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足尾銅山の誕生

慶長15(1610)年、足尾の山中で銅が発見され、江戸時代には多量の銅鉱石が掘られていました。採掘された銅で寛永通宝が大量につくられたり、日光東照宮や江戸城の屋根などにも使われたり、オランダや中国に輸出されたりし、とくに1670~1685年頃は、毎年1000t以上の銅が生産され、幕府の財政を支えていました。

ところが採掘が進むうち、山からはほとんど銅が採れなくなってしまいました。そんななか、明治10(1877)年、古河財閥の創業者・古河市兵衛(ふるかわいちべえ)が、この廃山同然の足尾銅山を買い取り、最新の技術を駆使して採掘を始めました。すると、明治20(1887)年には国内の産出量の約40%を占めるほどになり、日本一の銅山となりました。

足尾銅山の発展とともに輸送手段も馬車から鉄道へ

このように発展を遂げた足尾銅山ですが、明治時代の初めまでは、銅などの運搬には馬や牛が使われていました。しかし、生産量が増加すると馬や牛だけでは追いつかなくなり、馬車鉄道による運搬が始まります。

その後、さらにたくさんの荷物を運べるようにと、桐生と足尾を結ぶ鉄道を建設することになりました。そして大正元(1912)年には、桐生から延伸してきた足尾鉄道が、足尾駅まで開通

その後、足尾鉄道は国の重要路線であることから、大正7(1918)年、国が買い上げて鉄道院(後の国鉄)の足尾線となりました。国鉄として営業してきた足尾線は、戦後には車両も近代化し、蒸気機関車だった列車は、ディーゼルカーやディーゼル機関車に変わりました。

わたらせ渓谷鐵道は足尾銅山の衰退によって生まれた

発展の一方で、周辺では 山の煙害により木々が枯れ、洪水の被害も多発していました。さらに鉱毒が大量に流出し、作物や川の魚にも大きな被害が及びました。

さらに、水源にも枯渇の兆しが見え始めると、昭和48(1973)年に足尾銅山は閉山。途端に足尾線は輸送量が大きく減少して赤字線の問題まで起こり、路線廃止という危機的状況に追い込まれました。

しかし、沿線市民の間で足尾線を残そうという活動が起こったため、1989年までJR東日本足尾線として残り、廃線の危機を逃れることができました。

その後は、第三セクターである「わたらせ渓谷鐵道株式会社」が路線を引き継ぐことに。会社では「観光開発を振し観光客を呼び込む」という方法を掲げ、観光客輸送に力を注ぐようになったのです。そして、1994年には、年間の利用者がついに100万人を超えるほどの人気路線としてよみがえったのです。

わたらせ渓谷鐵道は多様な観光列車を運行

さらに、1998年からは、観光列車「トロッコわたらせ渓谷号」の運行もスタート。窓ガラスのないトロッコ列車は、風を感じながら渓谷の絶景が望め、四季折々の景色や木々の香りを肌で感じることができるのが魅力です。

また一部の車両では、列車がトンネルに入ると車内でイルミネーションが点灯するという演出も行なわれています。

わたらせ渓谷鐵道の各駅にも見どころ満載

列車もさることながら、各駅にも見どころがたくさんあります。

なかでも注目したいのが、水沼駅のホームに隣接する温泉施設です。「温泉のある駅」として話題の「水沼駅温泉センターでは、渡良瀬川の「釜が淵の河童伝説」にちなんで「かっぱ風呂」と名付けられた温泉が利用でき、露天風呂からは周囲の景観が、食事処では自慢料理が楽しめます。

ほかにも話題なのが、神戸(ごうど)駅にある東武鉄道の元特急車両を利用した列車のレストラン「清流」。列車のシートに座りながら、天ぷらをはじめとする料理や弁当を堪能できます。

このほかにも駅や沿線には、さまざまな見どころがめじろ押しです。江戸時代に発見された銅山に思いを馳せながら、鉄道の旅をのんびり満喫したいものです。

わたらせ渓谷鐵道

住所
群馬県みどり市桐生市末広町(桐生駅)~栃木県日光市足尾町下間藤(間藤駅)
交通
JR両毛線桐生駅~間藤駅
料金
乗車券(桐生駅~間藤駅、片道)=大人1130円、小人570円/一日フリーきっぷ=大人1880円、小人940円/(トロッコ列車は乗車券・整理券別、障がい者手帳、療育手帳、精神障がい者保健福祉手帳持参で本人と同伴者1名半額)

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