選んだのでしょうか。この理由には諸説ありますが、当時の朝鮮半島情勢を鑑みて、という説が有力です。

7世紀前半の朝鮮半島では、高句麗と新羅、百済が並び立つ三国時代でした。日本は百済と親密な関係でしたが、唐(中国)の後ろ盾を得た新羅によって百済が滅ぼされてしまいます。「唐と新羅の連合軍が次に攻めてくるのは日本かもしれない」―中大兄皇子がそう考えたとき、西の比叡山に守られ、また東の琵琶湖に逃げやすい大津の地が魅力的に見えたのだと考えられます。

しかし、この大津京遷都はあまり評判が良くありませんでした。畿内の外側にある大津は当時の人々にとってはただの田舎だったのでした。不審な火災も相次いでいたのです。

大津に都が存在したのはたったの5年5か月でした。671年に天智天皇が崩御すると、翌672年には天智天皇の息子・大友皇子(おおとものみこ)と弟・大海人皇子(おおあまのみこ)による後継争い「壬申の乱」が勃発。争いに勝利した大海人皇子は飛鳥浄御原宮を造営し、天武天皇として即位しました。

近江大津宮の跡地が大津市錦織で発見!今後も研究が続く

短命だった近江大津宮については長らくその詳細が不明でしたが、1974年になってようやく場所が明らかになりました。大津市錦織で建物の跡が発見されたからです。

ただし、この地区は住宅密集地となっており、大規模な発掘調査ができません。そのため位置はわかったのですが全容をハッキリさせることは困難になっています。とくに、どの程度の規模でどのような構造であったかについては、当時の琵琶湖の水位や湖岸線の位置と合わせ、今後も研究が続いていくことでしょう。

『大津宮をめぐる諸問題』大津宮所在地諸説図を元に作成

滋賀県にあった滞在型の宮「紫香楽宮」

奈良・平城京が造営されたのが710年。その30年後、聖武天皇は現在の京都府木津川市に恭仁京(くにきょう)を造営し始めていましたが、一時的に滞在するために742年、現在の甲賀市に紫香楽宮の造営を命じます。紫香楽宮は長らく甲賀市信楽町黄瀬にあったと考えられていたのですが、1983年の調査によって、2㎞北の信楽町宮町にあったことが判明。内務省までが紫香楽宮だとしていた黄瀬の遺跡は、同時期に建立されていた甲賀寺跡だったのです。

国土地理院標準地図を元に作成

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Part.1 地図で読み解く滋賀の大地

・近江はいつから始まった?近江と呼ばれるワケ
・近江盆地の地形と気候/琵琶湖はいつできた?
・「琵琶湖八景」と「近江八景」の違い/琵琶湖に浮かぶ四つの島々
・琵琶湖に流れ込む川は約450本もあった!
・京都を復活させた琵琶湖疎水
・琵琶湖以外にも湖、あります。湖だけじゃない滋賀を囲む山々
・滋賀県の温泉
・「津」がつく地名が多いのははぜ?
・「両側町」という形をとり「大津百町」と呼ばれた
・京都・三重・岐阜・福井と隣接する三県境

Part.2 滋賀を駆ける充実の交通網

・「瀬田の唐橋を制するものは天下を制す」ともいわれた軍事と交通の要
・「道の国」とも呼ばれた近江のさまざまな街道と宿場
・鉄道や国道が「草津川」の下をくぐる必要不可欠なトンネル
・琵琶湖上をかける外輪船、初めて浮かんだのは「一番丸」
・揖斐川と琵琶湖をつなぎ1トン級の船舶を通す「日本横断運河計画」とは?
・「夢のかけ橋」と呼ばれた琵琶湖大橋
・私鉄開業ブームで伸びる私鉄網
・時速130キロメートルで運行される「湖西線」
・観光と輸送の主要駅である「米原駅」と「草津駅」

Part.3 滋賀の歴史を深読み!

・遺跡から見る古代の近江のすがた
・滋賀県は首都だった。天智天皇が遷都した近江大津宮と紫香楽宮
・日本の仏教史において重要な「近江」、天台宗は比叡山で開かれ都道府県別寺院1位!
・自治組織としての「惣」と「近江商人」、伊藤忠兵衛の活躍
・種子島から国友に伝えたとされる火縄銃
・戦国の二大決戦「姉川の戦い」「賤ヶ岳の戦い」
・滋賀県の城と武将たち
・歩兵連隊が所在し「軍都」と呼ばれた近江の戦争遺産

Part.4 滋賀で育まれた産業や文化

・近江にもたらされ、広まった土器の技術
・彦根藩の特産となった「浜縮緬」と生産量世界1位の「レーヨン」
・大企業が進出、工業団地がたくさんあります
・近江神社いろいろ、「祭り」もいろいろ
・1万年前から続く「湖の幸」と外来種の襲来
・外国人が造ったレンガ造りの田川カルバート
・天候と土地の広さから競馬と密な関係にある滋賀県
・青土のダム穴
・「鳥人間コンテスト」はなぜ始まったのか?
・スポーツが盛んな滋賀県
・大型ショッピングモールが完成、敷地のほとんどが駐車場

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