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ペグマタイトとはどんな鉱石?

ペグマタイトとは大きな結晶からなる深成岩の総称で、マグマが地下深くでゆっくり冷え固まり、結晶が大きく成長してできます。ペグマタイトには、残留マグマの中でレアアース(希土類元素(きどるいげんそ))が濃縮されます。そのためリチウム、ベリリウム、ジルコニウム、ニオブ、ウランといった元素を含む稀少な鉱物が多く形成され、ペグマタイト鉱床となるのです。

ペグマタイトの質は国内随一の石川町

石川町のペグマタイト鉱床で多く産出される鉱物には、水晶や長石(ちょうせき)、緑柱石(りょくちゅうせき)、電気石(トルマリン)などがあり、結晶の大きさと種類の豊富さで国内随一です。

ペグマタイト鉱山からは希元素を含む石も産出

さらに、放射性の希元素を含む石川石、モナズ石、コルンブ石、サマルスキー石なども産出されます。そのため石川町には1960年代まで多くのペグマタイト鉱山がありました。

その代表格にして石川町最古の鉱山が和久観音山(わぐかんのんやま)鉱山で、明治40年代には採掘が始まっています。この鉱床で産出される鉱石は、おもに長石と珪石(けいせき)(石英)で、焼き物の釉薬(ゆうやく)や陶磁器の原料として陶磁器の一大生産地である中部地方に出荷されていました。

鉱山は昭和40年代に閉鎖されましたが、2016(平成28)年、町の天然記念物に指定されました。

ペグマタイトは軍事目的での採掘もされた

太平洋戦争末期には、当地で原子爆弾開発のために放射性物質を含む石川石、サマルスキー石、鉄コルンブ石などの採掘が軍部の意向で行われました。採掘には軍隊に召集された若者に代わって中学生を動員し、炎天下、手掘りでペグマタイト鉱物が採掘されました。

石川町周辺の含ウラン・トリウム鉱物の分布

石川町周辺の含ウラン・トリウム鉱物の分布
松原秀樹『福島縣石川町附近のペグマタイト調査報告(ウラン・トリウム資 源の基礎調査)』を元に作成

石川地方にはペグマタイトが帯状に分布しています。戦時中、原子爆弾開発研究(ニ号研究)のため、当地のペグマタイト鉱床では、石川石やモナズ石などのウランを少量含む鉱石が盛んに採掘されました。

ペグマタイトを軍事利用する前に終戦を迎えた

原子爆弾の開発は1945(昭和20)年4月、東京にあった理化学研究所の研究施設が空襲で全焼したため、ウランの採掘選鉱、抽出を担当していた飯盛研究室が石川町に疎開してきました。そして、ウランの鉱石から六価ウランの抽出までできていましたが、生産ラインにのせる手前で終戦となったのです。

ペグマタイト採掘は石川町の産業史に刻まれている

今では鉱山がなくなった石川町ですが、2016(平成28)年、日本地質学会は「石川町のペグマタイト鉱物」、石川町ゆかりの「片麻岩(へんまがん)」を福島県の「県の石」に選定。また、石川町の産業史そのものであるペグマタイトは、国内各地の博物館や石川町立歴史民俗資料館で展示されています。

鹿島大神宮のペグマタイト露頭

福島県郡山市西田町にある鹿島大神宮の境内には、白色の巨岩があちこちに露出しています。これは1966(昭和41)年に「鹿島神社のペグマタイト岩脈」として国指定天然記念物に指定されたペグマタイトです。鹿島大神宮社殿裏手のペグマタイト露出面は、幅14m、長さ40m、地下10mまで延びていて、体積は5600 ㎥、総量は1万4000トンに上ると推定されています。

ペグマタイト岩脈は工業用原料などとして採掘されることが多いですが、ここは神社の御神体だったため採掘を免れたのです。

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・阿武隈山地や奥羽山脈が境目!浜通り・中通り・会津の3地域
・いわきで発掘された首長竜化石フタバスズキリュウとは?
・福島市がぽっかり入る福島盆地はどうやってできた?
・福島発展の礎を築いた常磐炭田
・磐梯山の大噴火と裏磐梯・五色沼湖群の形成
・猪苗代湖畔からウニ化石!?劇的な会津の地形の成り立ち
・石川町が日本三大産地のひとつ ペグマタイトとはどんな岩石?
・大改修から100年が経過 暴れ川・阿武隈川の今と昔

などなど福島のダイナミックな自然のポイントを解説。

Part.2:福島を駆け抜ける鉄道網

・東北本線旧線の黒磯~白河間には明治時代の面影が残されている!?
・日本最大のC62形SL牽引「ゆうづる」が走った常磐線
・かつては東京と新潟を結ぶ架け橋、会津地方の大幹線・磐越西線
・東京・浅草から特急が直通しトロッコ列車も走る会津鉄道
・かつて硫黄輸送で活躍した猪苗代町の沼尻鉄道とは?
・只見川に架かる数々の鉄橋ほか 魅力いっぱい絶景鉄道・只見線

などなど福島ならではの鉄道事情を網羅。

Part.3:福島で動いた歴史の瞬間

・人間の歯や骨をペンダントに!?原始福島の不思議な弔い
・東北地方最古の前方後円墳!会津大塚山古墳が示す会津の力
・浜通りに古代製鉄遺跡を発見! なぜ大規模な製鉄が行われた?
・中世史総論(関東武士が進出し国盗り合戦!白河・伊達・蘆名・岩城氏の攻防)
・南北朝時代に南朝が拠点とした幻の寺院城郭・霊山寺とは?
・伊達氏のルーツは福島にあり!奥州制覇を果たす道のり
・相馬地方を約700年統治した古豪・相馬氏とはどんな一族?
・奥州きっての城下町・若松はどのようにして生まれた?
・会津若松城で籠城戦を続けた会津藩が開城に至るまで

などなど、激動の福島の歴史に興味を惹きつける。

Part.4:福島で育まれた産業や文化

・最澄と大論戦した僧・徳一が開祖!慧日寺から始まった会津の仏教文化
・猪苗代湖の水を郡山へ! 幹線延長52㎞の安積疏水事業
・県境には二ツ小屋隧道が残る 福島と米沢を結んだ万世大路
・東北唯一の中央競馬場が福島市につくられたわけ
・幕府直営の半田銀山 明治時代は五代友厚が経営
・感染症と闘い続けた細菌学者・野口英世の生涯
・日本酒の金賞受賞数日本一!福島の地酒はなぜすごい?

などなど福島の発展の歩みをたどる。

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