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清水白桃は栽培の試行錯誤のすえ誕生

こうして始まった桃栽培でしたが、天津水蜜と上海水蜜は非常に繊細で育てにくい品種でした。何の対策もせず栽培すると、9割以上が虫や病気にやられて収穫できません。少しでも収穫量を増やすため、殺虫剤や殺菌剤、さらには噴霧器や剪定ばさみなどを発明した桃農家も現れますが、せっかく噴霧した殺虫剤や殺菌剤も、雨が降れば流れてしまいます。
桃を虫と病気から守るために考え出されたのが、柿渋を塗って撥水性を高めた薄い紙袋に桃を入れ、い草で袋の口を縛る「袋掛け」という方法です。この技術が確立された1882(明治15)年ごろから、岡山県内では桃農家が増加。1901(明治34)年には岡山市清水(現在の岡山市北区佐山)で上海水蜜の畑から新たに生まれた品種を発見。後に「清水白桃」と命名され、岡山の名産として定着しました。

岡山の白桃栽培と特徴

桃は濃い赤色というイメージを持つ人が多くいますが、岡山の桃は白です。実が小さいうちに袋を掛け、日光を当てずに育てるので、美しく真っ白に成長するのです。また桃の実を直射日光に当てると果実内の温度が上がりますが、上がりすぎると実が傷んでしまいます。桃は果実内の温度上昇を防ごうと、水分を果実全体に行き渡らせるための繊維を発達させますが、これが筋張った口当たりとなり食感を悪くしてしまします。また赤い桃は一般的に硬くカリカリし、桃特有の香りも少なくなることがあります。岡山の桃は袋掛けをすることで、とろけるような食感と、ふくよかな桃特有の香りが強くなるのです。

清水白桃の栽培は肥沃でない土壌が適している

現在岡山県内で栽培されている桃は、ほぼ全て白桃です。多くの品種が栽培されていますが、最も収穫量が多いのが白桃の最高峰といわれる清水白桃です。岡山市・倉敷市・赤磐市(あかいわし)など、県南部を中心に栽培されています。実は岡山の土壌は、概して肥沃(ひよく)ではありません。肥沃な土地に植えられた樹木は、生き物が本能として持つ「子孫を残す」という使命を果たそうとせず、次世代に命をつなぐ「果実」を育てるのではなく、自らをより大きくする方向に光合成した栄養分を使ってしまうのです。岡山の肥沃でない土壌は、おいしい桃栽培に一役買っているのです。
また岡山の桃農家は、樹1本1本の葉の大きさや色、幹の色艶を観察し、肥料や剪定方法を変えていきます。その姿はまるで樹と会話をしているようです。わが子に向けるような愛情あふれる日々の観察、繊細で手間を惜しまない管理作業によって、大変育てにくいが味・香りともに最高級である「清水白桃」が生産されているのです。

清水白桃に続く桃の栽培を目指す岡山県

農業人口の減少や高齢化への対策が全国で課題となっていますが、岡山県の桃栽培面積は増加に転じています。岡山県では新規就農者確保のために、2019年には総社市(そうじゃし)に「ももハイブリッドメガ生産団地」を造成。さらなる生産拡大を図っています。

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Part.1 地図で読み解く岡山の大地

・瀬戸内海はどうやってできた?岡山県の成り立ち
・美作はなぜ西日本有数の温泉地なのか
・岡山県指定天然記念物井倉洞はどうやってできた?
・山から貝の化石がとれる不思議
・その大きさは世界2位! 児島湖はなぜ造られたのか?
・「晴れの国岡山」は「天文王国おかやま」だった!
・笠岡市がカブトガニ有数の生息地になった理由

…などなど岡山のダイナミックな自然のポイントを解説。

Part.2 岡山を走る充実の交通網

・瀬戸大橋が鉄道と併用できた理由
・西日本唯一の臨海鉄道線「水島臨海鉄道」の変遷を知る
・わずか16年で廃線になった、幻の三蟠鉄道
・津山扇形機関車庫から見る、岡山県の鉄道の歴史
・山陽新幹線は岡山発が多い?交通の要所・岡山駅のスゴさ
・日本で最も短い路面電車が地元で愛される理由

…などなど岡山ならではの鉄道事情を網羅。

Part.3 岡山で動いた歴史の瞬間

・伝説の城「鬼ノ城」は古代日本の防衛ラインだった
・巨大古墳群からひもとく吉備国と大和朝廷の関係
・戦国大名・宇喜多直家は、邑久郡の小領主だった
・難攻不落の備中高松城を、血を流さずに攻め落とせ!
・宇喜多秀家が基礎を築き池田家が整備した城下町
・岡山藩藩主の憩いの場として築かれた大庭園・後楽園

…などなど、激動の岡山の歴史に興味を惹きつける。

Part.4 岡山で生まれた産業や文化

・古墳時代から受け継がれる備前焼
・岡山県の名産品・白桃は、なぜこんなにおいしいのか?
・蒜山原野の開拓とジャージー牛導入の歴史
・養蚕・イグサ・綿・デニム…。岡山が誇る繊維業
・瀬戸内工業地域・水島コンビナートの誕生秘話
・倉敷市が一大観光地に成長した理由
・刀工集団・長船派は、どのようにして生まれたのか

…などなど岡山の発展の歩みをたどる。

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