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牧之原の茶園開墾の始まり

1867(慶応3)年、15代将軍・徳川慶喜は大政奉還により駿府(今の静岡市)に隠居し、護衛のために同行していた家臣は、版籍奉還で任務を解かれ失職してしまいます。

そこで1869(明治2)年、中條金之助景昭(ちゅうじょうきんのすけかげあき)を隊長とした約300人の士族は、新たな就業の場として、荒れ野原だった牧之原台地に着目します。

当時、欧米では茶の需要が急激に伸びている時期でもあり、 明治政府も茶の輸出に力を入れ始めた矢先でした。このような情勢の中、 中條と関わりのあった勝海舟(かつかいしゅう)の勧めもあり、牧之原の気候や土質が栽培に適している茶を中心とした開墾がスタートしたのです。

牧之原の茶園開墾に尽力した入植者

また、同時期の1870(明治3)年、大井川の川越し制度が廃止され、約1300人の川越え人足(にんそく)が失職するという事態が起こります。

その救済のため、世話役の仲田源蔵(なかたげんぞう)は懇願活動を続け、結果、33人の川越人足と家族が牧之原南部への入植を認められました。こうして、牧之原に入植した士族と川越人足は、苦労しながら開墾に尽力したのです。

牧之原の大茶園の発展

その後、入植者の茶園造成に刺激を受けた農民たちも当地に進出し始めます。生活の激変や慣れない労働に加え、茶価格の低迷による不況にも苦しめられ、士族が徐々に牧之原を去る一方で、農民たちは茶園面積を着実に増やし、経営規模を拡大して牧之原茶業の主役を果たすようになっていきました。

1879(明治12)年には蓬莱橋(ほうらいばし)が完成し、牧之原開拓地と島田の往来が容易になり、さらに1889(明治22)年には東海道線が開通。金谷・菊 川・掛川駅から鉄道輸送での出荷が可能になったことをきっかけに、牧之原のお茶は全国に広まっていったのです。

牧之原の茶畑開拓地と島田をつないだ蓬莱橋

明治初期、牧之原開拓地と対岸の島田の往来には、大井川を小舟で渡るという手段しかなく、大変危険な状況でした。

そこで島田宿の開墾人総代裁達が、時の県令(知事)に架橋の願いを出し、1879(明治12)年に蓬莱橋が完成。全長897m、幅2.7mの「世界一長い木造歩道橋」として、今では全国的にも有名な観光名所となっています。

牧之原の茶畑開拓地と島田をつないだ蓬莱橋

蓬莱橋

住所
静岡県島田市南2丁目22-14
交通
JR東海道本線島田駅から徒歩20分
料金
通行料(1往復)=大人100円、小人10円/(料金所は8:30~17:00、時間外は料金箱へ通行料投入し通行可)

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Part.1 地図で読み解く静岡の大地

・富士山が標高日本一、駿河湾が深海日本一になった理由
・南から来た、火山の贈り物、伊豆半島ジオパーク
・交通の難所「大崩海岸」は海底噴火によって作られた!
・「日本三大人工美林」数えられる天竜の杉林は川の氾濫に関係があった?
・磐田市にトンボの楽園があった!
・湖?川?海?浜名湖の正体を探れ!
・世界遺産「三保松原」は江戸時代に「島」から「半島」になった!

などなど静岡のダイナミックな自然のポイントを解説。

Part.2 静岡を駆け抜ける鉄道網

・静岡県の鉄道の歴史は沼津市内の貨物線から始まった
・かつては「東海道本線」だった由緒正しき(?)御殿場線
・JRと私鉄が一体となって形成する伊豆半島東海岸の鉄道ルート
・意外なエピソードを秘めた東海道本線・静岡鉄道の並行区間
・「政令指定都市・静岡」の市内も走る山岳鉄道、大井川鐵道井川線
・軍事上の要請が背景にある天竜浜名湖鉄道(旧国鉄二俣線)のルート

などなど静岡ならではの鉄道事情を網羅。

Part.3 静岡で動いた歴史の瞬間

・静岡最古の古代人は愛鷹山付近にいた!
・日本考古学の聖地・登呂遺跡
・日本書紀に見る静岡とヤマトタケルの伝説
・源頼朝も流された流刑地伊豆
・下田が開港の舞台になったのはなぜか
・江戸城よりも大きかった駿府城天守台
・日本にたった一つしかない形の城・田中城
・家康の遺体は日光ではなく久能山にある?
・徳川慶喜と渋沢栄一の意外なつながり

などなど、激動の静岡の歴史に興味を惹きつける。

Part.4 静岡で育まれた産業や文化

・模型の首都!静岡が生まれたワケ
・バイクに楽器。浜松のものづくりは綿花の栽培から
・ボールは友達!サッカー王国しずおか
・富士山麓の湧水が育てた製紙業
・月ではなく富士山に帰ってしまう「かぐや姫」
・仏教界のスーパースター空海が静岡に残した伝説

…などなど静岡の発展の歩みをたどる。

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