発掘のきっかけは意外なもので、芦屋層群の下に眠る石炭の層を目的とした調査でした。その結果、石炭はもとより、芦屋層群は、新世代漸新世を代表する地層群で、地層の溜まり方や成り立ちなどを研究する堆積学のほか、二枚貝類や生痕化石（せいこんかせき）、クジラ化石、ペンギンモドキ化石など化石を研究する視点でも、高い学術的重要性を持つことが確認されたのでした。

芦屋層群で発見された化石の中でも、貝類においては国内では類を見ないほどの数が見つかり、研究者にとっては幸甚の至りでした。
二枚貝類の化石は、100を超す種が識別されており、ハマグリの仲間であるアシヤハマグリ、イタヤガイの仲間であるアシヤニシキ、そのほかアシヤタマガイ、アシヤキララガイ、アシヤキリガイダマシ、アシヤツノガイなど芦屋の名が種名となったものもあります。
和名ばかりでなく、学名に「ASHIYA」と入っている貝もあり、古生物学において芦屋町は名の知れた化石産出地なのです。

そして、これらの化石から、当時の海況、地形、海流、気候などが判明し、およそ3000万年前、芦屋層群は亜熱帯海洋性気候の暖かい海で堆積したことが分かりました。
貝類のほかに、海の脊椎動物も発掘されており、進化を解明する上で枢要（すうよう）なものが多く含まれていました。
なかでも10種以上が発見されたサメ類は、日本の漸新世のサメを知る上でもっとも重要な資料となっています。
鳥類では飛べない海鳥のプロトプテルムが有名で、この鳥はペンギンモドキとも呼ばれ鵜に近い鳥ですが、生活の型は「北半球のペンギン」と同じだと考えられています。ほかにも、アホウドリ型で全翼6mの大型海鳥、鯨類、ひげ鯨類、歯鯨類などが見つかっています。

また、芦屋層群は日本海形成に先駆け、中国大陸縁辺部に南西方向から北西方向に海が進入したことを示しており、日本列島が大陸から離れて形成された根拠にもなっているのです。

地質学や地球科学を志す学生の学びの場としても広く活用されています。芦屋層群は、一般の人でも気軽に立ち寄ることができる化石観察スポットで、発掘された化石類は芦屋町歴史民俗資料館に展示されています。

貝やサメなどの化石が見つかった位置を示した図。実際に歩いて回れるポイントも多く、行楽シーズンにはイベントも開催されています。

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福岡県全域