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福岡の醤油醸造の歴史

では、いつ頃から福岡県が全国一の醤油醸造地となったのでしょうか。江戸時代の主要な産地は紀州を中心とする近畿圏で、その後は関東の業者が成長し、福岡をはじめとする九州には小規模な生産者が多くいました。しかし明治18(1885)年以降は常に全国上位の生産量を記録しており、この頃から急成長したものと思われています。

福岡の醤油の甘さのルーツは諸説ある

一大醤油生産地となった福岡ですが、甘さのルーツには諸説あり、もっとも有力視されている3つを紹介しましょう。

福岡の醤油の甘さのルーツ①:砂糖が入手しやすい環境だった

ひとつ目は江戸時代に遡ります。鎖国令が敷かれていた当時、唯一の貿易窓口であった長崎の出島に入ってきた砂糖は、長崎街道、別名シュガーロードを通って江戸へ献上されていました。そのため、街道途中にある福岡は、比較的容易に砂糖が手に入ったと考えられます。酒に並ぶほど高価といわれた砂糖を高級な醤油にブレンドすることは『貴重品を贅沢に使うほど、あなたを大切に思っています』という気持ちの表れであり、馳走であればあるほど砂糖を使うようになったといわれています。

福岡の醤油の甘さのルーツ②:温暖な気候の影響

ふたつ目は、温暖な気候です。気候が温暖なほど甘いものへの欲求が強くなるといわれており、九州は一人当たりの砂糖使用量が全国平均よりも10~20%も多いのです。そのため醤油をはじめ調味料や料理自体が甘い味付けになったといわれています。

福岡の醤油の甘さのルーツ③:新鮮な魚が食べられる地域だから

最後は、福岡では新鮮な魚を食べることが好まれることにあります。本来、魚は新鮮すぎると身が固く、旨味をあまり感じられません。分かりやすく例えるなら、マグロは釣れたてより1週間、10日と寝かせた方が、熟成して身が柔らかくなり旨味が増えます。しかし鮮度を好む福岡人にとって、「旨味は醤油で補えば良い」という考えから、旨味を引き立たせるため醤油が甘くなったのだとされます。福岡の甘いさしみ醤油は、新鮮な魚が簡単に手に入る地域だからこその贅沢な味わい方ともいえます。

福岡の醤油の甘さは独自の文化

ほかにも醤油の製造方法において、濃厚で甘い醤油に仕上がる再仕込(生醤油に再度麴を仕込む二度仕込みの醤油)が用いられていることや、サザエさんにも登場する三河屋が客の要望を聞き入れ地域の味を作ったことなど、いくつもの説がありますが、いずれにせよ醤油の甘さは福岡をはじめとする九州独自の文化であることは間違いありません。

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