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瀬戸大橋を開通することになったきっかけ

本州と四国に橋を架ける構想を初めて口にしたのは、香川県議会議員の大久保諶之丞(おおくぼじんのじょう)だといわれています。1889(明治22)年5月23日、讃岐(さぬき)鉄道の丸亀(まるがめ)~多度津(たどつ)~琴平(ことひら)線の開通祝賀会で、その構想を話したといいます。列席者たちは、海の上に橋を架けるという、そんな夢のような話にさぞ驚いたことでしょう。しかし1955(昭和30)年5月、国鉄宇高(うこう)連絡船紫雲丸(しうんまる)の海難事故が発生。橋の架設の必要性が改めて考えられることとなりました。

瀬戸大橋の開通に向けてルートと橋の構造についての調査を開始

1959(昭和34)年4月から建設省が道路橋の本格調査を開始します。五つのルートが候補となり調査が進められました。また翌年には、日本国有鉄道も5ルートの内の3ルートを道路・鉄道併用橋として計画、調査を進めることとなりました。調査はその後、日本道路公団と日本鉄道建設公団が引き継ぎますが、工事が技術的に困難で工事費も高くなるとのことから、調査途中の段階で二つのルートは除外されます。1977(昭和52)年11月4日に、本州四国連絡橋の当面早期完成を図る1ルートとして児島(こじま)・坂出ルートが選ばれ、道路・鉄道併用橋とすることが決定しました。

瀬戸大橋が開通!世界最大級の橋梁はギネス世界記録にも認定された

1978(昭和53)年10月10日に児島・坂出ルートが着工します。約9年6カ月の工期を経て、1988(昭和63)年4月10日に瀬戸中央自動車道(早島IC~坂出IC間)が完成し、本四備讃線が開業しました。初めて四国と本州が陸路で結ばれた瞬間です。瀬戸大橋は開通当時、道路・鉄道併用橋としては世界最長で「世界一長い道路・鉄道併用橋」としてギネス世界記録にも認定されました。ちなみに本州と櫃石島(ひついしじま)との中間に香川県との県境があります。

瀬戸大橋の6橋のそれぞれの特徴は?

瀬戸大橋の6橋は、次のとおりです。鷲羽山と櫃石島を結ぶ、下津井(しもつい)瀬戸大橋は吊橋。櫃石島、岩黒島、羽佐島を結ぶ双子橋の櫃石島橋と岩黒島橋は、主塔の形状が日本的な鼓や兜をイメージした斜張橋。与島橋(よしまばし)は羽佐島と与島を結び、平面線形に最少曲線半径1,300mの曲線を含んだトラス橋。備讃(びさん)瀬戸航路をまたぎ、与島と番の州を結ぶ北備讃瀬戸大橋(きたびさんせとおおはし)と南備讃瀬戸大橋(みなみびさんせとおおはし)は連続した吊橋で、道路・鉄道併用橋としては世界最大級を誇ります。そのどれもが当時の技術の粋を集めた最先端の橋でした。

瀬戸内海に浮かぶ島々を6橋で結び、本州と四国をつなぎます。吊橋、斜張橋、トラス橋など、世界最大級の橋梁が連なります。

瀬戸大橋で注目すべき点は「道路・鉄道併用の2層構造」

瀬戸大橋の特筆すべき点として、道路・鉄道併用という構造が挙げられます。車や列車の重量、温度変化による鉄の伸縮などの影響を受けることにより、南備讃瀬戸大橋では、橋の中央部で最大4.9m下がり2.4m上がる、合わせて7.3mも変化することが確認されています。たわみやすい長大な橋上の列車走行性については、長年にわたって調査研究が進められてきました。緩衝桁軌道伸縮装置をはじめとする技術開発などにより、吊橋全体が生物のように動くよう精緻に設計。走行試験では最大約1000tの列車を走らせ、安定性を確認しました。実際の列車走行では高速にもかかわらず、ほとんど上下の変化は体感しないというから驚きです。

