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富山がライトレールを導入した背景

その弊害として、人々の主要交通手段である自動車によって排気ガスと二酸化炭素の排出が多くなったことが挙げられます。また、郊外と中心地を繋ぐ道路の延長も必須となり、その維持管理費は膨大に。特に、冬の除雪費用も大きく、富山市は毎年数億円を除雪に費やしています。そこで富山市は2002年から「コンパクト」をキーワードにしてまちづくりを始めます。その切り札となったのがLRT(ライト・レー ル・トランジット)の導入です。

ライトレールは次世代型の路面電車

ライトレールとは、日本だけでなく世界でも注目される交通システム。架線から電気を取り入れるためのパンタグラフをもち、電気モーターで駆動するため環境にやさしく、バス・自動車に比べて二酸化炭素の排出量が少ないのです。国立環境研究所の推計によると、ライトレールが乗客1人を1km運ぶのに排出する二酸化炭素は、自家用車の場合の約半分。専用レールを走るため、運行時間が正確なだけでなく、渋滞に巻き込まれることもないので通勤手段にもふさわしく、環境負荷の削減にも繋がっています。最新技術によって騒音や振動が少ないことやバリアフリーであること、ほかの公共交通との乗り換え利便性も優れていることから、次世代型路面電車といわれています。

ライトレールの導入は富山が日本で初めて

これだけ優れたインフラでありながら、地下鉄やモノレールに比べて導入コストが低いこともポイントです。海外では1980年代から導入が進んでいましたが、富山市が日本で初めてライトレール計画を発表し、そこからわずか3年後の2006年に運行が始まりました。

富山のライトレールはかつてのJR富山港線を引き継いだ

日本初のライトレールとして開業した「富山ライトレール」は、かつてJR富山港線だった路線の大半を引き継いで、富山駅北から岩いわ瀬せ浜はままでの7.6㎞で運行をスタート。北陸新幹線開業にあたり、JRは利用者が減少していた富山港線の廃線を決定し、富山市が富山港線を受け入れることにしたという経緯による。富山ライトレールは運行本数が多く、終電も遅かったため、運行本数が1~2時間に1本だったJR時代と比べても利用者は大幅に増加した。

富山のライトレールの南北接続が実現

富山港線(富山ライトレール)が市の北側を走っている一方、南側を走るのが富山地方鉄道の市内電車です。富山ライトレールの愛称「ポートラム」に対し、環状線の「セントラム」、富山大学前と南富山駅前を結ぶ「サントラム」などで知られています。これまで南北でそれぞれ分かれて走っていましたが、さらに交通全体の利便性を広げるため、2020年に接続が実現。富山駅の南北は旧JR北陸本線で分断されていましたが、富山駅の高架化によって南北を地上で繋げることができるようになり、相互乗り入れが可能となったのです。これに伴い、富山ライトレールは富山地方鉄道に吸収合併されました。

これまでは、旧富山ライトレール沿線に住んでいる人々が中心地の総曲輪(そうがわ)などへ行こうとすると、富山駅北で下車し、駅の地下道経由で駅南まで歩き、改めて市内線に乗り換えなければいけませんでした。運賃は1乗車210円(2021年5月現在)であるため、乗り換える前と後でそれぞれ払わなければいけませんでしたが、このたびの南北接続によって乗り換えがなくなり、運賃も1乗車分で済みます。利便性でもコスト面でも、大きな改善となったのです。

富山はライトレール導入でまちづくりが評価される

こうしたまちづくりに取り組む富山市は、2018年、内閣府によって「SDGs未来都市」および「自治体SDGsモデル事業」に選定されました。特に環境負荷の低減を目指したエネルギー面での取り組みは高く評価されています。また、公共交通と徒歩をバランスよく組み合わせた移動を促進しており、富山市の調査によると65歳以上の平均歩数は6360歩で、全国平均を1000歩近く上回る結果に。これはSDGsの社会分野のゴールでもある市民の生活改善や健康にも通じ、富山の交通への取り組み効果は、環境分野のみにおさまらず、他分野にも領域を広げています。

富山駅から北に延びるのが富山港線。富山駅の南側を走るのは市内電車(路面電車)。環状線は、まちなかを1周約28分で巡ります。

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Part.1 地図で読み解く富山の大地

・立山連峰との高低差4000m!「きときと」ぞろいの富山湾
・黒部ダムが大電源を生み出すまで
・崩壊を続ける立山カルデラ
・極東の氷河の南限は立山! 国内初の氷河認定とライチョウ
・神秘の光景! 魚津の蜃気楼と雨晴海岸の気嵐
・2000年前に形成された魚津埋没林
・富山の水がおいしいヒミツ
・立山の地下には「何か」がある! 活断層はあるのに地震が少ない理由
・富山湾のホタルイカはなぜ有名?

…など

Part.2 富山を駆ける充実の交通網

・北陸新幹線開業による光と影
・河川敷にある富山きときと空港
・SDGs未来都市に選定 ライトレールが象徴するまちづくり
・伏木港は神戸港に憧れた男の夢
・立山の観光ルートは1つじゃない? 一般開放が待ち遠しい黒部ルート
・マッターホルンの麓町から着想 低速電気バスEMUと宇奈月温泉
・鉄オタ集結地! 富山県は公共交通の宝庫
・V字峡谷を走るトロッコ電車

…など

Part.3 富山の歴史を深読み!

・江戸時代は鮎だった! 駅販売で広がったます寿し
・富山県成立までの複雑な歴史/越中の英雄・佐々成政の人物像
・焼け野原と化した富山大空襲/富山の遺跡&古墳は個性派ぞろい
・放生津に存在した亡命政権
・越中の伊能忠敬 射水出身の測量家・石黒信由
・越中の黄金郷 加賀藩極秘の「越中の七かね山」
・北陸近代医療の父・黒川良安
・世界遺産は加賀藩の軍事工場 五箇山でおこなわれた塩硝づくり

…など

Part.4 富山で育まれた文化や産業

・「越中おわら節」はなぜ有名?
・財政難を立て直した富山の売薬
・布教のためのテキストだった 曼荼羅から読み解く立山信仰
・秀吉も称えた伝説の刀工・郷義弘
・売薬商人は危ない橋を渡っていた? 薬の密貿易が生んだ昆布文化
・有名な創業者も多く輩出 富山県民は倹約家で働き者
・ジャポニズムの立役者・林忠正
・アニメの聖地が多い富山県
・瑞泉寺再建から始まった井波彫刻

…など

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