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【井上ひさしの生い立ち】野球に熱中した少年時代

この頃の楽しみのひとつは、野球。中学では部を創設し、「NHKの実況中継を聞きながらスコアをつけていた」ほどの野球狂でした。小説『下駄の上の卵』は終戦後の山形県南部が舞台。憧れの軟式野球ボールを手に入れるため、山形から東京へ少年たちが闇米を売りながら冒険するという物語です。作品には小松町周辺の名称が登場したり、たとえば「町で一番の造り酒屋『祝瓶(しゅくへい)』」は、井上ひさしの親戚筋である「樽平(たるへい)酒造」がモデルです。

ちなみに、大学時代に浅草のストリップ劇場で働いていたことは有名ですが、それは「野球団員募集・フランス座野球部」なる広告に応募したからです(同部には、のちに東映フライヤーズに入団する土橋正幸がいました)。

少年時代、大衆演劇や映画を観ることも楽しみでした。それを上演する町内唯一の娯楽施設「小松座」には毎日のように通ったそう。

【井上ひさしの生い立ち】中学時代に観た300本の映画で作劇法が身についた?!

1984(昭和59)年、座付き作家として自ら創設した劇団名が「こまつ座」です。映画に限れば、三里(約12㎞)ほど離れた米沢市へいき中学3年の春までに600本近くを観たというから、作劇法がおのずと肌にしみ込んでいったのでしょう。それはたとえば、江戸時代の「羽前国(山形県)」を舞台とした戯曲『雨』に表れています。行方不明になった紅花問屋(紅花は山形県花)の当主に瓜ふたつの浮浪者が、本物の当主になりすまし、安定した地位と美貌の妻を手に入れようとする芝居です。井上ひさしの得意とする推理小説仕立てのどんでん返しで観客を大いに楽しませてくれます。

井上ひさしの生い立ちを記した自伝的小説

いっぽう、この時期に母子家庭で味わった苦しみや悲しみを描いた自伝的な作品が小説『あくる朝の蝉』です。「ぼくと弟」は孤児院(山形を離れ、仙台にいたとき預けられていた)から夏休みに戻った生まれ故郷で、そのまま暮らし続けたいと願います。ですが夜の寝床で、隣室にいる叔父の反対を耳にしてしまいます。蝉が鳴く翌朝、書き置きを残し、弟を揺り起こして孤児院へと帰る物語です。JR米坂線「羽前小松(うぜんこまつ)駅」の先にある三日町・八日町は、この兄弟が歩いた街並みで、「旧街道に並ぶ店屋はいずれも明治あたりに建ったもので(中略)小店でも四間はある。大店ともなれば八間を超えていた」と描かれています。町内には、井上ひさしの蔵書によってなる図書館「遅筆堂文庫」もあります。ぜひ、山形で“井上ひさし”を旅してみましょう。

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地形、交通、歴史、産業…あらゆる角度から山形県を分析!

山形県の地形や地質、歴史、文化、産業など多彩な特徴と魅力を、地図を読み解きながら紹介するマップエンターテインメント。山形の知っているようで知られていない意外な素顔に迫ります。思わず地図を片手に、行って確かめてみたくなる情報を満載!

Part.1 地図で読み解く山形の大地

・出羽富士・鳥海山の成り立ちと火山がもたらす湧水や地形
・山形盆地の成り立ちと扇状地に発展した県都・山形市
・大江町の最上川川床で発見!ヤマガタダイカイギュウって何だ!?
・河川がつくった肥沃な庄内平野を35㎞におよぶ庄内砂丘が守る
・最上川・五百川峡谷の誕生と流域に形成された河岸段丘
・どうやって誕生し段丘が発達?山形唯一の有人離島「飛島」の謎
・冬の名物・美しい樹氷はどうして蔵王山に形成されるのか?

…などなど山形のダイナミックな自然のポイントを解説。

Part.2 山形を駆け抜ける鉄道網

・急勾配と豪雪を克服し新庄へ至る全国初のミニ新幹線・山形新幹線
・急峻な板谷峠で奥羽山脈越え!逞しき幹線・奥羽本線の今昔
・九州~北海道の貨物車両が走り日本海縦貫線をなす羽越本線
・日本初の交流電化路線にして今や貨物の重要路線の仙山線
・最上川の絶景峡谷を走る!新庄と余目を結ぶ陸羽西線
・三山・高畠・尾花沢の3路線 山形交通の鉄道路線網とは?

…などなど、山形ならではの交通事情を網羅。

Part.3 山形で動いた歴史の瞬間

・木の実でつくったクッキーも!? 山形県域の縄文時代
・和人が蝦夷の領域へと進出! 城柵から見る開拓の歴史
・鎌倉御家人が地頭として進出! 次第に激化する権力争い
・伊達氏との対立を経て統治者に君臨した最上氏の栄枯盛衰
・街道と航路が整備され 発展する沿道の産業と商業
・領主交代に領民が抵抗! 天保の国替え反対一揆とは?
・異名は鬼県令!? 初代県令三島通庸が推進した土木工事

…などなど、激動の山形の歴史に興味を惹きつける。

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※掲載の情報は取材時点のものです。お出かけの際は事前に最新の情報をご確認ください。

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