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卑弥呼の墓は邪馬台国にあるとは限らない!?

これまでの説では、邪馬台国畿内説の立場からは奈良県桜井市にある箸墓(はしはか)古墳、同じく九州説の立場からは福岡県久留米市の祇園山古墳などがその有力な候補地とされてきました。
ところが、近年、新たな説が提唱されるようになってきました。それは、共立された女王である卑弥呼は、彼女を共立した国々の中のひとつの国の王であり、都とした邪馬台国ではなく別のどこかの国の出身である可能性もあるのではないか、つまり卑弥呼の墓は必ずしも邪馬台国にあるとは限らないのではないか?という新しい説です。

卑弥呼の墓は伊都国にあるという新説

ここで、カギを握るのが、同じく『魏志倭人伝』に記されている「伊都国(いとこく)」です。伊都国は、現在の福岡県糸島市にあったと考えられている国で、『魏志倭人伝』では、伊都国には「世々王有り」とあり、歴代の王が存在し、倭の国々の中心的存在であったことがわかります。また、伊都国は女王国に属しており、「一大卒(周辺の国々を監視する機関)」が伊都国に常駐していました。
魏の使者が往来時には必ず伊都国にとどまり、伊都国の港で所持品検査や女王宛ての文書などを検閲していた、といった、伊都国が非常に重要な役割をもっていたこと、伊都国と邪馬台国や女王・卑弥呼とに密接な関係があったと解される記述があります。

そうしたことから、女王・卑弥呼の出身は伊都国であり、卑弥呼は亡くなったあと、伊都国の地に戻され埋葬されたのではないかとする新しい説が提唱されるようになったのです。仮に伊都国に卑弥呼の墓があったと想定した場合、もっとも有力な候補になるのが糸島市有田にある平原王墓です。

卑弥呼の墓は平原王墓といわれる理由

平原王墓は、弥生時代の終わり頃の伊都国王の墓と考えられている墳墓です。この王墓は、周囲を溝で囲んだ、大きさ東西13m×9.5m、方形の墳丘墓であり、割竹形木棺を埋葬主体としています。

副葬品として、日本最大の内行花文鏡(ないこうかもんきょう)(径46.5cm)5面を含む総数40面分という当代一の枚数となる銅鏡が割られた状態で出土しています。こうしたたくさんの銅鏡類のほかにも、素環頭大刀(そかんとうのたち)1点、ガラスや瑪瑙(めのう)で作られた色鮮やかな装身具類が豊富に出土するなど、弥生時代の墳墓としては破格ともいえる質・量の副葬品が確認されています。

出土品の中、武器類が少なく装身具類が数多く副葬されていること(のちに出土したガラス製品の中に「耳璫(じとう)(ピアス)」という女性特有の耳飾りが含まれていることが判明)などから、この墓の被葬者(埋葬された人物)は女性、すなわち女王墓であるとも推定されています。またこの墓の周辺には、墳丘から15mほど離れた位置に大柱が建っており、墓の主軸とこの大柱を結んだ方角の延長線上には朝日が昇る日向峠があることから、この王墓の被葬者と太陽信仰との関連も指摘されています。まさに「日の巫女=卑弥呼?」の墓と解釈しても過言ではありません。

卑弥呼の墓が平原王墓とするには年代的不合がある

ですが、現在のところ、考古学の立場から想定されている平原王墓の築造年代は、西暦200年頃というのが定説です。いっぽう、『魏志倭人伝』に記された卑弥呼の死は、西暦248年。50年近い年代の開きがあるのが現状であり、平原王墓を卑弥呼の墓とするには、この築造年代の問題をクリアしなければなりません。

そうした課題があるにもかかわらず、この王墓が卑弥呼の墓でないかとの見方がなされる背景には、平原王墓の被葬者が卑弥呼の姿を彷彿とさせる女王であり、国内最大の内行花文鏡をはじめとした鏡群など、現在、発見されているわが国の弥生時代の墳墓の中では、比肩するものがないほどもっとも豪華絢爛な副葬品を有した墓であることに起因しているのでしょう。

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