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青森ヒバはその特性から古くから建材として使われてきた

青森ヒバは北国の風雪に耐え、長い年月をかけて成長するため、年輪が緻密で木目も美しいのが特徴。強い殺菌力を持つヒノキチオールなどの薬効成分が含まれ、害虫や湿気に強く、腐りにくいため、1124(天治元)年に建立された中尊寺金色堂(岩手県平泉町)ほか、古くから各種建築物に使われてきました。
坪毛沢木堰堤群(つぼけざわもくえんていぐん)(五所川原市)もそのひとつ。山腹崩壊を防ぐため、現地のヒバ材を活用した堰堤が1916(大正5)年~1958(昭和33)年に12基設置され、その多くが現在も堰堤(治山ダム)の役割を果たしています

青森ヒバの需要はますます増え全国へと出荷されていった

ヒバ林は江戸時代から、津軽藩・南部藩とも伐採規制や植林奨励などにより、手厚く保護・育成してきました。明治時代には近代産業の発展に伴い、木材の需要が増大。青森県は森林の約7割が官有林(国有林)となり、その管理経営としてヒバの需要拡大が求められました。
消費地への輸送は帆船が主流でしたが、東北本線や奥羽本線(青森~弘前間)の開通で鉄道輸送が可能になると、津軽・下北の両半島から集荷可能で、鉄道貨物輸送に便利な青森市にヒバを集約する計画が立てられました。1905(明治38)年に、当時日本最大級の青森貯木場が整備され、翌年には隣接地で製材所が操業を開始しました。
膨大な木材を東京などへ鉄道で輸送しましたが、当時、青森ヒバは東京での市場評価が低く、材木商が集う深川木場で性能資料を配るなど、市場開拓に力を注いだといいます。

青森ヒバの県内輸送のために建設された「津軽森林鉄道」

青森県内での輸送は原始的な河川利用が主流だったため、気象に左右されない安定した大量輸送を目指して、「津軽森林鉄道」が計画されます。本線工事は1906(明治39)年に始まり、まず蟹田(かにた)(現・外ヶ浜町)~今泉(現・中泊町)間が開通。青森貯木場を起点に喜良市(きらいち)(現・五所川原市)まで約67kmの本線全線が1909(明治42)年に完成。支線、分線も合わせ、建設総延長は約283kmに及びました。

運材貨車の牽引用として日本初の蒸気機関車を導入するなど、近代森林鉄道の先駆けとなり、最盛期の1914(大正3)年には年間7万㎥もの木材を輸送しますが、1955(昭和30)年ごろからトラック輸送が急増し、1967(昭和42)年に全線廃止されました。

青森ヒバは大量消費され数を減らすも資源保護が進み、さらに木材としても再評価される

第二次世界大戦後、青森ヒバは建築材や鉄道の枕木として大量に消費され、伐採後は成長の早いスギなどを造林したため、資源量が減少。国有林では回復を目指し、伐採量を削減するとともに、2017(平成29)年度にヒバ天然林の復元プロジェクトを開始。民有林ではヒバ人工造林が増えるなど、官民双方で資源保護の取り組みが進んでいます。

青森ヒバは木材としての再評価される

近年はヒバの香りや抗菌作用を生かした機能性素材として注目され、精油や台所用品などが人気です。2013(平成25)年に伊勢神宮(三重県伊勢市)の式年遷宮で青森ヒバが採用されるなど、木材としても再評価されています。

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地形、交通、歴史、産業…あらゆる角度から青森県を分析!

青森県の地形や地質、歴史、文化、産業など多彩な特徴と魅力を、地図を読み解きながら紹介するマップエンターテインメント。秋田の知っているようで知られていない意外な素顔に迫ります。地図を片手に、思わず行って確かめてみたくなる情報を満載!

Part.1 地図で読み解く青森の大地

・津軽・下北半島が陸奥湾を抱き 県央を貫く奥羽山脈が地形を二分
・火山がもたらした絶景や石灰岩 下北半島に刻まれた列島誕生史
・二重カルデラの十和田湖が生んだ奥入瀬渓流の渓谷美
・津軽富士と称される美しい岩木山は荒々しい火山地形を残す活火山
・古いカルデラの上に形成された八甲田山は火山地形の宝庫!
・東に段丘・西に砂丘・南に扇状地 岩木川がつくった津軽平野
・かつて潟湖だった小川原湖と広大な上北平野ができるまで
・地すべりでブナの原生林が誕生 太古の森が残る白神山地の成り立ち

・・・など

Part.2 青森を駆け抜ける鉄道網

・日本鉄道の駅として明治期に開業 北への玄関となった栄光の青森駅
・E5系・H5系「はやぶさ」が走り延伸を続ける東北・北海道新幹線
・車内で津軽三味線の生演奏!?「リゾートしらかみ」がゆく五能線
・函館への海底トンネルを掘削!?大湊線・大畑線・大間線の大計画
・日本初のステンレス車も活躍する東北最大の私鉄 弘南鉄道がすごい
・黄金の東北本線は新幹線で激変 新時代を走り出した青い森鉄道
・冬は石炭炊きのストーブ列車!ローカル私鉄・津軽鉄道の魅力
・レトロなレールバスがみちのくの原風景を走った幻の南部縦貫鉄道

・・・など

Part.3 青森で動いた歴史の瞬間

・マンモスを追ってきた人類が定着 中央に属さない独自の文化が発展
・豊かな自然のもとで生まれ1万年にわたり続いた縄文文化
・稲作を基盤とする弥生文化と北海道で発達した擦文文化が交錯
・和人の律令国家に取り込まれず蝦夷の地として交易で発展する
・奥州藤原氏が源頼朝に滅ぼされ武士たちの激しい抗争の時代へ
・十三湊を制して栄えた安東氏と室町期に台頭した南部氏の争い
・北東北最大勢力の南部氏から独立し弘前藩を築いた津軽氏とは?
・藩境争いに暗殺未遂、戊辰戦争…度重なる津軽と南部の紛争
・戊辰戦争後に紆余曲折を経て青森県が成立し近代化していく
・港町から県都となった青森では町人中心の町づくりが進んでいく

・・・など

Part.4 青森で育まれた産業や文化

・霊媒師イタコが霊場・恐山の象徴的存在となった理由
・諸大名が財を投じて求めた南部駒 青森県の馬産の歴史は古代から!?
・築100年のダムが現役!耐久性の高い青森ヒバ
・岩木山麓の原野を切り拓いて旧藩士たちが始めたリンゴ栽培
・大間のマグロに陸奥湾のホタテ! 青森県で水産物が豊かな理由とは?
・船上に車両を載せて海を渡る! 青森〜函館をつないだ青函連絡船
・セメント工場の設立をきっかけに漁村から工業地帯に変貌した八戸
・米軍・自衛隊・民間が利用する三沢飛行場は旧海軍航空基地だった

・・・など

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