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真珠道は首里城を起点に建造された主要街道のひとつ

沖縄島には、琉球王朝時代につくられた石畳の道が現存しています。琉球王朝時代には、首里城を起点として数多くの石畳の道や石製の橋が建造されたといわれています。その主要街道のひとつが、首里城守礼門(しゅれいもん)東南の石門を起点とし、金城(きんじょう)坂、識名(しきな)坂、真玉橋を経由して、那覇港南岸の屋良座森城(やらざむいぐすく)に至る「真珠道(まだまみち)」です。この真珠道は、琉球王朝時代、平時には生活道として使用されましたが、道中に王家の別邸もあったことから行幸(ぎょうこう)道としても使用されました。また、軍用道路としての性格をもち、有事となれば南部方面の軍勢がこの道を通り、海洋方面からやってくる敵(おもに倭寇(わこう))に備えたといいます。とくに那覇港は、琉球王朝にとって交易の最重要拠点だったため、その防衛に力を注ぐ必要がありました。

真珠道を建造した尚真王の統治能力

この真珠道は、16世紀に琉球王朝第二尚氏王統の3代国王である尚真王(しょうしんおう)によって建造されました。尚真王は12歳で王に即位したのち、在位50年をかけて王権の基盤を安定させ、中央集権体制の確立を図り、領土を奄美北部まで広げました。いわば琉球王国の最盛期を築いた王です。尚真王はさまざまな政策を実行に移しますが、そのひとつとして、地方制度の改革を行い、「間切(まぎり)(現在の市町村)」「シマ(現在の字(あざ))」という行政単位を設けて、首里城を中心に各間切に沿って街道を整備しました。こうして尚真王は海上交通網だけではなく、街道整備によっても琉球国内における情報伝達の迅速化を図り、支配体制をより盤石なものにしたのです。

真珠道は太平洋戦争や道路開発によりそのほとんどが壊滅

かつて真珠道と呼ばれた石畳道は、太平洋戦争や道路開発などでそのほとんどが破壊されてしまいました。ですが那覇市金城地区には、およそ250mにわたり、かつての石畳道が残されています。急斜面では部分的に階段状になってはいるものの、平らな部分の道幅は、広いところで3m以上もあり、当時としてはかなりの規模の道だったようです。

真珠道は美しいだけではない実用性にあふれた道

また、道に敷き詰められている石は水はけのよい琉球石灰岩で、今でこそ敷石の表面は長年の摩耗によって滑りやすくなっていますが、かつては敷石の表面を叩いて滑り止めの工夫も施されていたといいます。真珠道はその名のごとく美しい道ですが、実用性にも非常にすぐれた道だったようです。

真珠道の起点は首里城守礼門東南部にあった石門。ここから金城町の石畳道を抜け、金城川を越え、識名平を上ります。その後、国場川にかかる真玉橋を渡り、饒波川に沿って南下。那覇港の南岸、砲台がある屋良座森城が終点。

魔物の侵入を防ぐ「石敢當(いしがんとう)」

沖縄各地の丁字路やY 字路の突きあたりなどでよく目にする「石敢當」とは、中国福建省伝来の魔除けの石です。沖縄の迷信では、悪霊(マジムン)は直進する性質があり、丁字路などの突きあたりにぶつかると向かいの家に入ってきてしまうので、突きあたりに石敢當を置き、悪霊の侵入を防ぐのだそう。石敢當は日本全国に広く分布していて、なかでも沖縄や鹿児島に数多くあります。沖縄人は古くから目に見えない魔の力に畏怖の念を抱いてきたため、石敢當のほかにもシーサーやサンなどの魔除けの文化が色濃く残っているのでしょう。

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沖縄県の地形や地質、歴史、文化、産業など多彩な特徴と魅力を、地図を読み解きながら紹介するマップエンターテインメント。沖縄の知っているようで知られていない意外な素顔に迫ります。地図を片手に、思わず行って確かめてみたくなる情報を満載!

Part.1 地図で読み解く沖縄

・造山運動によって形成された琉球列島/新しい地層と古い地層、南北で異なる沖縄本島の地質
・エメラルドグリーンの海は隆起してできたサンゴ礁のおかげ?
・グスクの石垣から地下ダムまで利用される琉球石灰岩
・貴重な自然の宝庫「やんばるの森」とは?
・マングローブの生態系が「生きものたちのゆりかご」と呼ばれるのはなぜ?
・県内唯一の活火山島である硫黄鳥島は硫黄の産地だった
・西表島で行われた炭鉱開発とは?…などなど沖縄の自然を解説。

Part.2 陸海空、沖縄に巡らされた交通網

・那覇空港と市街を結ぶ県内唯一の鉄道路線「ゆいレール」
・県民の足として、輸送手段としても活躍していた沖縄県鉄道とは?
・海軍の飛行場からスタートし、各地を結ぶ那覇空港
・明治初め、本州と那覇を結ぶ国内最長の定期航路が誕生!
・沖縄復興のシンボルといわれた730バスとは、どのようなバスだったのか?
・全ての道は首里城に通じる?首里城から那覇港、本島南部に通じる琉球石灰岩の道

…などなど沖縄の交通事情を解説。

Part.3 沖縄で動いた歴史の瞬間

・沖縄の古代史総論/約2000万年前に住んでいた港川人はどこからやってきたのか?
・沖縄本島を三分割して約100年も勢力争いが続いた三山時代とは?
・琉球から江戸まで片道2000㎞の長旅 琉球使節の江戸参府の全貌
・黒船が琉球にやってきた!浦賀上陸前に琉球を訪れたペリーの目的とは?
・ソテツ地獄を経て、国内で唯一戦場となった沖縄
・沖縄の日本復帰を記念して開催された沖縄海洋博覧会とは?

…などなど沖縄の歴史を徹底解説。

Part.4 沖縄で育まれた産業や文化

・元々は宮廷料理だった?沖縄の郷土料理・沖縄そば
・男子禁制の祈りの場、御嶽とはいったいどのような場所なのか?
・15世紀に伝わり戦火からも復活!沖縄を代表する酒・泡盛の奇跡
・薩摩から朝鮮人陶工がやってきたのが始まり?沖縄やちむんの魅力とは
・絣や紅型のほか多彩な染織物「染色文化の宝庫」と呼ばれる沖縄

…などなど沖縄の産業と文化を丁寧に解説。

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