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珪化木が大量に発見されている「姉帯・小鳥谷・根反の珪化木地帯」

岩手県北部、馬淵川(まべちがわ)上流の二戸郡一戸町(にのへぐんいちのへまち)にある姉帯(あねたい)、小鳥谷(こずや)、根反(ねそり)地区の馬淵川やその支流である平糠川(ひらぬかがわ)・根反川の河床、川岸には、保存状態のよい珪化木が数多く見られます。そのためこの一帯は1941(昭和16)年に「姉帯・小鳥谷・根反の珪化木地帯」として国の天然記念物に指定されています。

珪化木の産出地域

珪化木の産出地域

「姉帯・小鳥谷・根反の珪化木地帯」として国の天然記念物に指定されている区域を図中に示しました。

珪化木を含む地層の特徴

一戸町一帯にある多くの珪化木を含んでいる地層は、四ツ役(よつやく)層といって、新生代第三紀中新世(約2303万年~533万3000年前)、約1700万年前のものです。

四ツ役層はおもに礫岩(れきがん)、砂岩、頁岩(けつがん)、凝灰岩(ぎょうかいがん)からなる地層で、珪化木は火山灰が固まってできた凝灰岩の中に含まれています

根反川などの川岸で見られる珪化木は、その火山灰の地層が川の流れによって削られ、地中にあった珪化木が露出したものです。そのため露出している珪化木はごく一部であり、川の周辺の山には、まだ大量の珪化木が埋もれていることになります。この地帯の珪化木は、直立したままのものが多いことから、これらの樹木はかつて生えていた場所で火山灰に埋没して、珪化木化したことがわかります。

珪化木の元々の姿とは

木の種類は、おもにレッドウッド(セコイア)です。レッドウッドは樹高100m近くになる巨木であり、現在はアメリカのカリフォルニア州に自生しています。ほかにも、マツやブナ、ニレ、クルミの仲間と思われる珪化木もあります。

日本最大の珪化木も見つかっている

根反の大珪化木は、根反川沿いに立っている国の特別天然記念物です。直径約2m、高さ約6.4m、目通り幹周囲(木の幹の太さを地上から一般的に目の高さの地上1.2mで計測した値)約7mの巨木で、日本最大の直立樹幹の珪化木。この大珪化木もレッドウッドだと考えられています。

約1700万年前の火砕流で埋め尽くされてしまった森林

珪化木含有層の下に海成層があることから、今から約1700万年前、現在の一戸や小鳥谷は海に近く、海岸の温暖な気候を好むレッドウッドの林が広がっていたようです。

多くの樹木が珪化木となって残されていることから考えると、森林が一瞬にして火山活動による火砕流に埋め尽くされたのでしょう。

珪化木製の矢じりが出土した縄文時代の遺跡

この珪化木地帯の近く、岩手県北部の馬淵川東岸の河岸段丘にある縄文時代中期後半の御所野(ごしょの)遺跡からは、珪化木製の矢尻が多数見つかっています。出土した矢尻1597点のうち、3分の1以上が珪化木でつくられたものであったことが調査によってわかっています。

一般的に、石器の材料は黒曜石や頁岩(けつがん)です。珪化木製の石器がこれほど大量に見つかった例はなく、この地域では数千年前の縄文時代から、珪化木が身近な存在だったことがうかがえます。

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Part.3 岩手で動いた歴史の瞬間

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・胆沢平野を中心に米作が進み 強大な権力も生まれる
・蝦夷のリーダー・アテルイと ヤマト王権の熾烈な争い
・安部氏から奥州藤原氏 やがて群雄割拠の戦乱へ
・前九年・後三年の役が終結し 花開いた黄金の平泉文化
・大崎氏と斯波氏の時代を経て 南部氏と伊達氏が台頭
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