フリーワード検索

ジャンルから探す

トップ > カルチャー >  北陸 > 石川県 >

和倉温泉の歴史:初代加賀藩主前田利長が利用し評判に!

当時の和倉は入り江にあり、「涌浦(わくうら)」と呼ばれていました。慶長16(1611)年、加賀藩初代藩主前田利長が腫れ物で困り、「涌浦の湯」を取り寄せて治療したことから湯の評判が一気に広まりました。しかし、潮が退いているときでないと湯を利用することができなかったため、湯治の湯として利用しやすいように2代利常が湯島(海から湧出する温泉を汲みやすくするための人工島)を整備させてからは、和倉には多くの客が訪れるようになりました。

“湧浦湧浦と 家なら七つ 嶋に湯が出にゃ 誰行こや”と和倉について唄った里歌がありますが、「温泉がないのであれば、家が7軒しかない和倉に誰が行くだろう」とやっかみや皮肉を込めて歌われるほどの人気となりました。歌のなかにもあるように、かつての和倉は半農半漁のわずか7軒からなる集落でした。本来ならにぎわうこともないこの土地に多くの人を呼び寄せた湯脈の発見は、それほど劇的なものだったといえます。

和倉温泉の歴史:「涌浦」から「和倉」へ

延宝2(1674)年、加賀藩は書き間違いを防ぐため「涌浦」を「和倉」と改めました。廃藩置県の際、村人の尽力によって和倉の湯権は藩から民へと渡りました。さらに湯島までの埋め立てが進み、ついに陸続きとなりました。

また、ドイツで開催された万国鉱泉博覧会で和倉の湯が三等を受賞するなど、和倉温泉はますます発展を遂げていきました。

和倉温泉の効能

和倉温泉は“海の温泉”が湧き出ており、豊富な塩分が特徴です。傷や皮膚病に作用する殺菌効果、汗の蒸発を抑えて湯冷めを防ぐ保温効果、塩分が毛穴を引き締めて肌をなめらかにする美肌効果が三大効能として挙げられます。これだけでなく、リウマチ、痛風、神経痛、慢性婦人疾患、アトピーなどに効果があり、胃腸痛や貧血症、肥肝症などに飲用効果があるとされています。

和倉温泉を牽引!加賀屋はプロが選ぶ日本一の旅館

7軒だけの集落だった和倉は、今は全国的にも高い知名度を誇る温泉地となりました。なかでも「加賀屋」の存在は別格で、「プロが選ぶ日本のホテル・旅館100選」において36年連続総合1位を獲得している有名宿です。

日本一の旅館として和倉温泉を牽引する加賀屋には、亡き先代女将・小田孝(たか)氏の信条が息づいています。客に対して「ありません」や「できません」とは絶対に口にせず、要望に対しては必ず最善を尽くすことを心掛けており、加賀屋で出していない酒を飲みたいという客がいれば、タクシーを使って買いに走らせた、といったエピソードが多く残っています。

今では、女将が客室に挨拶まわりをする光景が珍しくありませんが、この女将によるお部屋回りの挨拶も孝氏が最初に取り入れたといわれます。客室では座ったままの姿勢で膝を擦るように移動する「にじり膝」が習慣となっていた孝氏は、晩年は足を痛めて車いすでの生活となったようですが、それほどまでにホスピタリティに心身を捧げていたことは明らかです。こういった孝氏のおもてなし精神は今日まで脈々と受け継がれ、どうすれば客に喜んでもらえるかを客室係一人ひとりが自ら考えて実践しています。

2010年には台湾へ進出し、「日勝生加賀屋」をオープンさせました。現地での人気はもちろん、本家で宿泊してみたいという人も増え、能登空港には和倉での宿泊を目当てに訪れる台湾からのチャーター機が往来しています。

和倉温泉を牽引!加賀屋はプロが選ぶ日本一の旅館

明治39(1906)年、小田與吉郎氏によって創業。2020年、「プロが選ぶ日本のホテル・旅館100選」で39回目の総合1位を獲得しました。

『石川のトリセツ』好評発売中!

地形、交通、歴史、産業…あらゆる角度から石川県を分析!
石川県の地形や地質、歴史、文化、産業など多彩な特徴と魅力を、地図を読み解きながら紹介するマップエンターテインメント。石川の知っているようで知られていない意外な素顔に迫ります。地図を片手に、思わず行って確かめてみたくなる情報満載!

Part.1 地図で読み解く石川の大地

・石川県は天気予報が難しい?能登と加賀の地形と天気
・伊能忠敬を苦しめた外浦・内浦
・珠洲岬はなぜパワースポット?
・霊峰白山と「しらやまさん」
・金沢は街そのものが博物館
・能登の歴史的遺産「千枚田」
・金沢の用水が果たした役割
・坂を上ると世界が変わる?魔性が宿る金沢の坂
・市内に25ヵ所以上の石切り場が存在!小松は日本の宝玉の産地

Part.2 石川を走る交通網のアレコレ

・開業後、石川はどう変わったか?北陸新幹線のココがすごい!
・活発化する海の玄関口、金沢港
・官民共用で発展する小松飛行場
・路面電車「青電車」が消えた理由
・鉄道交通の要「金沢駅」の誕生秘話
・粟崎へ人々を運んだ浅野川電鉄
・石川の伝統工芸が随所にあしらわれた、能登を走る2つの観光列車
・石川県唯一の私鉄、北陸鉄道の歴史をふりかえる

Part.3 石川の歴史を深読み!

・実は3代利常が名君だった!
・前田家の運命を決めた末森城
・利家の妻が有名なのはなぜ?賢妻としてまつが残した功績
・地名の由来はお坊さん?金沢モダンを象徴した香林坊
・縁結びの聖地、恋路海岸に伝わる悲恋伝説
・城郭建築の美を感じる金沢城
・芭蕉や与謝野晶子が愛した加賀四湯
・江戸時代から続く近江町市場
・日本在来馬「能登馬」とは?
・「小京都」と呼ばれたくない!金沢で受け継がれる武家文化
・那谷寺は胎内くぐりの聖地だった
・平家の末裔と2つの時国家
・倶利伽羅峠と安宅関で辿る義経の悲劇
・有名古墳&遺跡はココに注目

…etc.

Part.4 石川で育まれた文化や産業

・六の数字に込められた意味とは?日本三名園「兼六園」は理想の庭
・人間国宝の数が日本一!石川県に息づく伝統工芸の土壌
・古九谷に込めた前田家の対抗心
・あの国宝は実は下絵だった!? 等伯の最高傑作『松林図屏風』
・三文豪が愛した犀川と浅野川
・大伴家持の能登巡行と万葉集
・偉人を輩出した第四高等学校
・祭りのない金沢、祭り天国能登
・和倉温泉と日本一の宿「加賀屋」
・県民の寿司愛と豊富な海の幸
・北前船で発展した大野醤油

…etc.

『石川のトリセツ』を購入するならこちら

リンク先での売上の一部が当サイトに還元される場合があります。
1 2

※掲載の情報は取材時点のものです。お出かけの際は事前に最新の情報をご確認ください。

まっぷるトラベルガイド編集部は、旅やおでかけが大好きな人間が集まっています。
皆様に旅やおでかけの楽しさ、その土地ならではの魅力をお伝えすることを目標に、スタッフ自らの体験や、旅のプロ・専門家への取材をもとにしたおすすめスポットや旅行プラン、旅行の予備知識など信頼できる情報を発信してまいります!

エリア

トップ > カルチャー >  北陸 > 石川県 >

この記事に関連するタグ