下記傾斜量図を見ると、濃い黒色になっている豪渓が際立っているのが分かります。槇谷川に沿った部分だけが、特に急な斜面を持つ地形となっています。豪渓では、山肌の花崗岩の節理に、長年の風化によってきれいに水平と垂直の線が入ったことで、煉瓦（れんが）を重ねたような独特の景観が生まれているのです。このような直方体方向の割れ目の節理は“方状節理（ほうじょうせつり）”と呼ばれ、深成岩（特に花崗岩）の露頭にしばしば見られます。花崗岩は節理に沿って風化や侵食されることで、中心部の硬いコアストーンとその周りを包む土・砂状のまさ土（つち）になりますが、まさ土は非常に軟らかく崩れやすい特徴を持っています。そのため、中心のコアストーンが外れて落石となる可能性があります。豪渓には落石のおそれがある区間もあり、岡山県によって景観を損なわないように配慮された落石防止対策がなされています。

色が濃いところは斜面が急で、薄いところは緩やかであることを示しています。
国土地理院傾斜量図を元に作成。

豪渓は県道沿いにあり、駐車場から上流にある見返橋（みかえりばし）までは約800m。風化侵食された奇岩絶壁などが川沿いに点在しています。県道は道幅が狭いため、通行には注意が必要です。花崗岩の年代の古さと変化に富んだ形態により、1923（大正12）年に国の名勝に指定されています。現在は付近に駐車場や東屋も完備され、壮大な自然美を満喫できるスポットとなっています。

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