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兼高かおるは世界一周早周りに挑戦

英語力を生かせるジャーナリストとなって働いていたとき、早周りで世界一周の記録を作ったアメリカ人に出会います。新設された航路を利用すれば記録を更新できると考えた兼高かおるは、思いきってチャレンジします。その結果、1958(昭和33)年に新記録を樹立するのです。世界一周中の機内で大学ノートに綴っていた紀行文が週刊誌に掲載されてラジオ出演することになり、さらに話はテレビ出演へと発展しました。こうして記録樹立の翌年に始まったのが、日本初の海外紀行番組『兼高かおる世界の旅』だったのです。

『兼高かおる世界の旅』は紀行番組の先駆けとなった

海外取材番組の先例などないため、兼高かおる自身がプロデューサー兼ディレクター、コーディネーター、ナレーター、ときには撮影まで手がけることになります。日本は時あたかも観光目的の渡航が自由化される前で、庶民にとって海外旅行など「夢のまた夢」の時代。お茶の間から初めて見る「世界」に視聴者は釘付けになりました。番組で聞き手役を務めた芥川隆行(あくたがわたかゆき)との軽妙洒脱なやりとり、兼高かおるの上品な言葉遣いも番組が人気となった理由でした。

31年におよぶ長寿番組となった『兼高かおる世界の旅』で訪れた国は約150か国、移動距離は地球180周分に達します。兼高かおるが大切にしたのは、現地のそのままの姿を視聴者に届けること、そして日本の文化を正しく世界に伝えること。番組終了後、兼高かおるは「番組は入口で、あとはみなさんの〝世界の旅〟をつくっていってほしい」と語り、自らも旅人であり続けたのでした。

晩年は、戦争と環境破壊がやまない世界を憂えて、2014年に「一般財団法人兼高かおる基金」を設立。没後の2021年には、兼高かおるの業績に重なる人物に贈られる「兼高かおる賞」が新設されました。彼女の本名は「兼高ローズ」。見目麗しく華やかでだれからも愛され、慈愛と気高さに満ちた薔薇の花を思わせる女性でした。

兼高かおるが着用した民族衣装は番組で活躍

兼高かおるは「世界をお茶の間に運ぶのが私の仕事」と、外国の気候風土や美意識を視聴者に伝えるために、取材先の民族衣装をよく着用しました。また、画家のサルバドール・ダリ、ジョン・F・ケネディ大統領、チャールズ皇太子(当時)らと対面したことも。番組開始当初は、日本の広報のために和服で各国を訪問しました。

兼高かおるは出されたものは虫でも食べた!

「アフリカの国には、出されたものを食べないと『自分たちを見下している』と考える民族もいます。食べるかどうかで、こちらの誠意が試されるわけです」と語っていた兼高。食べた瞬間にフレンドリーになってくれる人もいたといいます。 出されたものは虫でも食べる!

兼高かおる(かねたかかおる)のプロフィール

ジャーナリスト
生まれ:兵庫県神戸市
生没年:1928[昭和3]年2月28日〜2019[平成31]年1月5日
出身校:香蘭女学校、 アメリカ・ロサンゼルス市立大学(中退)

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監修者:ヤマザキマリ

漫画家・文筆家。東京造形大学客員教授。1967年東京生まれ。
84年にイタリアに渡り、フィレンツェの国立アカデミア美術学院で美術史・油絵を専攻。比較文学研究者のイタリア人との結婚を機にエジプト、シリア、ポルトガル、アメリカなどの国々に暮らす。

2010年『テルマエ・ロマエ』で第3回マンガ大賞受賞、第14回手塚治虫文化賞短編賞受賞。2015年度芸術選奨文部科学大臣賞新人賞受賞。2017年イタリア共和国星勲章コメンダトーレ綬章。著書に『スティーブ・ジョブス』(ワルター・アイザックソン原作)『プリニウス』(とり・みきと共著)『オリンピア・キュクロス』『国境のない生き方』『ヴィオラ母さん』『たちどまって考える』『ヤマザキマリの世界逍遥録』『ムスコ物語』など。

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