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沖縄島の地層-北部:西側ほど古く最も古い地層は約3億年前!

北部は、北東~南西の方向に帯状に延びる地層で構成されています。これらは約1億7000万年前の古い地層から約4000万年前の地層からなり、西側の地層ほど古くなります。琉球列島でもっとも古い地層も、島の西側にある伊江島(いえじま)や伊是名島(いぜなじま)などにあり、約3億年前の放散虫(ほうさんちゅう)が発見されています。

このような北部の地層は、おもに琉球列島がまだ大陸の辺縁部にあったころに形成された付加体(ふかたい)だと考えられています。付加体とは、海洋プレートが陸のプレートに沈み込むときに、海洋プレート上の堆積物がはぎとられ、大陸から流入する土砂と混ざり合って、陸にくっついたものです。たとえば、東側に分布する嘉陽層(かようそう)は、約5000万年前に形成された付加体です。この地層は、大陸から流入した泥岩(でいがん)や砂岩(さがん)と海洋プレートに乗っていたプランクトン(放散虫や珪藻類)の遺骸でできたチャートやサンゴ礁由来の石灰岩などの堆積物が混在していることが特徴です。

沖縄島の地層-南部:約500万年前からおもにふたつの地層群で構成

南部に分布する地層は、北部に比べて時代がはるかに新しく、約500万年前から形成されました。この地層は、おもに成り立ちの異なるふたつの地層群で構成されています。そのうちのひとつが「島尻層群(しまじりそうぐん)」で、泥や砂が海底に堆積して形成されたもの。もうひとつが、琉球石灰岩が厚く堆積する「琉球層群」です。どちらも沖縄島一帯で堆積した新しい層であることは共通しており、古い付加体でできた北部とは大きく異なります。

沖縄島周辺の地層構造は海底も南北で異なる

最近では、沖縄島周辺の海底の地質構造も、南北で異なることが明らかになってきています。2018(平成30)年から始まった、地質調査総合センターの海底地質調査によると、沖縄島南部の周辺海域に、厚さ約1500mを超える分厚い層が大規模に堆積していることがわかります。この地層は「うるま沖グループ」と呼ばれています。

ところが北部周辺海域では、この「うるま沖グループ」の堆積層は薄く、陸上にもほとんど露出していません。この違いが生じた理由は、南部海域には「前弧海盆(ぜんこかいぼん)」と呼ばれる凹地が発達していたためだと考えられています。

前弧海盆とは、琉球列島のような島弧(とうこ)の海溝側に、プレート活動によって隆起した部分と陸地との間にできる海盆のこと(図A参照)。この凹地に堆積物がたまることで、分厚い層が形成されたというわけです。

この地層は、沖縄島南部に分布する島尻層群に相当することもわかりました。この島尻層群は、南部海域の「うるま沖グループ」が分厚かったために、島が隆起した際にも侵食されず、陸上に露出することになったと考えられます(図B参照)。

沖縄島南部は、発達した前弧海盆に堆積物がたまり、「うるま沖グループ」の分厚い地層を形成。北部では前弧海盆が発達しなかったため、堆積物の層は薄かった。この違いが、現在の沖縄島における南北の地質構造の違いに影響したと考えられています。
GSJ地質ニュースvol.8 No.3(2019年3月)を参考に作成

沖縄島の地層はなぜ北部と南部で差が生じたのか?

琉球列島各地にある島尻層群には、水溶性天然ガスが存在することが知られています。同様の地層が海域で新たに発見されたことは、資源開発の観点からも注目されています。

ではなぜ、現在は同じ地質環境にある北部と南部で、このような差が生じたのでしょうか。今回の調査により、「うるま沖グループ」が堆積した期間には、島弧の軸の方向が沖縄島付近で変わり、島の南部が今とは違う位置にあったためではないかと推測されています。海底の地質を知ることは、琉球列島誕生の謎を解く重要なカギになっているのです。

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Part.1 地図で読み解く沖縄

・造山運動によって形成された琉球列島/新しい地層と古い地層、南北で異なる沖縄本島の地質
・エメラルドグリーンの海は隆起してできたサンゴ礁のおかげ?
・グスクの石垣から地下ダムまで利用される琉球石灰岩
・貴重な自然の宝庫「やんばるの森」とは?
・マングローブの生態系が「生きものたちのゆりかご」と呼ばれるのはなぜ?
・県内唯一の活火山島である硫黄鳥島は硫黄の産地だった
・西表島で行われた炭鉱開発とは?…などなど沖縄の自然を解説。

Part.2 陸海空、沖縄に巡らされた交通網

・那覇空港と市街を結ぶ県内唯一の鉄道路線「ゆいレール」
・県民の足として、輸送手段としても活躍していた沖縄県鉄道とは?
・海軍の飛行場からスタートし、各地を結ぶ那覇空港
・明治初め、本州と那覇を結ぶ国内最長の定期航路が誕生!
・沖縄復興のシンボルといわれた730バスとは、どのようなバスだったのか?
・全ての道は首里城に通じる?首里城から那覇港、本島南部に通じる琉球石灰岩の道

…などなど沖縄の交通事情を解説。

Part.3 沖縄で動いた歴史の瞬間

・沖縄の古代史総論/約2000万年前に住んでいた港川人はどこからやってきたのか?
・沖縄本島を三分割して約100年も勢力争いが続いた三山時代とは?
・琉球から江戸まで片道2000㎞の長旅 琉球使節の江戸参府の全貌
・黒船が琉球にやってきた!浦賀上陸前に琉球を訪れたペリーの目的とは?
・ソテツ地獄を経て、国内で唯一戦場となった沖縄
・沖縄の日本復帰を記念して開催された沖縄海洋博覧会とは?

…などなど沖縄の歴史を徹底解説。

Part.4 沖縄で育まれた産業や文化

・元々は宮廷料理だった?沖縄の郷土料理・沖縄そば
・男子禁制の祈りの場、御嶽とはいったいどのような場所なのか?
・15世紀に伝わり戦火からも復活!沖縄を代表する酒・泡盛の奇跡
・薩摩から朝鮮人陶工がやってきたのが始まり?沖縄やちむんの魅力とは
・絣や紅型のほか多彩な染織物「染色文化の宝庫」と呼ばれる沖縄

…などなど沖縄の産業と文化を丁寧に解説。

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