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大河津分水路は200年もの年月を要して完成

しかし、その開発事業が順風満帆に進んだわけではありません。1730(享保15)年に始まった松ヶ崎掘削では、阿賀野川の分離工事が行われたものの、洪水により分水路が本流となるなどその後も洪水は絶えず人々を苦しめました。そして、現存する大河津分水路(おおこうづぶんすいろ)が完成するまで、じつに200年もの年月を要しています

新潟にとっての生命線といわれる大河津分水路は、多くの支流が合流し、大河となって日本海へ注ぎ込む信濃川を、現在の燕市大河津から長岡市寺泊(てらどまり)海岸へと分水、放水するためにつくられた水路です。川の氾濫による被害は、土地をだめにする水害だけではありません。水はけの悪い土地に溜まった水はやがて腐り、コレラやチフスなど恐ろしい伝染病の温床にもなっていました。大河津分水路が完成する以前、この地の人々は洪水、土砂災害、そして疫病といったさまざまな災害に苦しんでいたのでした。

大河津分水路の完成で新潟は近代都市へ変貌

そして、1869(明治2)年、ついに大河津分水路の工事が始まります。ですが、資金調達に問題があり、実際に着工したのは翌1870(明治3)年。その後も掘削の結果、日本海へ流れる土砂によって新潟港が浅くなるなど問題は山積みで、工事は中止を余儀なくされました。住民の陳情などにより工事が本格的に再開されたのは1909(明治42)年。この第2次工事では大型機械も導入され、多くの地元住民たちが作業に従事したといいます。そして、1922(大正11)年、人々の悲願だった大河津分水路が通水したのです。

全長約10kmの大河津分水路は、越後平野の様相を大きく変えます。信濃川の氾濫は激減し、農地は安定して収穫を迎えることができるようになりました。そのため、収穫量は水路完成以前の3倍にも増え、日本一の大穀倉地帯になったのです。さらに水害が減ったことで交通網や住宅用の土地の整備も進み、人々の暮らしは激変。新潟は北陸を代表する近代都市へと変貌しました。

近年になっても気候変化によって豪雨などが急増しているため改修工事は、令和となった現在も継続中

大河津分水路はその後も改修が続き、洗堰(あらいぜき)・可動堰の改築のほか、現在でも洪水処理能力不足や河床洗掘等の対策として改修が行われています。近年、気候変化が続き豪雨などが急増していることから、新潟市、燕市方面などへの氾濫も予想され、平成の時代からそうした改修が急務とされています。2015(平成27)年に始まった大規模改修工事は、令和となった現在も継続中です。そして2022(令和4)年、大河津分水路は通水100周年を迎え、記念事業も予定されています。

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Part.1 地図で読み解く新潟の大地

・新潟の地質・地形概論(「米納津隕石、櫛池隕石」)
・約3000万年前に誕生した佐渡島 火山や地殻変動の痕跡がいっぱい!
・かつて圧倒的な産出量を誇った佐渡島の金銀山が生まれた秘密
・プレートの沈み込みが生む奇跡!糸魚川地域でヒスイが採れるわけ
・ヒスイ峡に3億年前のサンゴ礁!? 石灰岩でできている明星山の秘密
・日本列島を分断する見えない溝 フォッサマグナとはいったい何か?
・最長70㎞で10列をなす新潟砂丘は信濃川と阿賀野川がつくった!?
・約40年前から形成され始めた中津川に広がる河岸段丘の絶景
・約1000万年前の海底火山が生んだ新潟市・間瀬海岸の奇岩や沸石
・上信越高原国立公園・清津峡 圧巻の渓谷と柱状節理ができるまで
・産出量は文句なしの全国1位! 新潟県に油ガス田が多いわけ
・約300万年で2000mも隆起! 八海山が秘める地殻変動のすごさ

Part.2 新潟を駆ける充実の交通網

・東京と新潟をいかにして結ぶか?直江津線として生まれた信越本線

ほか、上越新幹線・北陸新幹線、上越線、飯山線、越後線、北越急行ほくほく線、えちごトキめき鉄道、新潟交通電車線、蒲原鉄道線などを紐解く。

Part.3 新潟の歴史を深読み!

・古代史総論/縄文時代 火焔型土器
・弥生時代 玉作と稲作
・越国が成立しやがて三国に分かれる
・中世史総論 城氏の興亡
・波月条絵図はなぜつくられた?
・上杉氏と長尾氏の複雑な関係(謙信による越後統一まで)
・御館の乱を経て景勝が越佐統一
・近世史総論……越後平野の開発
・鉱山都市相川の発展
・近世の交通
・近現代史総論
・北越戊辰戦争
・戦時下の新潟

Part.4 新潟で育まれた産業や文化

・大河津分水
・燕三条の金物
・西山・東山・新津の三大油田ほか新潟に発展した石油関連事業
・コシヒカリ
・越後杜氏と日本酒/越後縮
・冬の新潟が豪雪地帯となるわけと雪がもたらした観光業

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