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【象潟九十九島形成の歴史】鳥海山の山体崩壊

九十九島をつくった山体崩壊は、約2500年前(紀元前466年頃)に起こりました。

鳥海山は東鳥海と西鳥海に大別されますが、このときに崩れたのは東鳥海。崩壊前の東鳥海には、標高2400〜2500mの円錐形の成層(せいそう)火山があったと考えられています。

この火山が、山頂付近から北へと大きく崩れ、おびただしい量の岩塊や土砂が岩屑(がんせつ)なだれとなり日本海にまで流れ込みました。

現在、新山(しんざん)や七高山(しちこうさん)などの東鳥海のピークからは、このときの山体崩壊でできた「東鳥海馬蹄形カルデラ」を見ることができます。なお、山体崩壊の原因は、水蒸気爆発説や地震説などの諸説がありはっきりしていません。

【象潟九十九島形成の歴史】象潟が日本海と隔たれ潟湖になる

岩屑なだれが流入した象潟は、その後、土砂が河口付近に堆積してできた砂州(さす)によって日本海と隔てられ、東西約1㎞、南北約2㎞の浅い汽水域が広がる「潟湖(せきこ)」となりました。

その結果、溶岩の岩塊でできた流れ山が、潟湖に浮かぶ島のように点在する地形が出現したのです。やがて、流れ山は松などの木々に覆われ、松島と並び称される名勝として知られるようになります。

象潟と歌人・俳人

平安時代には僧侶で歌人の西行(さいぎょう)も訪れ、「象潟の桜は波に埋もれて 花の上漕ぐ海人(あま)の釣り船」と詠みました。

また象潟は、江戸時代、俳聖・松尾芭蕉(まつおばしょう)が訪れた最北の地としても知られます。芭蕉はこのとき、「象潟や雨に西施(せいし)がねぶの花」(象潟の雨に濡れたねむの花は、傾国の美女、西施が憂いに沈んで眠っているようだ)と詠み、雨にけぶる象潟のものさびしい美しさを表現しました。

象潟地震と現在の象潟

ところが、1804(文化元)年、マグニチュード7と推定される象潟地震が起こり、象潟は一夜にして約2m隆起。潟湖の水が流出し陸地化しました。

現在、行き交う船の姿こそありませんが、大地の営みを感じられる絶景を求め多くの人が訪れています。

にかほエリアの見どころ

にかほエリアには、このほかにも鳥海火山の恩恵といえる見どころが多いです。たとえば、象潟海岸の「唐戸石(からといし)」は、九十九島をつくった山体崩壊で流れてきた巨岩のひとつ。

また、鳥海山を水がめとする豊かな水は、湧水や滝となり流れ美しい湿原をつくり、県南西部の米どころを潤しています。

にかほエリアのジオマップ

にかほエリアのジオマップ

「唐戸石」(象潟海岸)は、九十九島をつくった山体崩壊によって流れてきた大岩。このときの岩屑なだれに埋まった「埋もれ木」(にかほ市象潟郷土資料館蔵)は、その年輪から山体崩壊の年を特定する根拠になりました。

「奈曽渓谷」では深さ300〜500mの深い谷に鳥海山の古い溶岩が露出。「三崎海岸」では約3000年前かそれ以前の溶岩でできた絶壁を見ることができます。

鳥海山を水がめとする豊かな水は、「獅子ヶ鼻湿原」や「冬師湿原」などの湿地帯を形成。「元滝伏流水」や「福田の泉」などの滝や湧水地も、鳥海山の水の恵みを感じられる見どころです。

にかほエリアのジオマップ

元滝伏流水
約10万年前に流出した鳥海山の溶岩流の末端崖から水が湧き出し、落差5m、幅30mにわたり滝となって流れ落ちています。

元滝伏流水

住所
秋田県にかほ市象潟町関
交通
JR羽越本線象潟駅からタクシーで15分
料金
情報なし

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・秋田県の地形総論
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・大館・鷹巣・鹿角盆地と能代平野 米代川流域に形成された地形の謎

Part.2 秋田を駆ける充実の交通網

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・小坂鉱山の鉱石輸送のため開業 旅客輸送も担った幻の小坂鉄道/昭和40年代に消えたローカル私鉄 羽後交通の雄勝線・横荘線とは?

Part.3 秋田の歴史を深読み!

・秋田の古代史総論
・大型住居跡やストーン・サークルなど秋田県の縄文遺跡がおもしろい!
・出羽柵が遷置・整備されて秋田城と呼ばれるようになった
・奥羽を支配した出羽の豪族・清原氏が後三年の役により滅亡
・秋田の中世史総論
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・秋田の近世史総論
・佐竹氏の入部以降、鉱山開発が進み鉱業が秋田藩の財政を支えた
・古来より栄えていた舟運に加え街道が整備され交易が盛んに!
・近現代史総論/奥羽越列藩同盟を離脱し新政府側へ 秋田藩の戊辰戦争と戦後のゆくえ
・日本最後の空襲となった土崎空襲 どうして土崎港が狙われたのか?

Part.4 秋田で育まれた産業や文化

・全国屈指の産油量だった秋田県がシェールオイルの開発・商業生産へ
・秋田港、船川港、能代港 三つの重要港湾が海上輸送網の拠点
・国内有数の米どころ・秋田県は農業産出額の5割以上を米が占める
・かつては国内2位の広さを誇る湖!? 八郎潟の干拓と大潟村の歴史
・古来より建材や工芸品に用いられた秋田杉の活用と保存の取り組み
・日本のロケット発祥の地は秋田県の道川海岸だった!
・地熱発電や風力発電などの再生可能エネルギーの導入が加速
・県内各地で伝承されている民俗芸能 国指定重要無形民俗文化財は国内最多!

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