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福島の製鉄遺跡から知る製鉄法の変遷

製鉄炉は「長方形箱形炉」と呼ばれる形状で、ちょうどバスタブのような形をしていました。それが8世紀中頃になると、竪形炉という斜面を利用した円筒形の炉が関東地方から移入されました。

また、8世紀末頃になると、長方形箱形炉に踏みふいご(送風設備)が付設されます。木炭の燃焼温度では鉄を溶融することはできないので、炉の内部を高温に保つには空気を送り込み続ける必要があったからです。

福島の製鉄遺跡からは膨大な量の鉄滓も出土

なお、製鉄の過程で砂鉄中に含まれる不純物が溶融して排出されますが、この鉄滓(てっさい)を捨てた廃滓場(はいさいば)も遺跡群からは見つかっています。横大道製鉄遺跡からは、なんと76トンもの鉄滓が出土しています。

製鉄遺跡からわかる製鉄に用いられた原料

古代の製鉄は、砂鉄を原料とし、木炭を燃料として行われました。まずは木炭を窯で焼成するので、これらの製鉄遺跡では木炭窯や窯に用いた粘土の採掘坑なども確認されています。木炭に用いたのはクヌギやコナラの木であることがわかっています。また、工房や住居跡も発見されており、かなり組織的で大規模な製鉄が行われていた様子をうかがい知ることができます。

製鉄遺跡からみる福島での製鉄の始まりと蝦夷の関係

福島県で製鉄が始まったのは7世紀中頃とされています。近江国(滋賀県)で開発された製鉄窯の技術が東国へと伝播し、比較的早期に福島県域まで伝わりました。ちょうどこの時期は、律令国家が蝦夷(えみし)攻略を進めていた時期と符合します。

蝦夷とは中央政権に服属しない人々の総称で、律令国家が支配領域を拡大するにともなって蝦夷との軋轢は増えていました。蝦夷を征服するには、鉄製の武器が必須でした。

また、蝦夷とは争うだけでなく、彼らの特産品(クマや海獣類の皮、ワシやタカの羽、昆布など)を得るために鉄製の武器や生活用品(農具や鍋など)と交換しました。抗争するにせよ交易するにせよ、鉄の重要性は極めて高かったのです。

律令国家の東北経営において重要な役割を担うために、浜通りに大規模な製鉄施設がつくられたのです。そして同地域の遺跡群は、安定的に鉄を供給し続け、日本有数の製鉄場所となっていきました。

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Part.1:地図で読み解く福島の大地

・阿武隈山地や奥羽山脈が境目!浜通り・中通り・会津の3地域
・いわきで発掘された首長竜化石フタバスズキリュウとは?
・福島市がぽっかり入る福島盆地はどうやってできた?
・福島発展の礎を築いた常磐炭田
・磐梯山の大噴火と裏磐梯・五色沼湖群の形成
・猪苗代湖畔からウニ化石!?劇的な会津の地形の成り立ち
・石川町が日本三大産地のひとつ ペグマタイトとはどんな岩石?
・大改修から100年が経過 暴れ川・阿武隈川の今と昔

などなど福島のダイナミックな自然のポイントを解説。

Part.2:福島を駆け抜ける鉄道網

・東北本線旧線の黒磯~白河間には明治時代の面影が残されている!?
・日本最大のC62形SL牽引「ゆうづる」が走った常磐線
・かつては東京と新潟を結ぶ架け橋、会津地方の大幹線・磐越西線
・東京・浅草から特急が直通しトロッコ列車も走る会津鉄道
・かつて硫黄輸送で活躍した猪苗代町の沼尻鉄道とは?
・只見川に架かる数々の鉄橋ほか 魅力いっぱい絶景鉄道・只見線

などなど福島ならではの鉄道事情を網羅。

Part.3:福島で動いた歴史の瞬間

・人間の歯や骨をペンダントに!?原始福島の不思議な弔い
・東北地方最古の前方後円墳!会津大塚山古墳が示す会津の力
・浜通りに古代製鉄遺跡を発見! なぜ大規模な製鉄が行われた?
・中世史総論(関東武士が進出し国盗り合戦!白河・伊達・蘆名・岩城氏の攻防)
・南北朝時代に南朝が拠点とした幻の寺院城郭・霊山寺とは?
・伊達氏のルーツは福島にあり!奥州制覇を果たす道のり
・相馬地方を約700年統治した古豪・相馬氏とはどんな一族?
・奥州きっての城下町・若松はどのようにして生まれた?
・会津若松城で籠城戦を続けた会津藩が開城に至るまで

などなど、激動の福島の歴史に興味を惹きつける。

Part.4:福島で育まれた産業や文化

・最澄と大論戦した僧・徳一が開祖!慧日寺から始まった会津の仏教文化
・猪苗代湖の水を郡山へ! 幹線延長52㎞の安積疏水事業
・県境には二ツ小屋隧道が残る 福島と米沢を結んだ万世大路
・東北唯一の中央競馬場が福島市につくられたわけ
・幕府直営の半田銀山 明治時代は五代友厚が経営
・感染症と闘い続けた細菌学者・野口英世の生涯
・日本酒の金賞受賞数日本一!福島の地酒はなぜすごい?

などなど福島の発展の歩みをたどる。

ほか、巻頭「空撮グラビア」、テーマ別地図、コラム「データでわかる全59市町村」(人口、所得、農業・漁業)、吉田初三郎が描いた福島県の鳥瞰図 など

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