久井の岩海「ごうろ」とは？～花崗岩が生んだ特異な景観～

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「久井の岩海」は花崗岩の性質が岩海を形成

ごうろは1カ所だけでなく付近数カ所にも点在しています。山の高い位置から林の中まで岩海で埋め尽くされていますが、巨岩ができる過程には花崗岩の性質が深く関わっています。

宇根山は流紋岩（りゅうもんがん）でできた山ですが、岩海の分布域には花崗閃緑岩があります。花崗岩が気候の影響により風化する過程で、中心は硬いコアストーンのまま、そしてその周りは軟らかいまさ土（つち）になっていきます。この時、降雨などでまさ土の部分が流れ去ると、硬いコアストーンだけが残ります。こうして巨岩礫が残留累積した結果、岩海ができたと考えられます。

まだ大きなコアストーンが残っているときに起こることが条件であり、全部が風化してまさ土になってしまってからではこのようにはなりません。

花崗岩の風化過程

花崗岩の岩盤には節理と呼ばれる割れ目が3方向に走っています。割れ目に雨水が染み込んだり、霜が成長したりして岩が風化し、周りはまさ土、中心はコアストーンとなります。

岩海とまさ土は花崗岩によって生まれる

花崗岩の風化により土・砂状になるまさ土は、水に弱く浸食されやすい特徴を持ち、広島県ではたびたび豪雨による土石流災害を引き起こす原因にもなっています。ちなみに、まさ土となる性質を持っているのは花崗岩のみ。同じ成分で構成されているが組織が異なる流紋岩は、まさ土にはなりません。

「矢野の岩海」は閃雲花崗岩からなる

府中市には「矢野の岩海（やののがんかい）」があり、こちらは閃雲花崗岩（せんうんかこうがん）からなります。標高約450ｍの位置に巨大岩礫が重なって谷底を埋めています。露出部分の厚さは7ｍ以上、延長は約100ｍとされています。

矢野の岩海には転落石により洞穴ができている点など、他の岩海には見られない特徴があります。

「久井の岩海」と「矢野の岩海」は国の天然記念物に指定された

小規模な岩海は県内外でも見られますが、直径2m以上の岩が埋め尽くす大規模なものは全国でも非常に珍しくなっています。そのため学術上、気候による侵食作用を示すものとして貴重と認められ、「久井・矢野の岩海」として1964（昭和39）年に国の天然記念物に指定されました。また「久井の岩海」は、2007（平成19）年に日本の地質百選にも選定。

久井・矢野の岩海はともに歩道などが整備されており、常時公開中です。