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大島紬とは

大島紬は奄美大島を発祥の地とする高級絹織物で、その歴史は1300年にも及ぶといわれています。古くは734(天平6)年の『奈良東大寺献物帳』にも記録されているほどです。

大島紬の技法は長い年月をかけて洗練されていき、世界でも類を見ない極めて精密な絣(かすり)模様を生み出すようになっていきました。

大島紬は茨城県の結城(ゆうき)紬、石川県の牛首(うしくび)紬(新潟県の塩沢紬、長野県の上田紬などの説もある)と並ぶ日本三大紬のひとつに数えられています。さらにペルシア絨毯(イラン)、ゴブラン織り(フランス)と並ぶ世界三大織物と称されており、国際的にも極めて価値の高い伝統工芸品です。

そのため制作には、非常に高度で熟練した技術を要します。また工程数は30以上にも及び、ひとつの作品が完成するのに半年はかかります。

大島紬の最大の特徴は深くて渋い黒色!

染色は天智天皇の時代(661年頃)に始まった古代染色の技法をもとにしています。現在の大島紬は、技術の進歩とともに色味のバリエーションも飛躍的に増えましたが、伝統的な大島紬(泥大島)は、深くて渋い黒色が最大の特徴です。

この黒色はテーチ木と泥の組み合わせによって生み出されています。テーチ木はシャリンバイのこと。暖地の沿海地に生えるバラ科の常緑低木(じょうりょうていぼく)で、白い花を咲かせます。排ガスや大気汚染にも強いため、都市部の緑化用樹種としても多用されています。

大島紬の染色方法

大島紬の染色は、まずこのテーチ木の幹から取り出した染色液を使います。染色液に含まれるタンニン酸により、白い絹糸は赤茶色に染まります。次に赤茶色に染まった絹糸を専用の泥田(どろた)に浸します。泥田は鉄分をたっぷり含んだ地場の土からなります。このなかに赤茶色に染まった絹糸を漬けると、タンニン酸と鉄分が化学反応を起こし、特有の渋い黒色へと変化するのです。

大島紬の色の秘密は奄美大島特有の鉄分豊富な赤い土にある!

ところが泥田は長年使っていると、次第に鉄分による黒色変化の反応が弱くります。そこで泥田のなかに、島内に多数自生しているソテツの葉を入れます。ソテツは漢字で「蘇鉄」、つまり鉄が蘇(よみがえ)ると書き、葉を入れることで泥田の鉄分が復活すると信じられてきました。科学的に効果が立証されたわけではありませんが、現在も風習として続けられているといいます。

泥田に使われているのは、奄美特有の鉄分を多く含んだ赤い土。奄美は降水量が多く、長年かけて岩石のなかからマグネシウムやケイ素など鉄以外の成分が溶け出します。そして鉄を多く含んだ岩石が風化し土になる過程で、その鉄分が空気中の酸素と触れて錆び、赤色の土になるのです。

この鉄分豊富な土こそが大島紬の発展を支えてきたのです。

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Part.1 地図で読み解く鹿児島の大地

・鹿児島を筆頭に九州になぜ火山が多く一直線に並ぶ?
・大正時代に驚くべき大噴火!桜島の形成とメカニズム
・アンモナイトやクビナガリュウなど恐竜時代の化石が獅子島で続々!
・屋久島は巨大な花崗岩の塊を付加体が取り巻いている!
・超巨大火山「喜界カルデラ」に知られざる溶岩ドームが存在!
・薩摩富士・開聞岳や池田湖ほか薩摩半島南東部の火山群の歴史
・テーチ木と奄美の赤黄色土が生む日本を代表する絹織物・大島紬

…などなど鹿児島の自然のポイントを解説。

Part.2 鹿児島を駆け抜ける充実の鉄道網

・明治時代開通の鹿児島線 鹿児島~国分に始まる鉄道史
・新大阪からの直通も走る!九州新幹線鹿児島ルートの全貌
・国内屈指の大幹線として君臨・東京直通も走った鹿児島本線
・日本最長の寝台特急も走った九州東部を縦貫する日豊本線
・「おれんじ食堂」の投入など奮闘する肥薩おれんじ鉄道
・開聞岳ほか薩南の絶景を満喫!JR最南端駅もある指宿枕崎線
・県内唯一の私鉄も今や幻に・鹿児島交通枕崎線&知覧線

…などなど鹿児島の鉄道事情を解説。

Part.3 鹿児島で動いた歴史の瞬間

・鹿児島の古代史総論
・国内最古級の大規模な定住集落跡・上野原遺跡とは?
・政府と薩摩の間に起った軍事的衝突
・日本の南の玄関口・鹿児島に鉄砲やキリスト教が伝来
・九州統一を目指す島津氏VS九州攻めに乗り出した豊臣秀吉
・江戸~薩摩間約1700㎞!最も遠方からの参勤交代
・鹿児島城の築城と薩摩藩独自の外城制度
・薩英戦争が薩摩藩にもたらした近代化と倒幕への方針転換
・戦後アメリカの統治下となった奄美群島が日本復帰

…などなど鹿児島の歴史を徹底解説。

Part.4 鹿児島で育まれた産業や文化

・近代産業の礎を築いた集成館
・日本の金産出量の約9割を占める菱刈鉱山がすごい!
・かつては海軍の航空基地・鹿児島空港開港の歴史
・志布志湾に浮かぶ人工島にある志布志国家石油備蓄基地とは?
・鹿児島臨海工業地帯の造成の変遷をたどる
・ロケット打ち上げ施設は国内唯一・日本で宇宙に一番近い県
・古代より栄えた坊津の港に代わり枕崎が遠洋漁業の拠点に!
・本土が半分がやせたシラス台地なのになぜ全国有数の農業県になれた?

…などなど鹿児島の産業と文化を丁寧に解説。

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