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府中町の歴史と昭和の大合併

1889(明治22)年、明治政府が市制・町村制を交付。これを受けて、安芸郡府中村が成立しました。府中という名前は、古代安芸国の国府が置かれていたといわれることに由来します。

当時の村や町は江戸時代の集落がベースになっていたため非常に数が多く、広島県内には1174の市町村が存在していました。政府は行政事務を独立して遂行できる自治体の造成を目指し、全国的に町村合併を推進。広島県でもこれを受けて市町村合併が進み、同年末には1市464町村にまで集約されました。

その後も県内各地で小規模な自治体統合が繰り返され、1945(昭和20)年には5市342町村にまで再編。昭和の大合併と呼ばれた戦後の合併政策により、1961(昭和36)年には市町村数が12市98町村まで減少しました。

府中町は合併せずに単独町制が決定

何度も合併が繰り返され町村境が変わる中、府中村は一度も合併をしませんでした。1937(昭和12)年に町制を施行して府中町となりますが、町域は府中村時代のまま

平成の大合併時に行われた住民投票では、「広島市と合併」「単独市制」「町制維持」で票が割れましたが、「単独市制」「町制維持」を希望する声が若干優勢でした。住民投票後に行われた町長選挙で単独自治派の候補者が当選したことが決定打となり、「単独町制維持」が決定しました。

府中町は合併せずに単独町制が決定

府中町が合併せずに単独町制を維持できているのはなぜか

府中町の単独町制を支えているのが、マツダとその関連メーカーから得られる潤沢な税収です。

地方公共団体の財政力を示す指数として用いられる財政力指数によると、府中町の2018年度の数値は0.92。ちなみに東京都港区は1.27であり、0.92という数値は全国上位です。約5万1000人という人口も、町村としてはトップクラスです。

比較的経済力があり、人口も多い。町内にはマツダが運営する企業立病院や大型スーパーがあり、広島市内も通勤圏内。町面積が狭いため行政との距離が近く、何かと小回りが利くのもメリットです。

府中村の時代から町域が変更されていないこともあり、地元への愛着も強いでしょう。「府中町が好きだし、今のままで特に不自由はない」というのが、府中町が単独町制を維持する理由かもしれません。

府中町が合併せずに単独町制を維持できているのはなぜか

マツダ本社は府中町にありますが、マツダ本社工場は隣接する広島市南区にもまたがっています。

府中町は合併も市制施行もせずに今後もそのままで継続

ちなみに今のところ、市制施行の予定はありません。人口要件は満たしていますが、府中町には高校が1校しかありません。広島県条例では、高校3校以上が市制施行の条件になっているため、市制は施行できないのです。

そして地方分権が進んだ現在では、「町のままでは行えない行政サービス」はかなり減っています。特に市になるメリットもないため、「府中町は府中町のまま」で問題はないようです。

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