瀬戸大橋を走る多彩な列車たち

列車が走る瀬戸大橋線は、岡山駅(岡山県)~宇多津(うたづ)駅(香川県)区間のことを指します。瀬戸大橋を列車で走る時間は約10分。これだけの時間、海の上を列車で渡れるのは、日本唯一です。

路線は西日本旅客鉄道(JR西日本)と四国旅客鉄道(JR四国)の管轄。岡山駅~高松駅を55分前後で結ぶ快速「マリンライナー」、岡山駅から宇多津駅を通り松山駅へ向かう特急「しおかぜ」、高知駅へ向かう特急「南風(なんぷう)」、「南風」と併結されて岡山駅から高松駅を通り、徳島駅へと結ぶ「うずしお」、東京駅~高松駅間の寝台特急「サンライズ瀬戸」他が運転されており、観光列車などの運行も多くあります。

瀬戸大橋は開通30周年を迎えた(2018年)

2018(平成30)年に開通30周年を迎えた瀬戸大橋。吊橋技術のシンボルとして2017(平成29)年には「日本の20世紀遺産」に認定されています。瀬戸内海の多島美を望む日中の景色はもちろん、毎週土曜日と特定の日には、ライトアップされた美しい夜の橋を楽しむことができます(ライトアップ実施日は変更の可能性あり)。

【番外編】四つの目をもつトンネル

鷲羽山トンネルは、瀬戸中央自動車道・下津井瀬戸大橋の本州側に位置しています。上段に2本の道路、下段に2本の鉄道路線があり、正面から見ると上下2段双設となっています、非常に珍しい四つ目のトンネルです。これは日本のトンネル技術の粋を集めた世界初の試みでした。当初は山を切り崩す方法が計画されていましたが、国立公園内に位置することから、この方法に変更されます。景観を損なわないトンネルが完成したのです。

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Part.1 地図で読み解く岡山の大地

・瀬戸内海はどうやってできた?岡山県の成り立ち
・美作はなぜ西日本有数の温泉地なのか
・岡山県指定天然記念物井倉洞はどうやってできた?
・山から貝の化石がとれる不思議
・その大きさは世界2位! 児島湖はなぜ造られたのか?
・「晴れの国岡山」は「天文王国おかやま」だった!
・笠岡市がカブトガニ有数の生息地になった理由

…などなど岡山のダイナミックな自然のポイントを解説。

Part.2 岡山を走る充実の交通網

・瀬戸大橋が鉄道と併用できた理由
・西日本唯一の臨海鉄道線「水島臨海鉄道」の変遷を知る
・わずか16年で廃線になった、幻の三蟠鉄道
・津山扇形機関車庫から見る、岡山県の鉄道の歴史
・山陽新幹線は岡山発が多い?交通の要所・岡山駅のスゴさ
・日本で最も短い路面電車が地元で愛される理由

…などなど岡山ならではの鉄道事情を網羅。

Part.3 岡山で動いた歴史の瞬間

・伝説の城「鬼ノ城」は古代日本の防衛ラインだった
・巨大古墳群からひもとく吉備国と大和朝廷の関係
・戦国大名・宇喜多直家は、邑久郡の小領主だった
・難攻不落の備中高松城を、血を流さずに攻め落とせ!
・宇喜多秀家が基礎を築き池田家が整備した城下町
・岡山藩藩主の憩いの場として築かれた大庭園・後楽園

…などなど、激動の岡山の歴史に興味を惹きつける。

Part.4 岡山で生まれた産業や文化

・古墳時代から受け継がれる備前焼
・岡山県の名産品・白桃は、なぜこんなにおいしいのか?
・蒜山原野の開拓とジャージー牛導入の歴史
・養蚕・イグサ・綿・デニム…。岡山が誇る繊維業
・瀬戸内工業地域・水島コンビナートの誕生秘話
・倉敷市が一大観光地に成長した理由
・刀工集団・長船派は、どのようにして生まれたのか

…などなど岡山の発展の歩みをたどる。

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