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群馬で養蚕が盛んなわけ

群馬は南部こそ関東平野に属していますが、そのほかは山がちな土地柄のため水田耕作には向きません。ですがそれも工夫次第で何とでもなります。斜面の耕作地は水はけのよい土壌です。加えて晴天率が高く日照時間が長い気候も相まって、蚕(かいこ)のエサとなる桑の栽培に最適なのです。

そのために古くは上州や上野国(こうずけのくに)と呼ばれた群馬は、近代以前より絹の産地として知られていました。

群馬の養蚕・製糸業の発展

明治に入ると、安くて良質な日本の生糸は諸外国に人気となり、貴重な外貨を稼ぐ日本の主要な輸出品となりました。そのなかで、もともと盛んだった群馬の養蚕・製糸業が加速度的に急発展を遂げていきます。

大規模な官営工場として「富岡製糸場」が設立され、群馬県内の養蚕農家も振興が図られました。官民挙げて製糸業の発展にまい進した結果、とくにヨーロッパでは良質な生糸を「マイバシ」と呼ぶほど、群馬産の高品質な生糸は認知されていたといいます。

群馬の養蚕・製糸業の発展
富岡製糸場

群馬の絹産業遺産マップ

群馬の絹産業遺産マップ

県内各地には世界遺産を含めて、昔から盛んだった「絹産業」、「養蚕業」、「製糸業」、「織物業」の遺構などが数多く残っています。

群馬の養蚕・製糸業の発展とその影響力

このような製糸産業の発展は、群馬県全体の商業の活性化や鉄道などの交通網の発達に大きく貢献しました。さらに外国との交流は、経済だけでなく文化の面でも大きな成果をもたらすことになります。

欧米仕込みの先進的な教育者として同志社英学校(現・同志社大学)を設立した新島襄(にいじまじょう)、宗教家として大家となった内村鑑三(うちむらかんぞう)は 代表的な群馬の偉人です。

ほかには日本文学に大きな足跡を残した田山花袋(たやまかたい)萩原朔太郎(はぎわらさくたろう)など、ヨーロッパ諸国から大きく影響を受けた芸術家たちを、明治から大正にかけて多数輩出しました。

思想や考え方など人々の内面まで、欧米列強諸国の影響が浸透していたのです。

群馬の絹産業の落ち込み

時代をリードし続けた群馬の絹産業ですが、大正期を最高潮として大きく落ち込んでいきます。生糸相場は暴落し、昭和初期に起きた昭和恐慌により大打撃を受けました。さらに日中戦争、第二次世界大戦という戦争の時代に、窮地に追い込まれていきました。

戦後になってからは復興を目指したものの、ナイロンや輸入生糸に押され、厳しい状況が続いている現状があります。

群馬の養蚕・製糸業の現在と将来の展望

現在、群馬県内で稼働している製糸工場は、安中(あんなか)市松井田町の碓氷(うすい)製糸株式会社1社のみとなっています。前身となった会社が設立されたのは昭和34(1959)年と、半世紀以上続いています。

養蚕技術の研究開発機関としては、群馬県の蚕糸技術センターが前橋市にあります。前身の組織が設立されたのは群馬養蚕のゴールデンエイジであった明治31(1898)年のことです。

同センターでは、養蚕農家への支援や、新しい蚕糸業(さんしぎょう)の創出の振興事業を行っています。その研究成果としてはオリジナル蚕品種の繭を使った「ぐんまシルク」があります。また2017年には、世界初となる緑色蛍光(りょくしょくけいこう)シルク繭(まゆ)を生産する遺伝子組換えカイコの養蚕農家での飼育に成功しました。

このような高付加価値の繭生産が定着すれば、群馬絹王国の復活につながるはずです。

群馬の養蚕や絹について学べる「日本絹の里」

群馬県立日本絹の里は、繭や生糸に関する資料や群馬の絹製品、本物の蚕の展示などを行っている施設です。常設展示や企画展のほか、ゲーム機のバーチャル世界で蚕の飼育を詳しく知ることができたり、絹を使った染色体験、手織り体験などが可能だったりします。

伝統ある群馬の蚕糸・絹業の足跡とシルクの素晴らしさを体感できる、子どもから大人まで楽しめる人気スポットの場所は高崎市です。

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群馬県の地形や地質、歴史、文化、産業など多彩な特徴と魅力を、地図を読み解きながら紹介するマップエンターテインメント。群馬県の知っているようで知られていない意外な素顔に迫ります。思わず地図を片手に、行って確かめてみたくなる情報を満載!

Part.1 地図で読み解く群馬の大地

・日本でたった8県しかない「海なし県」 大昔は群馬にも海があった!?
・徳川家康も重要視した日本一の川 暮らしを支える利根川とダム
・地質学的に貴重な資源と、独自の営みが残る 下仁田ジオパークってどんなところ? ほか

Part.2 群馬を駆ける充実の交通網

・こんなところにも鉄道が走っていた! 遺構が残っている群馬の廃線
・昭和に活躍した歴史ある蒸気機関車! 貴重なSLに今も乗れる理由は?
・群馬から東京ディズニーリゾートまで行ける! 日本一のサイクリングロード ほか

Part.3 群馬にまつわる歴史の話

・現・みどり市で見つかった歴史的大発見! 岩宿遺跡はどうして有名なの?
・溶岩の絶景の裏には、歴史的犠牲があった 天明の大飢饉は浅間山が一因!?
・世界遺産は富岡製糸場だけじゃない! 絹産業遺産群とはどんなところ? ほか

Part.4 群馬で育まれた文化や産業

・焼きまんじゅうやうどんは火山が育んだ!? 群馬で生まれた粉ものグルメ
・群馬県民に愛されるマスコットキャラクター ぐんまちゃんは実は2代目!
・「西に西陣、東に桐生」といわれる機どころ 桐生の織物の文化と歴史 ほか

・データで分かる全35市町村 人口の増減、観光、農業・工業
・吉田初三郎が描いた群馬の鳥瞰図
・上毛かるたにも登場する 群馬が誇る、ゆかりのある偉人
・まだまだある、群馬が誇る日本一! 群馬で見つけた日本で一番〇〇なもの

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