清水区の中心部から三保半島へ向かう道路は折戸湾をぐるりと回り込むため、地図を見ると釣り針のような形をしたルートとなっています。そのため、たとえばJR清水駅から三保半島の先端付近まで直線距離ならば2.5～3㎞弱のところ、マイカーや路線バスで行くとおよそ8～9kmの道のりを辿ることになります。

このように、地形の関係で大回りを強いられている清水区中心部から三保半島への道のりですが、実は道路のほかに、折戸湾を横切って短絡する航路が存在します。

富士山清水港クルーズ（株）が運航する「水上バス」がそれで、江尻～日の出～三保（三保海水浴場）を結ぶ三保羽衣ラインと、江尻～日の出～塚間を結ぶ塚間航路の、2つの航路があります。

それぞれの運航距離と所要時間は、三保羽衣ラインは清水駅東口からほど近い江尻桟橋から三保桟橋まで2.5㎞・10分、塚間航路は同じく江尻 桟橋から塚間桟橋まで2.4㎞・15分（日の出を経由しない直行便の場合）となっていて、清水区の中心部と三保半島にある2つの地点との間を、ほぼ直線距離で結んでいます。

清水港を挟んだ対岸同士を短絡するこれらの航路ですが、その起源は今から800年近く前の鎌倉時代、1245（寛元3）年に始まったとされる渡し舟です。

「塚間の渡し」と呼ばれたこの渡し舟は、現在の水上バスが起点としている江尻よりも東側に位置する興津（清水区興津）と、三保半島の塚間とを結び、御穂（みほ）神社への参拝客や三保松原に遊ぶ人たちの足として利用されたと伝えられています。塚間桟橋で水上バスを降りるとすぐに石鳥居をくぐりますが、これは御穂神社まで続く約13丁（1.4㎞）の参道の一の鳥居であり、かつての渡し舟が担っていた役目の一端を今に伝えています。

今、三保半島を訪れる観光客の大半はマイカーかバスを利用しています。そのため、通勤・買い物など地元の日常生活の足としての性格が色濃い水上バスですが、あえて観光の足として乗船し、いにしえの参拝客、遊山客を偲んでみるのも一興でしょう。

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