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金原明善が植林事業を起こす以前の天竜林

天竜の人工林の歴史は古く、室町時代中期の文明年間(1469~1487年)に秋葉山本宮(あきはさんほんぐう)秋葉神社(天竜区春野町)の境内に植林されたことに端を発しています。その後、1696(元禄9)年に山住神社(やまずみじんじゃ:天竜区水窪町)の宮司が紀州熊野から杉の苗木3万本を持ち帰って植林を行い、本格的な林業が始まりました。江戸時代後期には多くの木材が天竜川を下って遠く江戸まで届けられたといいます。

金原明善は洪水に苦しむ人々のために治水を決意

最も大規模な植林が行われたのは明治時代。実業家の金原明善によるもので、そこには天竜川の氾濫が大きく関わっていました。

急峻(きゅうしゅん)で流れの早い天竜川は、上流部から遠州平野に出ると、現在の天竜区二俣付近を扇頂として扇状地を形成します。三方原台地と磐田原台地に挟まれた低地で自由に流路を変えていたため、古来から周辺に大きな水害を引き起こし“暴れ天竜”と呼ばれていました。

江戸時代になると築堤(ちくてい)が進んで河道が固定されるようになりましたが、それでも破堤(はてい)による氾濫が幾度も起こっています。1850(嘉永3)年から1868(明治元)年にかけては、大規模な決壊が5回も起こっており、当時19歳だった金原明善が暮らしていた安間村(あんまむら)を一瞬にして沈めてしまいました。金原明善は、これを機に洪水に苦しむ人々のために治水を進めていきます。

金原明善は治水目的で植林を開始

金原明善は明治政府に治水工事の費用負担を直訴し、さらに自らの全財産も投げ売って堤防を築いたといいます。堤防による治水が軌道に乗ると、今度は天竜川流域の山間部の植林事業に乗りだしました。

当時、天竜川の山間部は荒れていて大雨が降ると大量の水と土砂が一気に川に流れてしまう状態でした。金原明善は治水を目的に1885(明治18)年から植林を始め、上流の官有地759haに292万本のスギ、ヒノキの苗木を自らの費用で植樹。次いで1200haの植栽を行いました。これが後の天竜材となり、日本有数の林業発展の礎となったのです。

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Part.1 地図で読み解く静岡の大地

・富士山が標高日本一、駿河湾が深海日本一になった理由
・南から来た、火山の贈り物、伊豆半島ジオパーク
・交通の難所「大崩海岸」は海底噴火によって作られた!
・「日本三大人工美林」数えられる天竜の杉林は川の氾濫に関係があった?
・磐田市にトンボの楽園があった!
・湖?川?海?浜名湖の正体を探れ!
・世界遺産「三保松原」は江戸時代に「島」から「半島」になった!

などなど静岡のダイナミックな自然のポイントを解説。

Part.2 静岡を駆け抜ける鉄道網

・静岡県の鉄道の歴史は沼津市内の貨物線から始まった
・かつては「東海道本線」だった由緒正しき(?)御殿場線
・JRと私鉄が一体となって形成する伊豆半島東海岸の鉄道ルート
・意外なエピソードを秘めた東海道本線・静岡鉄道の並行区間
・「政令指定都市・静岡」の市内も走る山岳鉄道、大井川鐵道井川線
・軍事上の要請が背景にある天竜浜名湖鉄道(旧国鉄二俣線)のルート

などなど静岡ならではの鉄道事情を網羅。

Part.3 静岡で動いた歴史の瞬間

・静岡最古の古代人は愛鷹山付近にいた!
・日本考古学の聖地・登呂遺跡
・日本書紀に見る静岡とヤマトタケルの伝説
・源頼朝も流された流刑地伊豆
・下田が開港の舞台になったのはなぜか
・江戸城よりも大きかった駿府城天守台
・日本にたった一つしかない形の城・田中城
・家康の遺体は日光ではなく久能山にある?
・徳川慶喜と渋沢栄一の意外なつながり

などなど、激動の静岡の歴史に興味を惹きつける。

Part.4 静岡で育まれた産業や文化

・模型の首都!静岡が生まれたワケ
・バイクに楽器。浜松のものづくりは綿花の栽培から
・ボールは友達!サッカー王国しずおか
・富士山麓の湧水が育てた製紙業
・月ではなく富士山に帰ってしまう「かぐや姫」
・仏教界のスーパースター空海が静岡に残した伝説

…などなど静岡の発展の歩みをたどる。

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