1901年、当時の鶴原定吉（つるはらさだきち）市長は、市内交通のすべてを大阪市で運営する方針をかかげました。私鉄は利益を優先するあまりに安全性を軽視しかねず、料金も高くなりやすい可能性があります。さらに市営交通の利益を都市開発に流用すれば、大阪市の発展が早くなるというわけです。

この方針にもとづき、2年後に開通した路面電車を市の運営とし、1927年には市営バスの運行を開始。6年後に開通した地下鉄も公営となりました。さらに1940年にはバスも民間の大阪乗合自動車を買収して市バスに一本化。そのため、私鉄各線は市内への路線を延ばせませんでした。

京阪は1910年の開業当初、現在の中央区高麗橋（こうらいばし）を起点とする計画を立てていましたが、市の圧力を受け天満橋（てんまばし）駅への変更を余儀なくされています。

市営主義が見直されたのは戦後のこと。1945年に、それまでの大阪市電気局は大阪市交通局に改組され、高度経済成長期に自動車数が増加すると、交通渋滞解消のために地下鉄の延長工事を計画しました。

しかし、市電の慢性的な赤字による財政難で整備は進まず、運輸大臣（現・国土交通大臣）の直属機関だった都市交通審議会は、1958年に市内への私鉄乗り入れを求めました。

国の要請を受けた大阪市交通局は市営主義を改めて、私鉄乗り入れに前向きとなりました。1963年、京阪は淀屋橋駅に接続し悲願の中心部乗り入れを達成。2008年には中之島（なかのしま）線が開業し、天満橋から中之島駅までの運行を開始しました。

阪急は1969年に地下鉄堺筋線（さかいすじせん）への相互直通という形で市内へ乗り入れ、近鉄は2006年に地下鉄中央線のコスモスクエア駅まで相互直通を開始。南海は2031年に開業が予定されている「なにわ筋線」で梅田への進出を計画しています。

また、100年近く市内交通を担っていた大阪市交通局も、2017年に大阪市高速電気軌道として民営化され、翌年には大阪市営地下鉄が「Osaka Metro」に改称されています。

大阪府の地形や地質、歴史、文化、産業など多彩な特徴と魅力を、地図を読み解きながら紹介するマップエンターテインメント。大阪府の知っているようで知られていない意外な素顔に迫ります。思わず地図を片手に、行って確かめてみたくなる情報を満載！

【見どころ―目次より抜粋】
Part.1：地図で読み解く大阪の大地
大阪の歴史は水を起源とするとされる理由
大阪府の属する関西・近畿・畿内の違い
こんなに違った古代の大阪! 消えた河内湾と河内湖　ほか

Part.2：大阪を駆ける充実の交通網
西国へ、京都へ、熊野へ府下を通る旧街道の痕跡
どの道路が、なぜ混むのか？大阪の道路網の現状
徹底比較! 大阪の私鉄（阪急電鉄と阪神電鉄、京阪電気鉄道、近畿日本鉄道、南海電気鉄道）　ほか

Part.3：大阪の歴史を深読み!
幕府軍が落とせなかった千早赤坂城の秘密
織田信長に恭順して残された富田林寺内町
天下の台所として日本経済を支えた中之島　ほか

Part.4：大阪で生まれた産業や文化
ダイハツ、パナソニック・・企業城下町の今
万博、花博、EXPO2025など国際博覧会の最多開催地・大阪
偉人たちが好んで食したなにわの伝統野菜　ほか

<コラム>
データで分かる74市区町村 人口と所得、観光、工業・農業・漁業
絵図で見る 大阪の川と「八百八橋」
鳥瞰図で見る 100年前がわかる大阪市パノラマ地図
鳥瞰図で見る 吉田初三郎が描いた90年前の大阪府
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一見の価値あり! ヘンチクリンな建築物