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加古川の水運は豊臣秀吉の時代から本格化

加古川を利用した交通網が本格的に整備されたのは16世紀末からです。豊臣秀吉が天下統一を果たして大坂に拠点を置くと、丹波や播磨の内陸から大坂への年貢米の輸送量が増え、山中の陸路を使うより水運のほうが輸送しやすいと判断されました。

1594年、秀吉の家臣である生駒玄蕃(いこまげんば)の命によって、加古川中流域の闘竜灘(とうりゅうなだ)(現在の加東市)より南で川底の岩石を取りのぞく作業が進められます。

闘竜灘は巨岩が大量に露出した難所なので、船から一度荷を降ろして滝野(たきの)まで運んでから、ふたたび船に載せなければなりませんでした。江戸時代に入ると、姫路藩主の池田輝政(てるまさ)が、闘竜灘より北でも川底の岩石を取りのぞいたり、下流の高砂で運河や船着場を整備を行いました。

加古川の水運で使用された高瀬舟と船主たち

加古川の水運に使用されたのは、平底で箱形の高瀬舟(たかせぶね)です。大きなものでは全長約11m、幅約2.4m、1艘(そう)の水夫は3人、最大で30石(約4.5t)の米を積載できました。江戸時代の後期には、加古川流域には37カ所の船着場があり、300艘の高瀬舟が運用されていたといわれています。米以外にも、シイタケやこんにゃく玉、菜種(なたね)など内陸で生産された農産物が輸送されました。

加古川の源流はけわしい山地の中にあります。
国土地理院標準地図を元に作成

中流部にも大きな岩石が多い。西脇市には東経135度と北緯35度が交差する「日本のへそ」があります。
国土地理院標準地図を元に作成

下流には流量を調節する可動堰(法律上の分類はダム)の加古川大堰があります。
国土地理院標準地図を元に作成

加古川水運は明治も活性化するも鉄道の開通で衰退

江戸時代の加古川の船主たちは、藩が定めた監督役の船座(せんざ)に収益の一部を上納しなければならず、船主の新規参入は制限され、運賃を自分で定めることもできませんでした。

明治維新後、船座が廃止されたため新規の船主が増加し、さらに闘竜灘の開削工事が進められたため、加古川の水運は活発化します。

しかし、1899年には阪鶴(はんかく)鉄道(のちのJR福知山線)が開通するなど、陸路の輸送網がしだいに発達し、大正期に入ると河川を利用した水運は衰退に向かいました。

遅れて発達した猪名川水運

江戸時代の前期、加古川より東の猪名川では、役人との結びつきが強い宿場町の馬借(ばしゃく)の意向により、川船の運航が制限されていました。しかし、伏見の水運業者の要請で1784年に制限が廃止されます。伊丹で酒造が活発化し、酒の輸送が増えたためです。

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