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福岡の相島で一行を驚嘆させた豪勢なおもてなし

島人の言い伝えでは、通信使一行を接待した客館は北東の山の頂上といわれていましたが、岩国徴古館に保管されていた絵図には、客館は島の南西部に描かれていたことから新宮町教育委員会が発掘した結果、東西65間(約117m)、南北70間(約126m)、およそ4500坪、畳の数931畳半と判明しました。
驚きなのは、この広大な敷地に建てられていた約40棟の客館は、使節団が帰国すると取り壊され、来日の度に組み立てられていたといいます。基本母材はリサイクルとして毎回使用されていました。さらに、京都や大坂から金銀細工で装飾された食器を取り寄せ、一日の食料は卵2000個、鶏300羽、鯛は鞆の浦より600匹、サザエは小倉、伊勢海老は大島、豚は長崎から買い付けるなどして接待しました。

朝鮮通信使の一員だった申維翰(しんゆはん)は著書『海游録』の中で「経費の鉅万(きょまん)なること、その国力の富饒なることが知られる」と驚嘆し、また同情しています。また、宝暦13(1763)年に書記をしていた金仁謙は、『日東壮遊歌』で「この島の村落は極めて小さいが、館所は壮麗で、絹の幔幕(まんまく)をはりめぐらし、緋毛氈(ひもうせん)を敷き、寝房、渡り廊下、浴室、厠に至るまで、すべて精巧な造りだ」と記していました。

一方で福岡の相島に住む島民の反応は…

周囲6kmほどの小さな島に約2000人が滞在するため、当然ながら島民は一日も早く島を離れて欲しいと思っていたようで、庄屋であった長三郎の記録『官人来朝覚書』には「良き風が早く吹くよう神楽を奉納し神に願った」と記されているから傑作です。

平成29(2017)年10月、この苦難の数々を記録した黒田藩の文書15点を含む333点の史料が、ユネスコの「世界の記憶」に日韓の共同申請で登録されました。国賓を丁重にもてなした相島の島民と周りの領民の奮闘が報われた瞬間かもしれません。

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