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第2次元寇(弘安の役)で神風により鷹島沖に沈んだ元軍

第2次元寇の弘安の役では、高麗軍を主力とする東路(とうろ)軍約4万人と、旧南宋の江南(こうなん)軍約10万人の二手に分かれて、日本に侵攻してきます。一方、文永の役で戦い方を学んだ日本軍は、博多湾沿岸に防塁を設置。弘安4(1281)年5月、先行して攻撃を仕掛けてきた東路軍の上陸を阻止しました。

一時壱岐に引き上げた同軍は、同年7月に江南軍と平戸沖で合流。計14万人、約4400隻からなる元の大艦隊が、博多を攻撃するべく鷹島に移動します。総攻撃を前に鷹島沖に停泊していたところ、7月30日夜に激しい暴風雨が襲います。元軍は壊滅的な打撃を受け、一夜にして多くの船が海に沈んでいきました。その後、日本軍は生き残った元軍の掃討戦を行い、完勝します。

その様子は、肥後の御家人の竹崎季長(すえなが)が残した『蒙古襲来絵詞』下巻に描かれています。また、当時神風といわれたこの暴風雨は、屋久島付近から九州西海岸を北上し、鷹島付近を通過した大型台風と考えられています(諸説あり)。

鷹島神崎遺跡の調査で解明!?神風の謎

弘安の役から約700年後の昭和55(1980)年、東海大学を中心とする研究者が3年間の水中考古学の調査を行い、陶磁器やいかり、石弾などを多数採取しました。

また、調査以前に島民が発見した青銅製の印章には、元が使っていたパスパ文字で「管軍総把印(かんぐんそうはいん)」と刻まれていることが判明。こうした調査により、鷹島沖の海底に弘安の役関連の遺跡が存在することが明らかになり、鷹島海底遺跡として周知されました。

以後、付近の海底調査が続けられ、1994年にはいかりが4つ並んで出土。一説には、8mの間に4つのいかりが連続して並ぶのは、これらが1隻の船から投錨されたことを示しており、1つのいかりでは止まらなかったため、続けて投下したのではと推測されます。

周辺ではほかにもいかりが見つかっており、その位置関係から台風の進路によって風向きが南から南東、東へと変わる時間帯に次々と船が沈んだと考えられます(諸説あり)。2001年には、船の隔壁板やマストステップ、外板なども見つかっています。

鷹島神崎遺跡で元の軍船を発見!

さらに2011年、琉球大学の研究グループが、神崎免米ノ内鼻の沖合約200m、水深20〜25mの海底を約1m掘り下げたところで元の軍船を発見しました。船底の背骨に当たる「竜骨」と呼ばれる部分は、幅が約50㎝、長さは約12m。そこから推測される船の全長は、約27mになります。翌年3月27日、文部科学省はこの海域を「鷹島神崎遺跡」として、海底遺跡では日本初となる国史跡に指定しました。

鷹島神崎遺跡からは、元軍の鉄冑や刀などの武具や中国製の陶磁器などの遺物が出土しています。調査は現在も続いており、これまでに4000点以上の遺物が引き揚げられました。今後の研究によって、元寇と神風の新たな真実の解明が期待されます。

鷹島海底遺跡の分布

鷹島海底遺跡の分布
松浦市教育委員会文化課の資料を元に作成

伊万里湾に浮かぶ鷹島の南岸一帯に広がる鷹島海底遺跡。海底に元軍のさまざまな遺物が眠ります。

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・火山活動が作ったダイナミックな地形! 島原半島ジオパークとは?
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・「国境の島」対馬の特殊な生態系
・水中調査で解明! 横島沈没の謎
・国内初のティラノサウルス発掘! 長崎は白亜紀の化石の宝庫だった
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・新幹線開業に向け再開発中! 長崎駅の今昔
・新旧の車両が行き交う長崎電気軌道
・小島が国際空港に! 長崎空港は世界初の海上空港
・長崎が生んだ画期的な交通手段! 坂を上る日本初のエレベーターとは!?
・東洋一と称された西海橋の誕生
・進化を遂げた長崎街道の日見峠
・松浦鉄道には3つの日本一がある!?
・当時の面影が残る雲仙鉄道の廃線跡
・島原鉄道は奇跡のローカル線!?
・吉田初三郎が描いた 長崎の鳥瞰図

Part.3 長崎で動いた歴史の瞬間

・東アジアの一大交流拠点だった! 原の辻遺跡が語る古代の交易
・“神風”の謎が海底遺跡調査で判明!? 鷹島神崎遺跡から見る蒙古襲来
・ポルトガルが平戸で貿易を始めたワケ
・なぜ長崎は教会領になったのか
・町民が主役!? 特例だらけの貿易都市長崎の誕生
・ラクダを飼っていた!? オランダ人の出島生活の実態とは
・龍馬を襲った「いろは丸事件」の真実
・倒幕の裏には大村藩士の活躍があった
・人口約4000人の村が一変!? 寒村だった佐世保が大変貌したワケ

…など

Part.4 長崎で生まれた産業や文化

・印刷も写真も通信も長崎発祥!? 長崎は“日本初”を量産していた!
・世界遺産に登録された日本造船業の原点! 三菱長崎造船所のあゆみ
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