嶺岡構造体には、通常の堆積層（嶺岡層群、保田層群、三浦層群など）のほかに、蛇紋岩（じゃもんがん）類、斑れい岩類、玄武岩類などのオフィオライト（海洋地殻～上部マントルの岩体）が存在しますが、それらの多くが大小の断層で分断され関係が明瞭ではありません。そのため、嶺岡構造体の起源や地層区分について、研究者の一致した見解は示されていない現実があります。

こうした難解な地質構造には、房総半島が、東からの太平洋プレートと南からのフィリピン海プレートという２枚の海洋プレートが沈み込む最前線に位置していることが深くかかわっています。

嶺岡構造体の東端にあたる鴨川には、約1500万年前の玄武岩や斑れい岩、蛇紋岩、閃緑岩（せんりょくがん）などの火成岩が分布しています。このうち蛇紋岩は、太平洋プレートが沈み込む際、カンラン岩や玄武岩などが、地殻下部で海水と混ざり合うことで変成、変質したもの。これが、陸側に形成された海底火山（海山）の活動とともに上昇し、プレート運動によって陸（房総半島）へと付加されたのです。

なお、蛇紋岩は、水の作用で滑りやすい粘土に変質しやすく、そのため蛇紋岩が分布する地域は、地滑の多発地帯になっています。たとえば、嶺岡構造体にある「大山千枚田（おおやませんまいだ）」（鴨川市）は、そうした地形を利用しています。

問題の溶岩は玄武岩質で、太海（ふとみ）海岸の北に位置する「千葉県立鴨川青年の家」付近や鴨川松島のひとつ「弁天島」で、枕状（まくらじょう）溶岩として観察できます。

枕状溶岩とは、海底で噴出した玄武岩が海水で急冷されたため、流動せずに丸や楕円状の塊（枕状）として積み重なったもの。表面に、カメの甲羅のような亀裂が入っているのも特徴です。

鴨川漁港近くに、緑泥石片岩の露頭があります。これは、海洋底地殻の玄武岩が海溝で沈み込み、地下で圧力と熱により緑泥石という鉱物ができた、広域変成岩を代表する変成岩のひとつ。三波川変成帯と呼ばれる西南日本外帯を構成する日本最大の変成帯で、地上に露出して観察できる場所としては東端に位置します。

フォッサマグナ（本州中央部を走る地溝帯）より東側では、関東山地の北縁に沿って連続的に分布。長瀞（埼玉県）のほか、千葉県多古町でも見つかっています。この三波川帯は、房総半島の南まで続いています。

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●収録エリア：千葉県全域