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隠岐の黒曜石はブランド品

近年は化学分析により産地推定が可能となり、隠岐の黒曜石流通のルートや範囲が徐々に明らかになってきています。流通範囲は、主に中国地方一帯から、香川県、京都府にまでおよびます。なお、島根県の岩塚Ⅱ遺跡では隠岐の黒曜石だけでなく九州の姫島・腰岳の黒曜石も確認されており、九州と交流があったこともわかっています。また、隠岐の黒曜石の流通は国内に留まりません。朝鮮半島やウラジオストクでも隠岐の黒曜石が確認されており、海外からも求められる一種のブランドであったことがうかがえます。

隠岐の黒曜石はその役割を終える

やがて、石器の時代から銅や鉄の時代に移り変わるにつれ、石器製作の材料であった黒曜石は役割を終えます。日本海に面した島根では、古代から水路を活用して黒曜石や勾玉(まがたま)などが運ばれますが、今度は鉄が運ばれるようになります。島根で製鉄が行なわれるようになったのは古墳時代とされています。これは、『出雲国風土記』が「(諸もろもろ)の郷より出づる鉄(まかね)は、堅くして尤(もと)も雑(くさぐさ)の具(うつは)を造るに堪ふ」として奥出雲を挙げていることからもわかります。

出雲には玉鋼を作るのに必要な要素が集まっていた

出雲は砂鉄、製鉄に必要となる炭になる森林資源や砂鉄が豊富な土地でした。良質な砂鉄が採れる斐伊川はヤマタノオロチ伝説で知られる川でもあり、製鉄のための伐採によって引き起こされた下流の洪水などの災害が、ヤマタノオロチに結び付けられたといいます。

木炭を燃料として砂鉄を製錬する「たたら製鉄」は、日本古来の伝統的な製鉄方法で、これによってつくられた鉄の中でも最高品質の「玉鋼」は日本刀に用いられています。

玉鋼などの製鉄事業の繁栄と衰退

たたら製鉄は時代とともに進化し、江戸時代に半永久的な操業を可能にする「高殿たたら」が生まれると、たたら製鉄法はここに完成をみます。松江藩によって保護された島根のたたら製鉄は近世から明治にかけて最盛期を築き、全国のおよそ8割の鉄が島根を中心とする中国山地で生産されました。しかし、以後は洋鉄の勢いに押されて衰退しましてしまいます。

玉鋼の製造は今も続く

現在は日本美術刀剣保存協会が復元した奥出雲町の「日刀保(にっとうほ)たたら」が、国内で唯一たたら製法によって玉鋼を製造しています。

「黄長石霞石玄武岩」とは?世界的にも珍しい鉱石が日本で唯一見られるのは浜田市だけ!

島根県浜田市の長浜町、熱田町、内田町の標高120m 前後の丘陵地帯に黄長石霞石玄武岩(おうちょうせきかすみいしげんぶがん)というアルカリ玄武岩があり、この3か所の露頭が島根県の天然記念物に指定されています。

火成岩である玄武岩自体はそう珍しいものではなく、地球の表面を構成するもののうち、最も広く分布しているものです。黄長石霞石玄武岩が特別なのは、長々しいその名が示すとおり、玄武岩に黄長石(メリライト)と霞石(ネフェリン)というふたつの鉱物を含んでいるからです。これは世界的にも希少で、日本では唯一浜田市の丘陵地一帯でのみ産出します。

希少だが見分けにくい

これらの玄武岩は、今からおよそ600万年前の新生代第三紀に噴出しました。黄長石は黄色、霞石は白色、灰色で、それぞれ脂光沢、ガラス光沢のある結晶が含まれますが、どちらも微細であるため、肉眼ではほかの玄武岩と見分けることが難しいといわれます。

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地形、交通、歴史、産業…あらゆる角度から島根県を分析!

島根県の地形や地質、歴史、文化、産業など多彩な特徴と魅力を、地図を読み解きながら紹介するマップエンターテインメント。島根の知っているようで知られていない意外な素顔に迫ります。地図を片手に、思わず行って確かめてみたくなる情報を満載!

Part.1 地図で読み解く島根の大地

・「弁当忘れても傘忘れるな」な島根の天気
・山陰地方と呼ばれるのは島根県と鳥取だけ?
・水質の良い一級河川「高津川」と大井谷の棚田
・隠岐諸島の「レッドクリフ」をはじめとする島々
・三県境と全国5番目に広い湖「中海」と7番目の「宍道湖」
・全盛期は東アジア最大、世界で2位の産銀量「石見銀山」は港まで続いていた?
・東京ドームほどの海浜公園「石見畳ヶ浦」

ほか

Part.2 島根を駆ける充実の交通網

・「銀の道」さらに「うなぎ街道」「鯖街道」とは?
・朝廷への情報伝達に使われた「官道」とは?
・土木学会が指定した土木遺産「福浦トンネル」
・一畑電鉄と一畑駅、大社線と大社駅
・Mランドドライビングスクールとは?
・JR木次線の「三段式スイッチバック」とは?
・島根の旧三江線トロッコ、初めて県境越え広島へ
・奥出雲おろちループ
・古代山陰道
・「ベタ踏み坂」江島大橋
・未成線広浜鉄道
・神にまつわる名前のついた10の駅
・最後の寝台列車サンライズ出雲

ほか

Part.3 島根の歴史を深読み!

・『日本書紀』『古事記』から神々を知ろう
・古墳も多い島根県
・『出雲国風土記』の世界「黄泉の穴」
・出雲大社を筆頭とする様々な「神社」
・「出雲」「石見」「隠岐」から「島根に」
・山陰のモンサンミッシェル?こと宮ケ島 衣毘須神社
・出雲の方言 東北の訛りとの共通点
・なぜ津和野町に「森鴎外記念館」が?「小京都」と呼ばれるわけ
・歴史的大打撃「廃仏毀釈」で失われたモノ
・島流しといえば「隠岐」?
・江戸時代の島根県、松江藩による出雲平野の開拓

ほか

Part.4 島根で育まれた産業や文化

・「相撲」発祥の地と言われる出雲
・名湯の多い島根県
・継承される多くの神楽と安来節
・歌舞伎の原型になったとされる「阿国歌舞伎」
・「玉鋼」と「たたら製鉄」と黒曜石
・日本で唯一「黄長石霞石玄武岩」を産出
・小泉八雲の作品と小泉邸

ほか

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