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アメリカの銃規制は憲法に阻まれている

そもそもアメリカは、イギリスをはじめヨーロッパから新天地を求めてやって来た人々が、イギリスの理不尽な植民地収奪に反発し、銃を持って独立を勝ち取った国です。

「メイフラワー号」でピューリタンたちが新大陸にやって来た時も、船には多数の銃や弾薬が積み込まれていたといいます。開拓者である移民たちは入植地を守るため、そこに住む男たちは全員銃を持ち、外からの侵入者に対して備えていました。銃によってアメリカという国ができた。この思いはアメリカ人のDNAとして、現在に受け継がれているのです。

憲法で保障されている「銃を所持する権利」

アメリカの銃を持つ権利は合衆国憲法が制定された1787年の4年後、1791年に追加された修正第2条に規定されており、「規律ある民兵は、自由な国家の安全にとって必要であるから、人民が武器を所有しまた携帯する権利は侵してはならない」と条文に記されています。

銃の所持はアメリカ国民に保障された当然の権利なのです。しかし銃を所持するのは、「規律ある民兵」とは限りません。そこにアメリカの銃社会の危うさがあるのです。

アメリカの銃規制問題で、無視できないNRA

銃規制が進まない背景として、NRA(全米ライフル協会)の存在も見逃せません。NRAとは銃を持つ権利を擁護する運動を行っている団体で、設立は南北戦争直後の1871年にさかのぼります。NRAには「人を殺すのは人であって銃ではない」という考えがあります。

アメリカで銃による殺人が起きると、メディアにコメントを求められたNRAの幹部が必ず口にする言葉です。550万人超ともいわれる会員数は、選挙の票にも直接結びついています。特に中西部や南部など伝統的に共和党の地盤とされる州では、NRAの会員になっていたり、献金を受けたりしている議員も多いのです。彼らは、本格的な銃規制には否定的な立場を取っています。

アメリカの銃規制に立ちはだかる、憲法改正という壁

アメリカの銃規制には、賛否両論が行き交っています。
2017年10月、59名が死亡する銃乱射事件がラスベガスで起きた際は、多くの国民が銃規制に賛成の意見を示したといいます。2019年9月にはサンフランシスコ市が、NRAを国内テロ組織に認定したというニュースも伝わりました。

一方で連邦最高裁判所が、ワシントンDCとシカゴの銃規制を合衆国憲法修正第2条違反として退ける判断をそれぞれ2008年、2010年に示しました。悲惨な銃乱射事件があっても「銃を所持できる国民の権利を守れ」と気勢をあげる国民は少なくありません。

アメリカの銃規制を強く進めるには、銃を持つ権利を保障する合衆国憲法修正第2条そのものを変える必要があります。しかし連邦議会上下両院での3分の2の賛成による修正手続きの後、アメリカ50州のうちの4分の3の州議会が承認しなければならないという壁が立ちはだかっているのです。

地図で見る、アメリカの銃規制問題

州別に見た銃による死亡事件のリスク(2008~2017年)

【出典】Center for American Progress
※拡大できます

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“合衆国”というように50州からなるアメリカは、それぞれが独自の州憲法、政府組織を持ち、強い個性を放つ、いわばモザイク国家。それだけにアメリカの素顔は日本人にはなかなかわかりにくいもの。アメリカを知るには俯瞰的に眺めるのではなくそれぞれの州について知らないと、国の姿が見えてこないのです。本書では、それぞれの歴史や特徴を豊富なイラストとともに紹介。
さらには、日本でも毎回大きく報じられる4年ごとの大統領選挙について、各州のページで選挙人の数と民主党と共和党どちらが優勢であるか(2020年7月時点)を説明し、巻末には、大統領選挙のしくみ解説や歴代大統領のデータなども掲載。大統領選への理解も深まります。

【見どころ―目次より抜粋】

1章 北東部
■各州紹介
■<歴史解説>自由と仕事を求めた移民たちが、多民族国家アメリカを形成していった。
■<歴史解説>アメリカの根底にあるゴーウエスト思考、東海岸から始まった領土拡大の歴史。
■<コラム>4大プロスポーツのチームがない州

2章 南部
■各州紹介
■<歴史解説>南北戦争とリコンストラクション 敗北した南部州は深い傷を負った
■<歴史解説>人種差別を跳ね返した公民権運動 キング牧師の夢が叶う日はいつ
■<コラム>地下鉄道

3章 中西部
■各州紹介
■<歴史解説>アメリカ2大政党、民主党と共和党はいかにして今日の姿になったのか
■<コラム>アメリカの地勢

4章 西部
■各州紹介
■<歴史解説>銃による犯罪、学校や公共施設での銃乱射事件が止まらない。それでも銃規制が進まない理由。
■Black Lives Matter(ブラック・ライブズ・マター)

巻末資料
■<大統領選挙しくみ解説>民意がストレートに反映される国政、一年かけて国民が自らのリーダーを選ぶ
■歴代大統領
■人口ランキング
■面積ランキング
■銃規制(拳銃の公然携行の可否)/同性婚
■死刑の存続と廃止/消費税率(セールス・タックス)

【監修者】デイビッド・セイン

アメリカ生まれ。証券会社勤務を経て来日。30年以上にわたり翻訳や英語指導に従事、自身が代表を務めるAtoZ 英語学校で教鞭をとるかたわら、英語学習執筆、教材プロデュース、Webコンテンツ制作、動画制作と幅広く英語教育事業に関わる。NHKレギュラー出演ほか、日経・朝日・毎日新聞などにも連載。主な著作に『1日15分18日で英語の達人に 魔法の英語脳トレ』(InteLingo)などがあり、現在まで累計400万部を超える著書を刊行。

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