この「後巻（うしろまき）」という戦法の成功率は低いとされていましたが、周辺領民から成政軍の状況を聞き出し、夜の闇にまぎれて防備手薄な海沿いを進み、夜明けとともに不意をつくという前田利家の策は巧妙この上ないものでした。しかも、わずか2500騎でやってのけたのです。

そのため、この末森の合戦は、陸軍士官学校などの講義で、少数勢による奇襲の稀有な成功例としてたびたび引き合いに出されました。

前述した『末森記』は、この合戦で前田利家の護衛や伝令を勤めた岡本慶雲（おかもときょううん）によって書かれたものです。そこには、敵の鉄砲隊から猛攻を受けるなかで、味方を叱咤する前田利家の姿が描かれています。

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