フリーワード検索

ジャンルから探す

トップ > カルチャー >  北海道・東北 > 山形県 >

ヤマガタダイカイギュウは世界的権威の教授により「新種」と断定

その後、学校の先生を経由して山形県立博物館に情報が伝えられ、緊急の発掘作業が実施さましたた。掘削した8月30日は、雷雨と、水位上昇にともなうダムの放水情報などにより、たびたび作業の中断を余儀なくされます。しかし、地元住民や関係者の協力もあり、発掘は1日で完了できました。こうして発掘された化石は、当初、クジラの化石だと考えられていました。そして、2カ月間の自然乾燥の後、化石を取り出すクリーニング作業が行われました。
すると、すり減った黒いエナメル質の歯が顔を出し、そのあたりから、何か草食動物(カイギュウ類など)の骨格化石ではないかと考えられるようになりました。その後、この化石の正体についての調査が行われ、山形大学の教授からアメリカの古生物学者を経由して、カイギュウ化石の世界的権威であるハワード大学のドムニング教授の手にも資料が渡ります。この資料を見たドムニング教授から届いた手紙には、クジラではなくダイカイギュウ、しかも新種の可能性がある貴重なもの、という旨が書かれていたのです。

ヤマガタダイカイギュウは全国的に

この大発見はメディアも大々的に取り上げ、ニュースは全国を駆け巡ります。山形県立博物館では、1979(昭和54)年5月26日から特別展「化石展」を開催。この化石は展示の目玉となり、連日多くの来場者でにぎわいました。その盛り上がりぶりから、会期を急きょ延長するほどでした。

ヤマガタダイカイギュウ(山形大海牛)と命名された新種

1982(昭和57)年8月、ドムニング教授が来日し化石を鑑定。新種であることが確実となり、ヤマガタダイカイギュウ(山形大海牛)と命名されました。これはカイギュウ類のうちジュゴン科ハイドロダマリス亜科に分類され、ジョルダンカイギュウからクエスタカイギュウへと進化する途中段階の種と位置づけられています。なお、ハイドロダマリス亜科の進化の先端にいるステラーカイギュウは、人間の乱獲によって日本の江戸時代(1768年)に絶滅しました。

ヤマガタダイカイギュウは世界でも貴重な存在

化石産出地の地層は、新第三紀中新世後期(約900万~800万年前)の本郷層橋上砂岩部層(ほんごうそうはしがみさがんぶそう)です。山形県域が日本海の浅い海だった時代に堆積したもので、ヤマガタダイカイギュウのほかにもクジラや貝、サメなどの海洋生物化石が見つかっています。ヤマガタダイカイギュウは1992(平成4)年8月28日、山形県の天然記念物に指定されました。同種の化石は見つかっておらず、世界でたったひとつの貴重な存在となっています。

山形には巨大ザメも泳いでいた!

ヤマガタダイカイギュウを産出した大江町用地区の地層のほか、県北部の真室川町や鮭川村の中新世後期の地層からは、サメの歯化石が発掘されています。その名はカルカロドン・メガロドン(ムカシオオホオジロザメ)。史上最大級のサメとして知られ、体長は15mにも達したとされています。約2500万〜400万年前にかけて海中で暮らし一時は世界中に分布するほど繁栄していましたが、ホオジロザメとの生存競争に敗れ、最終的には360万年前に絶滅したようです。この歯化石は、昔から国内各地で見つかっており、古くは「天狗の爪」などと呼ばれていました。

『山形のトリセツ』好評発売中!

地形、交通、歴史、産業…あらゆる角度から山形県を分析!

山形県の地形や地質、歴史、文化、産業など多彩な特徴と魅力を、地図を読み解きながら紹介するマップエンターテインメント。山形の知っているようで知られていない意外な素顔に迫ります。思わず地図を片手に、行って確かめてみたくなる情報を満載!

Part.1 地図で読み解く山形の大地

・出羽富士・鳥海山の成り立ちと火山がもたらす湧水や地形
・山形盆地の成り立ちと扇状地に発展した県都・山形市
・大江町の最上川川床で発見!ヤマガタダイカイギュウって何だ!?
・河川がつくった肥沃な庄内平野を35㎞におよぶ庄内砂丘が守る
・最上川・五百川峡谷の誕生と流域に形成された河岸段丘
・どうやって誕生し段丘が発達?山形唯一の有人離島「飛島」の謎
・冬の名物・美しい樹氷はどうして蔵王山に形成されるのか?

…などなど山形のダイナミックな自然のポイントを解説。

Part.2 山形を駆け抜ける鉄道網

・急勾配と豪雪を克服し新庄へ至る全国初のミニ新幹線・山形新幹線
・急峻な板谷峠で奥羽山脈越え!逞しき幹線・奥羽本線の今昔
・九州~北海道の貨物車両が走り日本海縦貫線をなす羽越本線
・日本初の交流電化路線にして今や貨物の重要路線の仙山線
・最上川の絶景峡谷を走る!新庄と余目を結ぶ陸羽西線
・三山・高畠・尾花沢の3路線 山形交通の鉄道路線網とは?

…などなど、山形ならではの交通事情を網羅。

Part.3 山形で動いた歴史の瞬間

・木の実でつくったクッキーも!? 山形県域の縄文時代
・和人が蝦夷の領域へと進出! 城柵から見る開拓の歴史
・鎌倉御家人が地頭として進出! 次第に激化する権力争い
・伊達氏との対立を経て統治者に君臨した最上氏の栄枯盛衰
・街道と航路が整備され 発展する沿道の産業と商業
・領主交代に領民が抵抗! 天保の国替え反対一揆とは?
・異名は鬼県令!? 初代県令三島通庸が推進した土木工事

…などなど、激動の山形の歴史に興味を惹きつける。

『山形のトリセツ』を購入するならこちら

リンク先での売上の一部が当サイトに還元される場合があります。
1 2

※掲載の情報は取材時点のものです。お出かけの際は事前に最新の情報をご確認ください。

まっぷるトラベルガイド編集部は、旅やおでかけが大好きな人間が集まっています。
皆様に旅やおでかけの楽しさ、その土地ならではの魅力をお伝えすることを目標に、スタッフ自らの体験や、旅のプロ・専門家への取材をもとにしたおすすめスポットや旅行プラン、旅行の予備知識など信頼できる情報を発信してまいります!

エリア

トップ > カルチャー >  北海道・東北 > 山形県 >

この記事に関連するタグ