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浜名湖の歴史:起源は約1万年前の氷河期

浜名湖は地理上「湖」と呼ばれていますが、その特殊な地形と多面的な用途から、河川法上では都田川水系都田川(みやこだがわ)に指定される「川」、漁業の実態から漁業法では「海」として扱われるという、行政上ユニークな分類がされています。その特異な水辺の誕生の起源は、約1万年前の氷河期まで遡ります。

浜名湖歴史:もとは湖ではなく内湾だった

氷河期の浜名湖は、湖ではなく小さな内湾でした。6000年前頃になると、氷河期の後に起きた世界的な温暖化による「縄文海進」により、海面が5mほど上昇。繰り返し起こる海進・海退によって、海岸線に複数の砂堤が現れるなど、湾は閉鎖的な環境を形づくっていきました。

その後、3500年前頃になると、南部の湾口部は、潮流で海から運び込まれた砂や、天竜川から流出した土砂によってせき止められ、湾口が閉塞して汽水湖となりました。1800年前ごろには、湖の水位が外海より1mほど高くなって、満潮時でも水が逆流することがなくなり、湖の水は一時的にほぼ淡水になったといわれています。

浜名湖歴史:もとは湖ではなく内湾だった

点線部分が現在の浜名湖と海岸線。天竜川にあたる場所も湾でした。

浜名湖の歴史:大地震によって海水が流れ込んで汽水湖となった

その後、長らく同じ形状を保っていた湖ですが、1498(明応7)年に大地震が起こり、地震と津波によって湖と海を隔てていた砂提の一部が決壊。そこから湖に海水が流れ込むことで、現在のような汽水湖となりました。決壊した部分が今切口です。

交通の要所となった今切口

陸地がいきなり海となったことから「今切れた=今切」と名付けられたこの湖口は、かつては地続きで人々が往来していましたが、決壊をきっかけに渡し船での往来が余儀なくされました。

戦国時代の1574(天正2)年には、武田軍の遠州侵攻において、高天神城(掛川市)の徳川軍を援護するため織田軍が岐阜から出陣するものの、難所の今切口を渡っているうちに高天神城が落とされました。今切口の海上交通が困難であったことを物語るエピソードです。

交通の要衝として、その重要性を熟知していた徳川家康は、1600(慶長5)年に「今切関所(新居関所)」を設け、今切口周辺を幕府直轄の天領とし、往来する者に厳しい検問を実施するようになります。以来、箱根関所と併せて最も重要な関所とされていた今切関所でありましたが、明治には廃止。現在では鉄橋や道路で安全に往来できるようになっています。

交通の要所となった今切口

幅は約200m、浜名大橋(国道1号)によって結ばれています。

浜名湖の養鰻(ようまん)の歴史

浜名湖といえば養殖うなぎが全国的に有名ですが、江戸時代には天然うなぎの産地として知られていました。

この地で養殖が始まったのは1900(明治33)年。東京でうなぎやすっぽんの養殖を研究していた服部倉治郎(はっとりくらじろう)が広めたと言われています。当初は浜名湖で獲れた15cmほどに成長したクロコウナギと呼ばれるうなぎを育てる方法をとっていました。

昭和になり、これに続いた村松啓次郎(むらまつけいじろう)という人物が、1971(昭和46)年、うなぎの稚魚であるシロコウナギから育てる方法を確立。この養鰻方法が全国各地に広まっていきました。

浜名湖周辺が養鰻に適した場所である理由としては「養殖に必要なきれいな地下水が三方ヶ原台地から供給されたこと」「浜名湖に遡上したシロコウナギが手軽に採捕できたこと」「飼料となる養蚕サナギが豊富にあったこと」「年間平均気温が15℃前後であること」などが挙げられています。

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Part.1 地図で読み解く静岡の大地

・富士山が標高日本一、駿河湾が深海日本一になった理由
・南から来た、火山の贈り物、伊豆半島ジオパーク
・交通の難所「大崩海岸」は海底噴火によって作られた!
・「日本三大人工美林」数えられる天竜の杉林は川の氾濫に関係があった?
・磐田市にトンボの楽園があった!
・湖?川?海?浜名湖の正体を探れ!
・世界遺産「三保松原」は江戸時代に「島」から「半島」になった!

などなど静岡のダイナミックな自然のポイントを解説。

Part.2 静岡を駆け抜ける鉄道網

・静岡県の鉄道の歴史は沼津市内の貨物線から始まった
・かつては「東海道本線」だった由緒正しき(?)御殿場線
・JRと私鉄が一体となって形成する伊豆半島東海岸の鉄道ルート
・意外なエピソードを秘めた東海道本線・静岡鉄道の並行区間
・「政令指定都市・静岡」の市内も走る山岳鉄道、大井川鐵道井川線
・軍事上の要請が背景にある天竜浜名湖鉄道(旧国鉄二俣線)のルート

などなど静岡ならではの鉄道事情を網羅。

Part.3 静岡で動いた歴史の瞬間

・静岡最古の古代人は愛鷹山付近にいた!
・日本考古学の聖地・登呂遺跡
・日本書紀に見る静岡とヤマトタケルの伝説
・源頼朝も流された流刑地伊豆
・下田が開港の舞台になったのはなぜか
・江戸城よりも大きかった駿府城天守台
・日本にたった一つしかない形の城・田中城
・家康の遺体は日光ではなく久能山にある?
・徳川慶喜と渋沢栄一の意外なつながり

などなど、激動の静岡の歴史に興味を惹きつける。

Part.4 静岡で育まれた産業や文化

・模型の首都!静岡が生まれたワケ
・バイクに楽器。浜松のものづくりは綿花の栽培から
・ボールは友達!サッカー王国しずおか
・富士山麓の湧水が育てた製紙業
・月ではなく富士山に帰ってしまう「かぐや姫」
・仏教界のスーパースター空海が静岡に残した伝説

…などなど静岡の発展の歩みをたどる。

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